ケルトの笛屋さんで取り扱っている楽器メーカーを紹介するコラム「ネット店長の楽器メーカー物語」。
今回のテーマはSusatoです!
Susato(スザート)
1955年、日本では広辞苑が初めて出版され、1円硬貨と50円硬貨が誕生した年の5月1日、ドイツはドルトムントのほど近い町ヴィッテンにあるヴァイオリンメーカーのジョージ・ケリスチェクが「ケリスチェク・ワークショップ」という楽器メーカーを設立しました。
設立から5年でアメリカはジョージアの州都アトランタに移転、さらに10年後にはノースカロライナ州ブラスタウン(THE 山の中)に移転と、割と落ち着きなくうろちょろ拠点を変えていたそうです。
ですが、このノースカロライナの山の中に東京ドーム2.8個分ぐらいの、なかなかに大きな土地を購入、自宅と製造所で新たに「Kelhorn」という非常にレアなルネサンス期の楽器の製作をスタートしました。
ケリスチェク社は「古い時代の音楽」と「伝統音楽」に重点を置いて発展してきました。
ブラスタウンの製造所ではSusato ペニー・ホイッスル(ティン・ホイッスル)、テイバーパイプス、ティストゥ(Txistu)、ペンタトニック、クラムホルン、Kelhornsなど様々な楽器を作っています。
笛屋さんでもよく使っている固有名詞「Susato(びっくりなことに正しくはスーサートーと発音してください、とホームページに書いていました)」というのは、ブランドの名前です。
正確にはケリスチェック・ワークショップ・ヒストリカル・インストゥルメンツという会社が作っている中の「Susato」というブランド名なわけですが、毎回、
- ケリスチェック・ワークショップ・ヒストリカル・インストゥルメンツのSusato ティン・ホイッスル D管が入荷しました!
とか
- 「ケリスチェック・ワークショップ・ヒストリカル・インストゥルメンツのSusato ロー・ホイッスル D管をご予約いただき…
なんて書いてたら、なんか呪文っぽいので、シンプルに親しみを込めて「Susatoのホイッスル」なんていう風に呼んでいます。
このSusatoという名前は、実はティールマン・スザート(Tielman Susato ← 日本ではスザートと訳す方が一般的みたいですね)さんという1500年生まれの歴史上の人物のお名前から取っているんだそう。
なんでもティールマンさんは、音楽家(トランペット、フルートなど)であり作曲家、さらに出版業者でもあるという、自ら「作って、演奏して、販売する」という芸術家でありながらビジネスマン的な側面も持つ偉大な人物だったそうです。
このティールマンさんの出生地ヴェストファーレンのゾースト(通説)が、ケリスチェクさんが住んでいた地域のほど近く、また目標に近い分野で輝かしい活躍をして歴史に名を残していたことから、その名前をつけたのかもしれませんね。
そんな戦後のドイツで生まれ、アメリカの山の中で大きく育ったSusato社(本当はケリスチェック・ワークショップ・ヒストリカル・インストゥルメンツ社)のお話でした。