出典 https://modernbodhran.com/player-profile-rolf-wagels/
スコットランドのバウロン奏者メリッサ・ウェイトMarissa Waiteさんのブログにあるインタビューを、当店でおなじみの翻訳家・村上亮子さんの翻訳でお届けするシリーズ。
今回は、ドイツで活躍し高く評価され、注目を浴びているバウロン奏者ロルフ・ウェイゲルズのインタビューをお楽しみください。
原文:https://modernbodhran.com/player-profile-rolf-wagels/
ロルフ・ウェイゲルズ Rolf Wagels
これは今取り組んでいる新しいシリーズの第3弾で、優れたバウロン奏者にインタビュー形式の質問を送ったものです。
私も本当にワクワクしているし、皆さんも楽しんでいただけることと思います。
今回はロルフ・ウェイゲルズRolf Wagelsです。
ロルフはドイツで活躍し、高く評価され、注目を浴びているバウロン奏者です。
ロルフがこのインタビューに応えてくれて嬉しいです。
彼がバウロンを始めた経緯とか、演奏へのアプローチについて深く知ることは価値があります。
私と同様皆さんも楽しんでいただけると思います。
このアンケートに時間を取っていただいて感謝します。
どうしてバウロンを始めたのですか。自己紹介をお願いします。
ロルフ:1988年のオーケストラ交流事業で、初めてアイルランド音楽とバウロンに触れました。
私は青少年オーケストラでフレンチホルンを吹いていて、何回かアイルランドと交流をしました。
一度はアントリム県のバリミーナと、その後ニーナCBSと交流しました。
1988年の最初の交流でアイルランド音楽と出会い、すっかり虜になってしまいました。
1992年に最初のバウロンを買いました。お土産用の安いバウロンでした。
その1年後、ドイツのフェスティバルでバウロン職人のブレンダン・ホワイトと出会い、ブレンダンが自分のために作ったバウロンを手に入れました。
この時以降さらに真剣に練習を始めました。
地元ハノーバーのセッションで色々と教えてもらいました。
当時獣医学の学生でした。
そこから色々なことが始まりました。
最初のバンド(DeReelium)に加わったのは1996年で、その年にはドイツのイリアン・パイプス協会でバウロンを教えるように頼まれました。
私は毎年のようにアイルランド、特にドニゴールへ行き、そこで2人のスコットランド人、ステファン・キャンベルStephen Campbell(フィドル)とイアン・スミスIan Smith(ギター)に出会い、仲良くなってよく一緒に演奏しました。
ドイツに戻ってもう1つのバンド“Steampacket”を結成し、CDを出し、国外でも良いレヴューをいただきました。
それからCaraが結成されました。
Caraでは15年活動し7枚のアルバムを出しました。
メンバーで私だけがハノーバーの獣医科大学で「本当の」仕事を持っていましたが、Caraはプロのバンドで、国内だけでなくスコットランドやアイルランドを含むヨーロッパ各地でツアーをし、アメリカにも7回招かれました。
主要なフェスティバルの多くで演奏し、とても楽しい思いをしました。
小さな太鼓が私を世界中に連れ出してくれるなんて、誰に想像できたでしょうか?
バンドの発展と並行して、2001年にドイツの演奏家で教師のGuido Pluschke と一緒に「バウロン・ウィークエンド」というワークショップを始めました。
ワークショップは1年に2回行われ、ドイツのバウロン界での重要なイベントになりました。
18年間、今も続いていて、さらに大きくなっています。
バウロン・ウィークエンドの10周年にGuidoと私は“Bodhrán Insight”というCDを出し、ライナー・ノートにそれぞれの曲で何を目標にしているかを書き、それは好評を博しました。
2001年と2004年にアラン諸島のイニシュアで行われるCraiceannサマー・スクールに参加し、光栄なことに2005年には教師陣として加わるように要請されました。
それ以来Craiceannで教えていて、このユニークなイベントを行う組織にますます深く関わっています。
2005年にはバウロン製作者のChristian Hedwitschakとの共同制作を始め、そこで伝統的なデザインと選び抜かれたラムベッグ・ドラムLambegの革を使ったRWEシリーズ(Rolf Wagels Edition)が生まれました。
その後も私達2人の良好な関係は続き、REWは
CoreLineシリーズと同じように発展していきました。またミュンヘン大学で、バウロンの音の秘密はどこにあるのか、製作者はどうすればその音に影響を与えることができるのかを解き明かす実験も行いました。
バウロンのことや自分のワークショップやギグの情報を広めるためにウェブサイトを立ち上げました。
バウロン関係のショップも追加され、今ではクリスチャンChristianの高品質のバウロンやStevie Moisesのティッパーや打面の革、バッグ、教材、CDなどを広く扱っています。
最も影響を受けたのはどなたですか?
