ライター:ネットショップ 店長:上岡
前回の記事で、聖パトリックの日は、クリスチャンの方の断食期間の間に訪れる、何食べても許されちゃう、ちょっとした休息の日だったということを書いてみました。
https://celtnofue.com/blog/archives/7464
さて、そういう文化が定着して時代が進むと、「3月17日=断食の間に聖パトリックさんを偲んで、そして日々の苦労を忘れ、1日ぐらいは好きなものを食べて祝おう」という本来の目的が薄れて、しまいには「3月17日=この日だけは好きなだけ食べていいと伺っていますけど何か?」程度の認識の人たちが多数派になってしまったそうです。
そうなってくると、次第にハメを外して悪さをする人まで出てくるわけで、いくらなんでもそりゃないでしょうと教会が怒るのも仕方ないところ。
1720年、教会は「みなさん3月17日は大宴会の日ではなく、聖パトリックの日なのですよ、いいですか、教会の、神様関連の日なんですから、ここらで一度きちんと思い出してください」キャンペーンを実施しました。
そして、その「神様関連の日」に関連させるアイテムとして使用されたのが「三つ葉のクローバー(シャムロック)」だったそうです。
ここで「シャムロック」について、簡単に見てみましょう。
シャムロックの語源は、ゲール語(アイルランド特有の言語)の「Seamóg シャーモッグ(若いクローバーの意味)」で、これを英語に訳した時に、語感の雰囲気で「Shamrock シャムロック」と翻訳したことから、英語でも使われるようになったそうな。(エドマンド・キャンピオン司祭が訳した張本人と言われてます)
では、なんで司祭であるエドさんが、わざわざ英語に訳す必要があったのか、ということですが、これは聖パトリックさんの行いに関係があります。
そんな聖パトリックさんは、言うてすごく昔の人ですから、逸話に伝説的(ファンタジー要素満載)なものもたくさん入っていて、実際そういったことをした、という史料が見つかっていないものも多いそうです。(アイルランドから悪の象徴・ヘビを追い出した的な)
そんな史料はないけど、話が素敵だからすごく広まった逸話に「キリスト教を知らないアイルランドの人たちに、キリスト教をの三位一体を説明するのにシャムロックを使った(三つ葉ね、四つ葉じゃだめ)」てのがありました。
昔のケルトの人たちは、どちらかというと日本に近い、自然に神様が宿るんやで系の信仰を持っていたので、聖パトリックさんの言ってることがいまいちわからなかったそうです。が、地元の身近な植物(シャムロック)で説明してもらい、わかるようになったと言われています。
元々、キリスト教が伝来する前のケルトの人たちにとっても、シャムロックは大切な象徴だったそうです。古来の人たちが信じていた「繁栄と死の女神アナ(もしくはアヌ)」の持つ「乙女(maiden)・母(mother)・老婆(crone)」という3つのステージ(姿)を表すものとして親しまれていて、それ以外にも「3」という数字がケルトの人たちにはとても神聖なものだったので、三位一体の話をシャムロックで説明してもらったのは、本当にわかりやすかったのかもしれません。
そういう逸話から、シャムロックは聖パトリックさんの思い出アイテムに認定されたわけですね。
ちなみに、センパトの日の風習のひとつに「Drowning the Shamrock 溺れるシャムロック」というのがあるのですが、これはその日の最後のウイスキーにシャムロックを入れて飲み干すというものだそうです。(シャムロックは伝統的に薬草としても使われていたそうなので、口にしてもいいですね、きっと)
教会が「3月17日は神様関連の日なんですよ」キャンペーンをしてから、10数年後の1737年にボストンでセンパトのパレードが行われ、さらに1762年にもニューヨークでパレードが行われています。アイリッシュの人たちが「3月17日はただの宴会日じゃない!キリスト教をアイルランドにお広めになった聖パトリックさんの日ですわよ!」と気づくきっかけになったものが「三つ葉のクローバー(シャムロック)」だったんですよ、というお話でした。