「グルーヴしなけりゃ意味がない」?:hatao

ライター:hatao

ここ数年の私の研究テーマは「アイルランド音楽のグルーヴ」で、このテ─マについてのレクチャーを山梨県の八ヶ岳アイルランド音楽フェスや大阪のアイリッシュ・カーニバル、学生団体の合宿ICFなどで何度も取り上げてきました。これまで私は管楽器(ホイッスルとフルート)の専門的なレクチャーを得意としてきたのですが、グルーヴは演奏者全員に関わるテーマですので、最近は全楽器対象でレクチャーをしています。

良いグルーヴで演奏することは、演奏家として四半世紀この音楽に取り組んできた私であっても非常に難しく、また、この音楽を演奏していてもっとも楽しいと感じる部分でもあります。近年私は、グルーヴを作る要素を5つに分解し分析する手法を考え出し、noteに記事を書きました。

https://note.com/celtnofue/n/na804996eb3ab

例えばジグのグルーヴひとつとっても、一概に「アイリッシュ・ジグとはこう弾くものである」とは言い難く、演奏家それぞれにジグのリズムがあります。それは地域性だったり、楽器の違いだったり演奏者のスタイルによって異なりますし、その時の状況や気分によっても変化します。

アイルランド人のフルートの名手を例に取ると、Conal O’Gradaは強いアクセントをつけて重たいスウィングで演奏していますが、Paddy Cartyはアクセントはほぼなく、スウィングは軽いです。Spotifyで聴き比べてみてください。

Conal O’Grada

Paddy Carty

しかし共通しているのは、両者ともきちんとアイルランド音楽としてグルーヴしているということです。

一方、Spotifyで色々な音源を聴いていると、それなりに上手ではあるものの、一聴して明らかに外国人が演奏しているとわかる音源があります。アイルランド音楽としてグルーヴしていないからです。

この違いはささいなものではありますが、アイルランド音楽を演奏できるのかどうかを分ける、はっきりとした境界線でもあります。グルーヴしなくては、せっかくの装飾音や変奏も意味を成さないのです。先述のとおり私自身がとても苦労しているのですが、グルーヴができたとき、身体が音楽と一体になったように感じられとても楽しいので、もしグルーヴを課題に感じている人は、ぜひ一緒に練習できれば嬉しく思います。

では、グルーヴしなければこの音楽を演奏する意味がないのかというと、そうではありません。人々が集まって同じ旋律を奏でることにはそれ自体に喜びがありますし、グルーヴしていなくても、メロディの美しさを感じることができます。グルーヴはひとつの学問であり、追求しがいのあるテーマです。アイルランド音楽の演奏を楽しむとともに、つねにグルーヴの向上を目指して試行錯誤をする姿勢が大切なのではないかと感じています。