
ボタン式アコーディオン、実はとんでもない特徴があることがわかりました。
みなさん、ハーモニカを吹いたことはありますか?ハーモニカは「息を吹くとき」と「息を吸うとき」で違う音が出ますよね。
実は、アイルランドで使われているボタン式アコーディオンの多くも、これと同じ仕組みなんです!
専門用語では「ダイアトニック」とか「バイソノリック」と言うそうなんですが、要するにこういうことです。
あるボタンを押しながら、蛇腹(じゃばら)を縮めると「ド」の音が出る。
同じボタンを押したまま、蛇腹を広げると「レ」の音が出る。
え??
混乱してきました。
同じボタンを押しているのに、腕を伸ばすか縮めるかで音が変わるんですか?
ということは、演奏中は常に「このボタンを押して、かつ腕は縮める!」とか「次は広げる!」とかを瞬時に判断しなきゃいけないってことですよね?なんでしょう、ボタンアコーディオン奏者の方はみんな、選ばれし天才なのでしょうか。
ちなみに、ピアノ・アコーディオンは、押しても引いても同じ音が出ます(これをユニソノリックと言うそうです)。ですが、このボタン式アコーディオンは、1つのボタンに2つの音が住んでいるシェアハウス状態。ビギ丸程度の脳みそでは早々に処理落ちしてしまいそうですが、逆に言うと、「ボタンの数が少なくても、たくさんの音が出せる」というメリットがあるわけです。
そんなわけで、実際に並べてみるとわかるのですが、ボタン式アコーディオンはピアノ・アコーディオンよりもかなりコンパクトになっています!
アイルランドのミュージシャンたちは、このコンパクトで有能な相棒のことを、親しみを込めて単に「Box(ボックス=箱)」と呼ぶそうです。
「今日、箱持ってきた?」みたいな会話がなされているんでしょうか。なんだか運び屋みたいでかっこいい響きです。
ところで、この不思議な「箱」は一体どこから来たのでしょうか。
調べてみると、アコーディオンの原型が特許として登録されたのは1829年、場所はオーストリアのウィーンです。(割と最近)
発明したのはシリル・デミアンさんという人(マルセイユの悪童シリル・アビディではない)。ちなみに当時は貴族のサロンなどで楽しまれる、ちょっとシャレオツな楽器だったみたいですよ。
それがなぜ、遠く離れたアイルランドで「国民的楽器」のような扱いを受けるようになったのでしょう?
ビギ丸が大好きな歴史の教科書をチラッと見てみると、アイルランドからアメリカへ渡った多くの移民たちの存在が見えてきます。アメリカで大量生産されて安価になったアコーディオンを、出稼ぎに行ったアイルランド人が手に入れ、故郷に持ち帰ったのが普及のきっかけのひとつだと言われているそうです。
とは言え、アイルランドにはもともと「フィドル(バイオリン)」や「イリアン・パイプス(バグパイプ)」といった素晴らしい楽器があったはず。なぜ新参者のアコーディオンが、それらの古株を押しのけて人気者になれたのでしょうか?
これは個人的な推測ですが、最大の理由は「音量」と「頑丈さ」にあったのではないかと思います!
昔のアイルランド人が音楽を欲するイベントといえば、そう!ダンスパーティー!!!
とはいえ、その時代はマイクもアンプもありませんし、会場も農家の納屋や台所、あるいは道端でした。たくさんの人が靴音を鳴らして踊る中で、繊細な音色だけでは、ちょっと音が小さくて聞こえにくかったのかもしれません。
そこへ現れたのが我らがボタン式アコーディオン先輩です。
「おいおい、すごい音が出る箱があるらしい!」「これなら踊り手の靴音にも負けないでやんす!」 しかも、デリケートな楽器と違って、多少手荒に扱っても壊れにくい。(こういう頑丈なのってとても大事)
こうして、アコーディオンはアイルランドのダンス音楽の主役の座に躍り出た…んじゃないかしらと思っています。
もう少しだけ続きます!
