バロック音楽が盛んだった18世紀、リコーダーがドイツから北海を渡ってノルウェーにやってきました。しかし当時、バロック音楽などわからないノルウェーの海辺の人たちは、リコーダーの正しい運指もわからないまま、下から順番に指孔を開けて吹いてみました。
すると、偶然にも伝統的なノルウェーの音階に良く似ていることがわかりました。
正確には、3度と6度、7度が平均律に比べて1/4音低いのです。
人々はこの音階を気に入り、コーダーは土着化してノルウェーの伝統音楽に定着してゆきました。 sea fluteの名前には「海からやってきた笛」という意味が込められています。
高度な楽器製作の技術を持たなかった当時の人々は、身近にある木材からリコーダーを簡略化したデザインでsea fluteを製作しました。
この笛はほとんど忘れられかけていたのですが、ノルウェーの笛演奏家のStainar Ofstdal氏らが中心となり、最後の伝承者から曲を採集し、LPとして発表しました。
“Sjøfløyta” by Steinar Ofsdal, Hans Frederick Jacobsen, Per Midtstigen
現在でも演奏者は少ないものの、オスロ郊外に住むリコーダー製作家のBodeil Diesen氏が製作しています。
伝統的な音律は最低音がF#となるもので、これは19世紀の楽器をモデルにしているためです。
当時は、A=440ではなかったのです。
Sea fluteはノルウェーでも極めて珍しい笛で、録音も少ないのですが、弦楽器が盛んなノルウェーで笛の存在を伝える貴重な楽器として大切にされています。