ライター:hatao
初めてアイルランドのダンス音楽を聴いたときの印象を憶えていますか。
私はかれこれ20年、毎日ほぼ休むことなくアイルランド音楽を聴いているほどのファンですが、大学時代に友達から借りたアイルランドのバンドLúnasa(ルーナサ)を聴いたときの印象が今だに忘れられません。
当時同じくらい熱中していたフォロクローレは、歌謡曲のように前奏や間奏そしてハーモニーがありました。それに比べてアイルランド音楽は、なんと音数の多いこと! メロディをひたすら繰りしながら数珠つなぎに物語が展開し、延々と途切れない催眠術のようなリズムに、私はすっかり「ハマって」しまったのです。
Lúnasaは伴奏やアレンジが革新的であることは言うまでもありませんが、それ以上に重要なのは、彼らの音楽はメロディ主体であり、その核心は休むことのないユニゾンである、ということです。
ヨーロッパに伝統音楽は数あれど、ここまでユニゾンに徹するのも珍しいでしょう。クラシック音楽の大国イングランドのすぐそばで、ポリフォーニーの教会音楽が国内にありながらも、そんなものは知らない、という風なのです。
いつからかは分かりませんが、アイルランドのダンス曲は無伴奏・ユニゾンが本分であるとしてきました。いや今ですら、それ以外は邪道と考えている節があります。これだけ伴奏付き音楽が当たり前になった現代であっても、頑なに無伴奏のCDを作り続けているのですから。
例えば今年発売されたフルート、パイプス、フィドルの3名によるこちらの音楽をお聞きください。
音楽の三大要素は「リズム、メロディ、ハーモニー」と言われることがあります。伴奏付きの音楽に慣れた私達は、和音やリズム楽器がないと音楽が展開せず単調で聴き飽きるのではないかと思いがちです。
そういう視点では無伴奏のアイルランド音楽には、ただメロディだけしかないと思われるでしょう。しかしメロディの中には、和音、リズムが内包されているのです。
たとえば、八分音符でレ・♯ファ・ラ・♯ファ……繰り返すフレーズは分散和音のDメジャーに感じられますし、このアルペジオを繰り返すと2拍子のリズムが感じられます。
優れた伝統音楽家はメロデイをただの音の高低や流れと捉えずに、その中からフレーズのまとまり、和音やリズムを取り出して、聴衆に提示することができます。このレベルまで考えるならば、曲をモノにするというのは、ただメロディが弾けるようになることとイコールではありません。
ですから伴奏がなくとも音楽が成立し、2時間ひたすらメロディばかりを演奏していても、本人も聴衆も飽きることがないのです。そのような音楽にとっては、曲の解釈が異なる伴奏者は、むしろ邪魔になってしまいます。
なんだかとてもハードルを上げてしまったのですが、無伴奏のすごさ、魅力が少し伝わりましたでしょうか。
今回、私hataoはこのたび初めて無伴奏ユニゾンの魅力に挑戦します。パートナーはフィドルの小松大さん。アイルランドで音楽を学び、伝統音楽の演奏において長いキャリアをお持ちです。
メロディとリズムが完全にぴったりと合うとき、二つの楽器はまるで新たな一つの「声」のように聞こえます。絶え間なく続くスウィングに酔いしれる。そんな瞬間をご一緒にお楽しみいただければ幸いです。
hatao x 小松大 アイルランド音楽コンサート
アイルランド音楽だけのコンサートは、10年以上していないかもしれません。
無伴奏・ユニゾンによるアイルランド音楽の演奏をお楽しみください。
【日時】
2021年9月26日(日)19時~21時 (18時開場)
【場所】
大阪市北区野崎町6−8 トレックノース梅田ビル B1
ALWAYS 梅田店
【演奏者】
hatao (アイリッシュ・フルート)、小松大(フィドル)
【料金】
3,000円(ドリンク込)
ご予約は私のメールまで hatao@irishflute.info
hatao x 小松大 アイルランド音楽ミニライブ&セッション
ライブの前日は、京都fieldにてミニ・ライブとアイルランド音楽セッションを開催します。
アイルランド音楽を演奏する方は楽器を持ってご参加ください。
【日時】
2021年9月25日(土)17:00開始〜19:30終了
ライブは17時から30分間、その後お客様とのセッション
【場所】
Irish Pub field
京都市中京区元法然寺町683の2F
【料金】
無料(要1オーダー)、ご予約不要