全てのアイリッシュ楽器の初心者向けベスト・チューン

2024年5月15日

アイルランドの楽器メーカーMcNeelaが公開しているブログの中から、「初心者でも簡単に弾くことができるおすすめの曲」について紹介している記事を許可を得て翻訳しました。

原文：The Best Beginner Tunes for All Traditional Irish Instruments

全てのアイリッシュ楽器の初心者向けベスト・チューン

私たちのお客様の多くは、初めて楽器を手にする初心者です。素晴らしいことです！当然ながら、初めて楽器を手にする方は多くの質問をお持ちです。私はよく、初心者のためのヒントやポイントを尋ねられ、いつも喜んでお答えしています。

私が何度もいただく質問のひとつは、「伝統的なアイリッシュ・ミュージシャンに最適な初心者向けの曲は何か」というものです。レッスンに通っていれば、当然、先生が指導してくれますし、あなたの演奏レベルに最適な曲を選んでくれるでしょう。しかし、オンラインで学ぶ場合や独学で学ぶ場合は、少し手助けが必要かもしれません。では、何から始めればいいのでしょうか？

簡単に弾けて、なおかつ弾きこなした後の達成感や満足感が得られるものがいいでしょう。というわけで、私のお気に入りの曲の中からおすすめの曲をリストアップしてみました。どの楽器でも簡単に演奏できる、素晴らしい普遍的な曲も含まれています。

知っている曲が多ければ多いほどセッションに早く参加することができ、そこで音楽にどっぷり浸かり、この素晴らしい伝統を真に吸収することができます！

まずは万人のための普遍的な曲

出典 https://blog.mcneelamusic.com/

トラディショナル・アイリッシュ・ミュージシャンにとって、究極の初心者向け曲を1曲だけ選ぶとしたら、私はThe Britches Full of Stitchesを選ぶでしょう。The Britchesは、アイルランド伝統音楽の世界で最もポピュラーな初心者向けの曲だと思われます。シンプルなメロディーのため、どの楽器の初心者にとっても理想的な曲です。この曲は、多くの世代の音楽家にとって伝統音楽の世界に足を踏み入れる最初の曲となっています。

メロディーはどの楽器でも簡単に演奏できます。ボタン・アコーディオンやコンサーティーナ奏者にとっては、Gのキーで演奏することで指を動かしやすくなり、コンサーティーナではトリッキーな低音F#を避けることができます。また、蛇腹を使う練習にもなります。

バンジョー、フィドル、フルート、ホイッスルの初心者は、Aメジャーの調で演奏するのが一番効果的です。フルートとホイッスル奏者にAメジャーを勧めていることに驚く人もいるかもしれません。ある種の曲では、Aメジャーの方がトリッキーな低音のDを避けられるので、演奏しやすいのです。初心者のフルートやホイッスル奏者には、やや難しいクロスフィンガリングの第二オクターブのDを回避できるという理由でA調の曲を勧めることがあります（もし第二オクターブのDで１番目の孔を閉じているのなら開けてください！）。

Aメジャーのバージョン

出典 https://blog.mcneelamusic.com/

ポルカは、初心者にとって素晴らしく親しみやすい曲です。セッションで演奏されるような猛スピードを心配する必要はありません。今はご自分のペースで楽しんでください。代表的なフィドル奏者、Martin Hayesのヴァージョンを聴いてみましょう。彼はこのポルカを異例のスローペースで演奏し、メロディーを探求し、装飾し、この見過ごされがちな曲を輝かせています。

次はあらゆる楽器に適した曲

Dilín Ó Deamhas

出典 https://blog.mcneelamusic.com/

Dilín Ó Deamhas（発音はdil-een-oh-dowse、家:houseと同じ）はアイルランドの伝統的な曲で、シンプルなメロディーと生き生きとした軽快さが魅力です。まず曲を聴いて、リズムとタイミングを頭に入れることをお勧めします。

9/8のスリップ・ジグとして記譜されているものの、フレージングの自由度は高いです。全体を通して12/8で演奏することもできます。ゆっくりとどうぞ。フレーズの終わりで一時停止するのも良いでしょう。これが歌やエアーを演奏する楽しさです。通常ダンス曲では避けられがちなことをする自由を手に入れることができるのです！(あまりやりすぎると、それを勧めた私が困ることになりますが）。