ロルフ:難しい質問です。
1人に絞るのが難しいのです。
私のスタイルは伝統的な拍を重視した演奏とより外向的な現代的スタイルの混合だという人がいます。
多くのバウロン奏者から影響を受けていて、その中にはニーナのブライアン・モリッシーBrian Morrissey、ジョン・ジョー・ケリーJohn Joe Kelly、フランク・トーピーFrank Torpey、ジム・ヒギンズJim HIggins、ジュニア・デイビーJunior Daveyなどがいます。
ジュニア・デイビーには1996年のマンスター音楽祭で出会い、驚愕したものです。
特に2人の演奏家が刺激を与えてくれています。
シェイマス・オケインSeamus O’
Kaneとジョニー・マクドナJohnny McDonaghです。2人から拍について多くを学び、バウロンの演奏で何が本当に大事なのか、示してもらいました。
また、私のバンド仲間も忘れることができません。
特にJürgen Treyzは生きたメトロノームのような人で、私の演奏を正確なものにしてくれます。
そしてドイツやアイルランドのセッションで私を受け入れてくれたすべての演奏者たちにも感謝しています。
常に気持ちを奮い立たせておくために、演奏家としてどんな事をしていますか。
ロルフ:一番気持ちを奮い立たせるものはチューン(Tune……ダンス曲のこと。繰り返す短いメロディのまとまり)です。
アイルランドでは”Music”と言っていますね。
これが私にとっていつも一番に来るものなのです。
もし時間(と能力)があれば、他のパーカッションではなくて、たぶんフルートかアコーディオンをやりたいと思います。
音楽とセッション ― 拍動とリルト(Lilt…リズムのゆらぎやグルーブを表すアイルランド音楽の用語)と美しいチューンいっぱいのセッションが好きです。
今使っているバウロン、スティック、ケースはどこのものですか。RWEのバウロン、それがどうして生まれて、どう発展してきたかについても話してください。
ロルフ:今使っているバウロンは、もちろんRWEです。
RWEはChristian Hedwitschakと私で開発しました。
私はChristian の新しいドラムを探していたのですが、いくつか要望がありました。
ラムベッグの革を使いたかったし、器具を使わずにチューニングできるようにしたかったのです。
それでシェイマス・オケインにお願いすると、彼のランベッグ・ドラムの製作者で革の供給者でもあるトミー・ラウデンTommy Loudenを紹介してくれました。
トミーは2017年に亡くなるまで、すべてのRWEのバウロンにラムベッグの革を供給してくれました。
手元にはまだ40個分の革を残していますが、高品質のランベッグ革の入手先を探し始めています。
クリスチャンは器具を使わないやり方をいくつか試作しました。
私は技術者でも製作者でもなく、ただ制作の様子を見ては、「まだ駄目だなあ。ここをもう少し…」などと言うだけです。
私はクリスチャンをせっつくだけですが、やがて彼はスムースで簡単な仕組みを考え付きました。
それがRWEシリーズの第一代で、それから新たな改良を加え、とても気に入っています。
コンプレッサー・チューニング・リムは澄んで、短く、パンチのきいた低音を生み出し、個人的にはよく響く長い低音より好みです。
ステージでもセッションでも大いに役に立ちます。
最新の改良はRWEchangeのChange HEDシステムと分離HEDテクノロジーです。
前者はヘッドとチューニング・リムの交換を可能にするもので、後者ではチューニング・リムがドラムの革に直接つながる唯一の部品になります。
これもまた、クリーンな音色を生み出すものです。
ミュンヘン大学の音響研究所で行った多くの作業や実験が全てここに込められているのです。
今私が使っているのはRWEchangeで、ティッパーは主にStevie MoisesのHR5を使っていますが、他にもこのシリーズのもの、ブラシとか、MellMo、RWEのスネーク・ウッドのティッパーも使います。
これはStevie Moisesと私のコラボによるものです。
プロテクション・ラケットのケースとShure beta 98H/Cのマイクをステージで使っています。
最近使っているもう1つのバウロンはレベリオン・ドラムRebellion drumのレッド・ウェーブ・モデルです。
特別に処理されたレモ・ヘッドで、人造のヘッドでは今までに思いもつかなかった程の音のバリエーションと、加えてチューニング性能です。
14インチのドラム・キットのヘッドに変えたときの操作性の良さも興味深いものです。
あなたの演奏をユニークなものにしているのは何だと思いますか。
ロルフ:ユニークかどうか…😊。
Caraでは器楽の曲や歌の曲を演奏するのが課題でした。
器楽の曲には慣れていましたが、ドラムで歌の曲を演奏することはゼロから学ばなければならないものでした。
一番好きなのは器楽曲です。
曲やメロディにつながり、フレーズや拍を取り上げることが大切です。
バウロンを始めたばかりの人に何かアドバイスをお願いします。
ロルフ:まず聞くことです。
何度も何度も聞いてください。
曲が好きでバウロンを始めたのなら、できる限り何度もその曲を聞いてください。
その曲のリルトを理解するよう努めてください。
少なくともA パートを聞いたらBパートを歌ったり、口でリズムを取ったり出来るように、曲を覚えてください。
その曲の中で何が起こっているのか知っておく必要があります。
もちろん、練習も大事です。
演奏しながら楽しんでください。
しかし音楽とつながることが鍵になると思います。
セッションでバウロンを叩くのは楽しいでしょう。
自分が音楽やセッションの一部となると、本当の喜びが始まります。
始めて26年たちますが、今も深い喜びと鳥肌の立つような思い…をもたらしてくれます。
最後にバウロンを始めた人に何か一言お願いします。
ロルフ:音楽を楽しんでください。
このブログもそうですが、色々と学ぶ教材があります。
テクニックは学ぶことができます。
しかし音楽が全てです。
演奏で音楽とつながり、曲や演奏者と交流してください。