独奏への挑戦:hatao

ライター:hatao

11月21日に開催する完全独奏フルート・コンサートに向けて準備を進めています。

これまで27年間、アイリッシュ・フルートとティン・ホイッスルを中心に数えきれないほどの舞台に立ち、数えきれない人々に音楽を届けてきました。遠回りもありましたが、「やりたいことだけをやってきた」と胸を張って言える人生です。過去にも現在にも不満はありません。けれど、「同じ場所にとどまってはいけない。46歳になった今も、音楽家として進化したい」。その思いが、私を次の挑戦へと駆り立てています。

昨年は「インプットの年」と決め、毎月のように異なるスタイルの笛奏者から学びました。彼らが何を美しいと感じ、どのように練習しているのかを知りたかったのです。クラシック、インド音楽、ケーナのクラシック奏者たちに一週間の集中レッスンを受け、尺八や中国音楽の演奏家を訪ね、さらにブルターニュ音楽の巨匠に会うためフランスへ、笛作りを学ぶためにスウェーデンへも足を運びました。短期間で何かを習得できたわけではありませんが、この体験は大きな刺激となりました。

そして今年は、学んだことをアウトプットする一年として「無伴奏コンサート」シリーズを企画しました。普段はハープとピアノを奏でるnamiさんとのデュオで活動していますが、今回は笛1本でどこまで表現できるか、そして「hatao&nami」という看板を外して何ができるか。それを確かめたかったのです。

6月の矢島絵里子さん(フルート)、7月のさいとうともこさん(フィドル)、9月の岩川光さん(ケーナ)、10月の大城敦博さん(琉球ヴァイオリン)と、それぞれをゲストに迎え、兵庫・伊丹のライブハウス「Always」で開催してきました。お互いの独奏と合奏を披露する形です。

企画当初から、集客は厳しいと覚悟していました。どの共演者も尊敬する素晴らしい音楽家ですが、一般的な知名度はほとんどありません。しかも無伴奏という地味で実験的な形式。東京ならアンダーグラウンドな音楽シーンもありますが、関西ではほぼ存在しません。

※余談ですが、私が最も衝撃を受けたライブは、ヒカシューの巻上公一さん(声)と坂本弘道さん(チェロ)の完全即興演奏でした。大泉学園「in F」にて、絶叫と文字通り火花が飛び散る凄まじい演奏に圧倒されました。客は私ともう一人、若い女性だけ。今でもあの人が誰だったのか、気になります。

「Always」からはチケットノルマを課せられませんでしたが、週末に客が入らないと迷惑になるため、すべて平日・金曜夜に開催しました。共演者には、集客に関わらず一定額(演奏料2万円+交通費)を保証しました。自分が赤字になるのは構わない。たとえ10万円の損になっても、得るものはあると信じていました。プロの音楽家として活動している人であっても、常に学び続けることが必要です。意識の高いプロのクラシック音楽家はトレーニングを受けています。私にとって舞台こそが最良の学びの場です。

もちろん、まったく勝算がなかったわけではありません。関西では難しくとも、全国規模で見れば関心を持ってくれる人はいるだろう。Alwaysを選んだのも、配信環境が整っており、後日アーカイブ販売(2,000円)に活用できるからでした。10本以上売れれば赤字を補える計算です。

フライヤーを2,000枚印刷し、SNSでも継続的に告知しました。しかし、実際に開催してみると集客は予想以上に厳しく、平均10名以下、最少では2名という日もありました。それでも、共演者の演奏は期待以上で、私自身も新たな刺激を受けて心から楽しめました。けれど、4回を終えた今、別の気づきがあります。

──どれほど内容に自信があっても、聴き手がいなければ、それは自己満足に過ぎないのではないか。

コロナ禍には「無観客ライブ」が一時流行しましたが、目の前に観客がいる体験とはまったく違います。音楽は聴き手がいてこそ生まれるものだと、あらためて痛感しました。

集客が振るわなかった理由は、実力不足、知名度不足、企画の甘さ、広報の弱さ──挙げればきりがありません。結局は自分の怠慢です。今までたくさんコンサートを開催してきて、集客を人任せにしてきたことを反省しました。

「SNSやフライヤーで最低限の宣伝でも誰かは来てくれるだろう。主催者や会場についているお客さん、共演者の知り合い。最悪、お客様が少なくても収入は心配ないし……」そんな甘えが無かったといえば、嘘になります。

これを知っただけでも、ものすごく大きな収穫でした。

笛吹き人生27年、初めての「完全独奏コンサート」は、11月21日(金)。

これまで大切に演奏してきた伝承曲とオリジナル曲をお届けします。

心を込めて演奏しますので、会場で、またはアーカイブ配信でご覧いただけましたら嬉しいです。

【アイリッシュフルート奏者 hatao 無伴奏コンサートシリーズ】
デュオからソロへ——進化するアイリッシュ・フルート 最終回

伝統から、その先へ。アイリッシュ・フルートの新たな可能性を探る無伴奏シリーズ。伝統音楽の枠を超えた意欲的な選曲で、hataoが選ぶ多彩なソリストとともに、月に一度の音楽の対話を紡ぎます。

四半世紀にわたる演奏活動の集大成として、今ここにしかない笛の旅を見届けてください。

【日程】11月21日(金) 18:30開場、19:00開演

【会場】伊丹 ALWAYS
兵庫県伊丹市中央1丁目2−5 グランドハイツコーワ B1F

【料金】
予約 2,000円 / 当日 2,500円(+1オーダー)
配信 2,000円(無期限アーカイブ視聴あり)

アーカイブ販売はこちらです↓
https://celtnofue.com/score/lecture.html

【予約】 hatao@irishflute.info