注：第２オクターブのDとEを交互に吹くのは、フルートとホイッスルにとって最初は難しいかもしれませんので、これらの楽器には初心者よりはもっと進んだ段階の人におすすめします。ですが、ある程度上達した時にもう一度戻ってくる価値は十分にあります。こちらはアイルランドのフォークシンガー、John Spillaneの「Irish Songs We Learned At School」からのバージョンです。彼が12/8で歌っているのがわかるでしょう。

Shoe The Donkey

出典 https://blog.mcneelamusic.com/

Shoe the Donkeyはシンプルなマズルカ（ポーランドの民族舞踊）で、ケーリーでも人気ですし、ダンサーがいれば（パブに十分なスペースがあれば）セッションでも踊ることができます。ダンスは、最初は安定した良いテンポで始まります。その後、ダンスが進むにつれて音楽のスピードが上がり、ダンサーはついていくのに必死でフロアを飛び回ることになるのです！

すべてが楽しく、ステップも伴奏のメロディと同様にシンプルなので、左足が2本ある人でも参加できるでしょう（冗談です）。この曲は、フルートやホイッスルのCナチュラルのクロス運指に必要な練習になるし、コンサーティーナ奏者にとっては、低いF#キーの位置と演奏に慣れるためのトレーニングになるでしょう！

Dawning Of The Day

出典 https://blog.mcneelamusic.com/

The Dawning of the Day (またはFáinne Geal an Lae)のメロディーは、17世紀にハープ奏者のThomas Connellanによって書かれました。今日、この曲は最も人気のあるアイルランドの伝統音楽のひとつです。

Patrick Kavanaghによって書かれ、The Dublinersによって有名になった代表的なバラード「Raglan Road」のメロディとして、ほとんどの人がこの曲を知っていることでしょう。この曲は美しく甘いメロディーで、ゆっくりとしたテンポで演奏できます。つまり初心者に最適なのです！

メロディーは短くシンプルな割には驚くほど美しい。とはいえ、故Mícheál Ó Súilleabháinのこの録音を紹介しないわけにはいきません。Mícheálの見事な即興演奏と装飾は驚くほど美しく、初心者ミュージシャンが憧れるものです。

ポルカでセッションの準備をしよう

これらのシンプルなポルカは驚くほど弾きやすく、初心者ミュージシャンに最適です。セッション・チューンとしても人気が高く、知っておいて損はありません。Jack Ryan’s Polka、Polka Gan Ainm、Terry Teehan’s Polkaです。

Jack Ryan’s Polka

※原文の動画URLが非公開動画になっていたため別の動画を掲載しています

Polka Gan Ainm

さて、ここで少しごまかすことをお許しいただきたい。「Gan Ainm」はアイルランド語で「題名のない」という意味で、伝統的なアイリッシュ・ミュージシャンなら、曲名を忘れたときに必ず使うものです。私はこれまでいくつも「Polka Gan Ainm」を覚えてきました。

この2番目の曲はポピュラーで、私がネットで見つけた唯一の文献では、The Little Diamond Polkaと紹介されていました。ですがThe Little Diamondではありません。この曲は、アイリッシュ・ボタンアコーディオン奏者にとって理想的な初心者向け曲の私のリストの中でも、さらに重要な位置を占めています。

私は通常、バンジョー、フィドル、フルート、ホイッスル奏者には、この曲をAで演奏することを勧めています。これは、すべての音を一段高く演奏することで実現できます。こうすることで、フルートやホイッスルでは難しい低音のDを避け、フィドルやバンジョー奏者は開放弦のAを利用することができます。

Terry Teehan’s Polka

出典 https://blog.mcneelamusic.com/

テリー・ティーハンズ・ポルカは、The Newmarket Polkaとしても知られ、どの楽器の初心者ミュージシャンにとっても、試行錯誤を重ねた人気曲です。今回も2つのキーで記譜しました。上の楽譜のGメジャー調はアコーディオンやコンサーティーナ奏者に最適です。実際、ボタン・アコーディオン奏者は、蛇腹を一度も縮めることなく、この曲全体を演奏することができます。そのためには、内側の列の鍵盤ではなく、蛇腹を引いて演奏する外側の列のE鍵盤を演奏すればよいのです。