
ライター:松井ゆみ子
アイリッシュトラッドミュージックシーンにおけるバンジョー人気に言及するのは”今さら”な感じではありますが、地元のセッションでも馴染みの深い楽器になりつつあるので、今回のお題にしてみました。
拙著「アイリッシュネスへの扉」にも書きましたけれど、ミルタウンマルベイで開催されるウィリー・クランシーサマースクールに参加したときに、バンジョーの生徒が総勢120名と聞いてびっくりしたものです。人気の高いフィドルの生徒が250名。確か2015年の夏だったと思うのですが。
ちなみに今年のクランシー・スクールでフィドル生徒は400名以上だったとか。バンジョーもきっと倍になっているにちがいありません。
わたしが通うスライゴー片田舎のセッションでも、バンジョー奏者は5人ほど。毎回5人参加するわけではなく、他の楽器と持ち替えの人もいるので常に5人がバンジョーを弾くのではないですが、それでも毎回1〜2人のバンジョー奏者が加わっています。
バンジョーは音がよく通るので、スローセッションやワークショップで講師がリード楽器として使用することもあります。
バンジョーの使い方もぐっと幅が広がっていて、今わたしがいちばん好きな奏者パディ・コミンズ(左側)の演奏をぜひ。
上品でしょう?
パディ・コミンズはスキッパーズ・アレイのメンバーで、ジョン・フランシス・フリンのミュージック・ヴィデオにも出演しているユニークなアーティストで大ファンなのです!
ペアを組んでいるルークは5弦バンジョー奏者。ふたりともオールドタイムやブルーグラスの別ユニットを組んでいます。わたしのよく知らないカテゴリーなのでただいま勉強中。スライゴータウンでは、アパラチアンミュージックのセッションも毎週あり、一度だけ聴きに行ったことがあるのですが、ミュージシャンたちも凄腕で、この町に似合うのは新鮮な驚きでした。
もうひとつ、パディの腕前をご堪能ください。
お互いの駆け引きが成立して、笑みを浮かべるところが好き。
表情変えずに演奏するミュージシャンもたくさんいますけれど、演奏が楽しくなっちゃって思わず笑みをこぼす奏者たちに惹かれます。
バンジョーは存在感の大きな楽器なので、ひとつ間違えると凶器(大袈裟?)にもなり得るのを最近知ったばかり。
わが村のスローセッションに来たバンジョー奏者、大きな音は仕方ないにしても、リズム感なしは致命的。なにより大きなマナー違反は、セッション仲間とのコミュニケーション不足。自分の弾きたいチューンだけぐいぐい弾いたらしい。幸いわたしはその日は不参加で、又聞きの話なので本来フェアではないのですけど、その日をきっかけにセッションに参加しない人が急増したので、非は否めないよう。
セッションは楽器で行う”会話”です。たとえば居酒屋で、いきなり話の輪に入ってきた人が大きな声で持論だけ述べ続けたら辟易するでしょう?セッションのマナーも同じ。
まずはしっかり演奏できるよう、パディのYouTubeレッスンを。
OAIM(Online Academy of Irish Music)は数年前にスタートした伝統音楽のオンラインレッスンで、講師陣は錚々たる顔ぶれのミュージシャンたち。上記のようにフリーで見られるYouTubeがいくつかあるので、ぜひチェックしてみてください。
パディ・コミンズはダブリン出身ですが現在スライゴー在住で、地元のセッションに参加しているらしいのですが、タイミングが合わず見かけたことがありません。が、たまたまダブリンに出かけたときにパブで演奏しているのを目撃!感動しました。
彼の演奏は、うまく説明できないのですけど個性的で、ラジオでかかるとすぐに、あ!パディだ!とわかるのです。
少し津軽三味線を想像させるような感じ。
日本人の音楽仲間がいるそうなので、三味線のこと知ったのかなと思って、ダブリンで会ったときに聞いてみたのですけど、不思議そうにしていたから、偶然のようですが・笑
笑顔の素晴らしい好青年で、アイルランドでいちばん大好きなバンジョープレイヤーです!
