
ライター:オンラインショップ 店長:上岡
みなさん、こんにちは!店長の淳平です。
突然ですが、みなさんはアイルランドのダブリンへ旅行に行ったら、どこを観光しますか?
有名な「ケルズの書」を見にトリニティ・カレッジの図書館へ行きますか?それとも、ギネスビールのストアハウス?生演奏を聴きに、アイリッシュ・パブ?
どれも全部、アイルランドに行かれた際にはぜひ行っていただきたいところだらけです。でも、もしぼくがいま、ダブリンにいたら、真っ先に駆けつけて手を合わせたい場所があるんです。
それは、「チェリー・トマト・ブリッジ」。
「え、なにそれ?八百屋さん」
違うんです。実はこれ、割と最近ダブリンで爆発的な人気を誇った(そして一瞬で消え去った)、伝説の観光スポットのお話なんです。
ことの発端は「お買い物中の悲劇」
舞台はダブリンの北側、イースト・ウォールという地域にある、なんの変哲もない歩道橋です。そこである日、うっかりさんが買い物袋からプチトマト(チェリー・トマト)のパックを落としてしまいました。
普通は「あーあ、もったいなかったな」で終わる話なんですが、アイルランドの自然はたくましい!
落ちて転がったトマトたちは諦めることなくそこに定住することを決意、なんとコンクリートの割れ目から、なんとそのトマトが発芽して、すくすくと育ち始めたんです!
Googleマップ公認!?星5つの観光名所へ
ここからが、アイルランド人の面白いところです。何も知らなければ、ただの雑草(トマトですけども)として処理されそうなこのトマトを、地元の人たちは「街の新たなシンボル」として崇め始めたのです。
で、誰かがGoogleマップに「Cherry Tomato Bridge(プチトマト橋)」という名前で登録すると、瞬く間に「観光名所」のカテゴリーに認定されました。レビュー欄には、真面目な顔をした地元民からの絶賛コメントが殺到します。
「ダブリンで最もジューシーな体験だった」
「人生観が変わるほどの赤み」
「トリニティ・カレッジ?いやいや、まずはトマトでしょ」
評価はなんと、驚異の「4.9」。あやうく世界遺産レベルの名所になりかけました。
SNSでも「#CherryTomatoBridge」のハッシュタグが飛び交い、若者たちがトマトと一緒に自撮りをするために橋を訪れるという、謎のフィーバー状態に。「道端のトマト」が、国宝である「ケルズの書」を凌駕した瞬間でした。
そして伝説へ
しかし、楽しい宴には必ず終わりがやってきます。
ある日、仕事をきっちりとこなすダブリン市議会の清掃チームがやってきて、この「聖なるトマト」をきれいに撤去してしまったのです。
まあ清掃チームは自分たちの仕事をしただけなのですが、市民からすれば「俺たちのトマトを何してくれとんねん!」という大事件です。
ここからの展開が大好きなんですが、トマトが撤去されたあとの歩道橋に、なんと「祭壇」が作られました。
トマトがあった場所にたくさんのトマトが備えられ、キャンドルが灯され、額縁に入ったトマトの写真(しかもなぜか人型)が飾られ、手書きのメッセージカードが供えられたのです。
Cherry Tomato Bridge: What is the viral attraction on Dublin’s northside? https://t.co/KqhhJD1ihG
— The Irish Times (@IrishTimes) January 13, 2025
「安らかに眠れ、甘き王子よ」
哀悼なのか悪ふざけなのか判断がつかない愉快な展開を、BBCやアイリッシュ・タイムズといった大手メディアが見逃さず取り上げたことから、トマトは本当の意味で「伝説」となりました。
アイルランド人の「Craic(クラック)」な精神
アイルランドには「Craic(クラック)」という言葉があります。
直訳するのは難しいんですが、「楽しいこと」「愉快な会話」「居心地の良い雰囲気」、そして「ウィットに富んだジョーク」などをひっくるめた、彼らが最も大切にしている感覚のことです。
道端に生えたただのトマトを、みんなで面白がって、Googleマップに登録して、最後は涙ながらに(笑いながら)見送る。この一連の流れこそ、まさに最高の「Craic」だと思うんです。
音楽もそうですが、アイルランドの文化の根底には、こういった「日常の些細なことを、みんなで笑い話に変えて楽しんでしまおう」という精神が流れている気がします。堅苦しいことは抜きにして、その場にあるものを楽しむ。セッションで知らない曲が始まっても「なんとかなるやろ」と混ざっていくあの感覚に、どこか通じるものがありますよね。
残念ながら、もうそのトマトを拝むことはできませんが、もしダブリンへ行く機会があれば、イースト・ウォールの橋を渡って、そのトマトの祭壇があったあたりを見てみてください。もしかすると、コンクリートの隙間から、何やら可能性を感じる草が生えているかもしれませんよ!
アイルランドに行く予定がない方は、伝説のB級映画「アタック・オブ・ザ・キラー・トマト」を見るのもありです。信じられないぐらいバカバカしい映画ですが、店長は大好きです。
