円安が一気に進行したこの春。ハープを取り扱う代理店各社が値上げとなりました。代理店で購入するより個人輸入したほうが得かも? そこで、アメリカのハープメーカーDusty Strings社に個人輸入について問い合わせてみました。当店での人気商品26弦ハープAllegro(カマックレバー)を例に考えてみます。
Dusty Strings アイリッシュ・ハープ “アレグロ” 26弦 Camac レバー
当店ではこの春、Dusty Strings社の製品を全面的に値上げしました。例えば当店でのAllegro(カマックレバー)価格は、34万円から42万円(ともに税込・送料別)となりました。実に25%もの値上げです。
ドル円相場が前回輸入時の107円から130円に20%上昇したことに加えて、22年1月にメーカーが値上げをしたこと、また航空便送料の値上げが背景にあり、値上げしない選択肢はありませんでした。それでも値上げ幅は合理的な範囲にとどめたつもりです。
Dusty Strings社はホームページで注文ができ、英会話なしで決済まで進むことができます。こうなると、自分で買ったほうがお得なのでは…と考える方もいらっしゃることでしょう。私だって消費者であればそう思います。そこで、ハープを個人輸入する場合の価格を見積もりしてみました。
Dusty Strings社の公表しているAllegro本体の小売価格は$2,025、これにカマック全レバーで$165加算、ハープケースCD26で$245、以上が商品代金で合計$2,435です。
これは1ドル130円で計算すると316,550円。輸送費用はUPSを利用した場合ご自宅までの配送で最低$600=78,000円、これに通関料6,600円(郵便局の通関代行費用)と消費税が商品代金の10%=31,600円が加算されます。すると最低でも432,750円という金額が個人輸入した場合の見積もり金額です。当店価格よりも、かえって高くなってしまいました。
なお大型の楽器については、以下の回答をいただきました。
34弦や36弦のハープの場合、国際空港への貨物輸送しか選択肢がありません。ご存知のように、この方法には通関が含まれておらず、お客様が最寄りの国際空港で集荷するか配送の手配をしなければなりません。おそらく送料は空港までで$750以上の費用がかかり、空港からの手配も複雑になります。
空港からのチャーター便は距離にもよりますが、最低でも2万円ほどの費用となります。つまり大型商品は手間と費用がかかる上に個人輸入も難しくなるということです。
Dusty Strings社では、その国に代理店があれば、代理店を通じて購入することを勧めています。メールには以下のように添えてありました。
私たちの目標は、可能な限り、お客様が自国の販売店を通じて注文することです。それがお客様にとって最高のサービスであり、全体的に見ても安価であることがほとんどだと考えています。直接お問い合わせいただいた方には、おおよその送料をお伝えし、輸入関税や税金、将来的にサポートが必要になった場合の現地サポートなど、含まれていないものをご説明しています。そうすると、私たちに直接注文するメリットがないことを理解していただき、代理店に注文していただく方がずっと楽だと言っていただけるのです。
また、代理店を通じて購入した場合は楽器の不具合のサポートも行ってもらえるので、安心です。
輸入楽器の代理店は、楽器が手に入りにくいことで足元を見て、高額な利益を載せているのではないかと不信感を覚えているお客様もいらっしゃるかもしれません(その気持はとても良くわかります)。Dusty Stringsでは、ライバル店による不当な値下げ競争が起こったり独占販売によってユーザーの不利益にならないように、代理店に対して販売額の下限と上限を定めています。
現在、円安、インフレ、原料の調達不順、コロナ禍による労働者の確保ができないことなど多くの理由によって輸入楽器の価格が上がっています。当店としても、お客様にこれまで通りの価格で商品が提供できないことに対して心苦しく思っています。
ですが、たとえ高くてもお金を出して楽器が買えるのはまだましな状況だと考えています。職人が亡くなったり廃業したり、その国との輸入取引が停止したり、原料が枯渇したりと様々な理由により楽器が製造できなくなることもありえるからです。
Dusty Strings社の楽器は納期が極端に伸び、現在34弦ハープやFHシリーズ・ハープでは1年ほどとなっています。入荷数が減ることは、それだけ手に入れられるユーザーが減ることを表しています。
楽器の代金が値上がりしても当店にはまったくメリットはありませんが、それでも一定数の在庫を確保し、本当に必要だと思っていただけるご縁のあるお客様にお届けできればという思いで取り引きを続けています。