コネチカット州にある非営利の芸術文化センターLa Grua Centerのサイトに掲載されている、ボストンを拠点に活躍するマット&シャノン・ヒートンについてのインタビュー記事を、当店でおなじみの翻訳家・村上亮子さんの翻訳でお届けします。
原文:Interview with the Heatons:
マット&シャノン・ヒートンのインタビュー
ボストンを拠点に活躍するマット&シャノン・ヒートンご夫妻のデュオ ─ アイルランドにルーツを持ち世界的に活躍するアメリカの演奏家 ─ が、9月30日(金)(訳者注:2022年と思われる)にラ・グリュア・センター(La Grua Center)(訳者注:コネチカット州にある非営利の芸術文化センター)に帰ってきます。
伝統的アイリッシュの音楽・楽器演奏を北アメリカの歌と融合させ、ベッキー・トレーシーBecky Tracyとケイス・マーフィーKeith Murphyを加え4人でお送りします。私たちはおふたりにインタビューし、今回の歌と楽器の融合や他のデュオとの共演、様々な楽器についてお話を伺いました。その一部を紹介します。
Q:音楽に関する思い出で一番懐かしいものは何でしょうか?
マット:父は教会のオルガン弾きでした。私は時々父の楽譜めくりをしたのですが、父の楽譜はどれも古くて、綴じ目がボロボロでした。それで教会のバルコニーからページを飛ばしてしまうのではないかといつもヒヤヒヤしていました。
Q:ご自分の楽器(木製フルート、ギター)を選んだ理由をお聞かせください。
シャノン:若い頃ナイジェリアに住んでいました。近所にベルギーの方がいて音楽を教えてくれました。最初はリコーダーで、それからフルートで。その最初の頃の経験から、コミュニティーで演奏する音楽が好きになりました。アメリカに戻ってアイルランド音楽を始め、木製のアイリッシュ・フルートのほうがいいと思うようになりました。アイリッシュでは金属のモダン・フルートより木製フルートのほうがずっと一般的ですから。
Q:ポッドキャスト「アイリッシュ・ミュージック・ストーリーズ」ではアイリッシュやスコティッシュや他のケルトの伝統音楽を扱っておられますね。どうしてアイルランドの歌に焦点を当て、またどうやってご自身の音楽的影響を演奏に紡ぎこんでいくのですか。
シャノン:音楽を耳から学ぶことのいい点の一つは、その曲と特別なつながりを持つということです。いつ、どこで、誰から教えてもらったのか。このような「ストーリー/物語」はいつも音楽の一部なのです。ポッドキャストを始めた時、それはこのような物語の自然な延長上にありました。そしてポッドキャストを通じてたくさんの色々な声を織り交ぜることができます。ポッドキャストを続けるのは苦労もありますが、得るものも多くあります。視聴者の方にも、音楽を演奏する私たちにとって音楽がどのように感じられるかを、少しでも知ってもらえたらうれしいです。
Q:以前ラ・グリュア・センター(La Grua Center)で演奏していただいた時はデュオでしたが、今回はベッキー・トレーシー(フィドル)とケイス・マーフィー(いろいろな楽器)のおふたりも一緒です。どうしてデュオから4人に変わったのでしょうか。何かサプライズとか挑戦してみたいこととかあるのですか。
マット:ラ・グリュア・センター(La Grua Center)で再び演奏することができて、本当にワクワクしています。たしか、このコンサートは2年前に計画したものだと思います。ですからやっとこの舞台に帰ってくることができて本当にうれしいです。ケイスとベッキーは私たちが大好きなプレーヤーです。この2人との共演は私たちの音楽に大きなプラスになります。おふたりはケベックの音楽やコントラ・ダンスなどの伝統に深い知識を持っていて、それは私たちにはないものだからです。私たちはカルテットというより、「デュオ+デュオ」です。なぜなら一つのデュオがアレンジをリードして、もう1つがそれに沿っていくからです。音楽を作り上げるのに本当にエキサイティングな方法だと思います。
Q:いろいろな楽器を使うということですが、バウロンは聴衆の方にもなじみがあるでしょう。でも、ブズーキはどうでしょうか。ギリシャの楽器ですね?どうしてこの楽器を選んだのですか?
マット:もともとはギリシャの楽器です。1960年代に何人かのアイリッシュのミュージシャンが試験的にブズーキを使って、この時点でブズーキはアイリッシュの主要楽器になりました。アイリッシュ・ブズーキの構造はもともとのギリシャのブズーキと異なっています。ギリシャのブズーキは背面が丸くなっていてネックはもっと長いのです。アイリッシュ・ブズーキは平らで水滴のような型(ティアドロップ型)をしていて、特に低い音がきれいです。大きくなりすぎたマンドリンと言ったところですね。よく冗談で言うのですが、私の楽器は世界中を旅行しています。ギリシャの楽器のアイルランド・バージョンでニュージーランド在住のスコットランド人が作ったのです。
Q:この厄介な時代に、おふたりの音楽に何を伝えてほしいと思いますか。金曜のコンサートで聴衆に何を感じ取ってもらいたいですか?
シャノン:大きな質問ですね。音楽は人と人をつなぐものだと思います。政治信条が必ずしも同じではない人々と一緒に演奏したこともあります。リスナーとしては、音楽で夢中になることができるし、時には美しさで心を満たすことが歩みを続ける勇気にもなります。私たちの音楽で暗闇の中に一条の光をもたらすことができるのなら幸いです。