【センパト特集】センパト飯のお話

ライター:ネットショップ 店長:上岡

毎年3月17日に祝われる聖パトリックの日(センパト)は、アイルランドにキリスト教を広めるために尽力した聖パトリックさんを偲ぶ日でしたが、これまでのコラムで書いたように、おいしいものをたらふく食べる日というイベント感を持って、定着していきました。

なので、センパトとご飯は深く関連しているわけですね。

さてさて、カトリックの皆さんは日曜・祝日は絶対に休まなきゃいかんという教えを受けています。(いい教えだね)

なので、パレードがはじまった1700年代中頃から毎年訪れるこの祝日に、実のところ飲食店は開いていませんでした。(お店が開くようになったのは、意外と最近で1980年代ごろからと言われています)

つまり家で食事を用意して、食べて、祝う日ということですね。(1700年代にUber Eatsがあれば流行っただろうに)

そして、センパトとパレードはアイルランドから移住した人たちによって作られたイベントなので、何を食べるかと言うと、やっぱりアイルランドを思い起こさせるようなメニューが好まれるようです。

そして、このセンパトの日に、どのお店でも用意しておくべき!と言われている代表的なメニューは「コンビーフとキャベツ」なんだそうです。

はて、それってアイルランドっぽいイメージがするかしら?と思った方、とても鋭いです!

実際、あまりこのメニューはアイルランドの歴史では定番ではありません。

なんで、そんなアイルランドで定番じゃないメニューが、センパトの定番になったのか、そこにはちょっとした歴史がありました。

アイルランドでの定番は「ベーコンとジャガイモ」でした。

そう、どっちも違うんですね。

ベーコンに使われる豚肉はアイルランドで一番安いお肉で、ジャガイモは言わずもがなアイルランドの代表的な作物です。

それが、なぜに「コンビーフとキャベツ」という原型を残さない形に発展したのか、ちょいと見てみましょう。

豚肉=一番安い肉という話を聞いて、日本人なら「そうなんだ」と思うかもしれません。

店長的に一番安い肉はいつだって鶏のムネ肉ですから。

そう、そのようにその土地の環境によって、一番安い肉は変わるわけです。

で、アイルランドからアメリカに移住した人たちにとっての一番安い肉、それが牛肉だったんですって。(豚肉はそこでは最高級品)

ジャガイモはというと、こちらは安かったんですが、買うことができませんでした。

これは、歴史のコラムでも触れたことがありますが、アメリカに住む移民グループ(つまり元の国)のうち、アイルランドはかなりの後発組だったので、基本的にいじめられていたわけです。

先輩移民が「おい、このあたりの市場は上級生専用なんだ!後輩がノコノコ入っていい場所じゃないんだよい」てな感じで、アイリッシュ移民は先輩移民が経営している、ジャガイモも売ってるスーパーから閉め出されてしまった、というわけです。

そこで、牛肉の中でも加工されて安く、広く出回っていたコンビーフやキャベツなどが売っている、別のグループが経営している市場などで食材を買い付ける習慣が生まれました。

そしてその市場のグループの人たちに「コンビーフとキャベツ、めちゃ合いまっせ」ということを教えてもらい、ここに聖センパトの定番メニューが生まれたわけです。

関連記事

セントパトリックスデー特集記事