幕開け:松井ゆみ子

ライター:松井ゆみ子

2024年元旦、キックオフにふさわしい素晴らしいセッションをわがカウンティ・スライゴーのパブで体験しました。

大好きなシェイミー・オダウドとリック・エッピンを中心に、地元のミュージシャンたちが集結。シェイミーは年末に、フィドルをメインにした新しいアルバムをリリースしたばかり。この日のセッションでもスライゴースタイルのフィドルを弾きまくってくれました。かっこいいのなんの。

この日初めて行ったパブ Bree’s は、サーフィンのメッカで知られるストランドヒルの住宅地に忽然といった感じで存在しています。現在の区画整理が成される以前の1800年代に創業したお店なので、今はガソリンスタンドの奥に位置する感じでとても不思議。かつてはパブの横にダンスホールがあったそうで、踊りに行く前に一杯飲んで行く場所だったとか。

フルート奏者に見覚えがあって声をかけてみたら、地元クリフォニーのセッションにときどき参加しているおじさまでした。上手な奏者なのでベテランと思っていたら「フルートを習ったのは、定年退職してから」って!

励みになりました。今年はもっと練習しよう!

来日したばかりのダーヴィッシュの歌姫キャシー・ジョーダンのソロアルバムもリリースされたばかり。まだ入手できていないのですけれど、先行したシングル曲をしばしばラジオで聴いています。素晴らしい。

アルバム「Storybook」は、ソングライター&作家ブレンダン・グレアム Brendan Graham 作品集で、キャシーとピアニストの ファーガル・モリーFeargal Murrayのコラボレーション。

シングル曲は、ブレンダンの詞をノルウエーの古いメロディにのせたもの。

いつものキャシーとは少し趣が異なり、新境地開拓といっていいのじゃないかしら。すてきです。

彼女は”Crankie Island”というプロジェクトも進めているのだそう。各カウンティの古い歌を探り出し、イラストレーターが絵で綴り、紙芝居のようなものを制作しています。

これはスライゴーのヴェニュー、ホークスウェル・シアター Hawk’s well theater で開催されたショウ。おなじみシェイミーも参加。チェロはステーブ・ウィッカムのバンドNo Crowsのアナ。元旦のセッションではマンドリンを弾いていました。

アーカイブのような役割をするものに仕上げたいと、何年もかけて作り上げているのをスライゴーの地元新聞記事で初めて知りました。アイルランドのミュージシャンたちの素晴らしいところは、歌ったり演奏したりするだけでなく、古くから伝わるチューンを次世代に繋いでいくことにとても積極的です。自分たちの作品としてCDにするだけでなく、史料として残すことにも力を注いでいるのですね。
 
さて。去年から2月1日のセイント・ブリジッドズ・デーが祝日になりました。でもここは、バンク・ホリデーといって休みは基本的に月曜日に限られます。なので、1日(木)は平日。そのかわりに2月5日(月)がバンクホリデーとなって、3日(土)から三連休。今年はその連休を使って小さなトラッドミュージックフェスを開催する地域があります。近場ではカウンティ・メーヨーのニューポートとカウンティ・ドニゴールのバリーシャノン。

どちらも楽器のワークショップがあり、ニューポートの講師陣はアキル島のサマースクールで教えてもらった先生たち。行こう!と思っていた矢先にバリーシャノンのワークショップの告知がスタート。夏とちがって地元の人たちが対象だからなのか、1ヶ月きってからの告知・笑

うちからはバリーシャノンの方がずっと近いので、こちらに参加する予定です。今、メキシコを旅行中のフィドル仲間も「行く、行く」とメールを返してくれたので楽しみです。

ダブリンでは1月24日〜28日までトラッド・フェスが開催されますし、冬のこの時期、伝統音楽が元気です。

イルン・パイパーのレナード・バリーのニューアルバムもリリースされるそうなので、入手したらご紹介しますね! プロデュースはフルート奏者のマイケル・マクゴールディック。フィドルはアンディ・モロウ。ダーヴィッシュのフィ
ドラー、トムの兄弟です。

新春のニュースとしては、なんとBothy Bandの再結成。

フィドルはケヴィン・バークとパディ・グラッキンのふたり。パイパーはオリジナルメンバーのパディ・キーナン。ミホールの喪失感は誰も埋められませんけれど、豪華な顔合わせです。

個人的には新しいグループの方に目が向きますが。

Lankumが6月にダブリン、キルメイナムの野外コンサートでメインキャストをつとめます。伝統音楽で、万単位のオーディエンスをそれも野外で魅了できるグループは滅多に現れません。すごいことだと思います。

オープニングアクトのひとりは、ジョン・フランシス・フリン。地味な歌い手ですけど、実験的なことをたくさん試みていて興味深いミュージシャンのひとりです。

フィドルの小松大さんが「好きでよく聴いてます」って言ってらしてびっくり! 日本ではまだジョン・フリンをご存知の方は少ないと思うので、小松さんの情報収集力とセンスに感服しました。ジョンのラジオでのロングインタビューも面白くて、あらためてちゃんと聴いてみたいと思っているところです。

もう野外コンサートは行く元気ないなーと思っていたのですけれど、これはちょっと見逃せない気がしています。