【私とケルト音楽】第一回:ラジオ番組パーソナリティ 恩田裕之さん 前編


出典 amax-music.net

インタビュアー:天野朋美

様々な分野で活躍している方をゲストにお招きし、ケルトにまつわるお話を伺う「私とケルト」。

第一回は、鎌倉エフエム「MCおんのおん☆しつ」などラジオ番組パーソナリティとして活躍している恩田裕之(おんだやすゆき)さんです。

さて、ラジオ番組パーソナリティとケルトはどのように繋がるのでしょうか。

どうぞお楽しみください。

インタビュアー:天野朋美(あまのともみ)

人との出会いで巡り着いた声の仕事

――ラジオ番組パーソナリティとしてご活躍ですが最近はどんな番組を担当していますか?

恩田:いまメインパーソナリティとして担当しているのは、夢を追いかけている人を応援する鎌倉エフエム「MCおんのおん☆しつ」*1と、武蔵小杉・川崎の今を伝えるかわさきFM「コスギスイッチON!」*2です。

「MCおんのおん☆しつ」は、いろいろな方面で活躍中の老若男女をゲストにお迎えして、その方の夢や目標などを語っていただき、それに近づく為の方法をご本人に聞きながら番組でも応援していこうという内容です。

「コスギスイッチON!」では武蔵小杉や川崎の歴史や今、これからについて笑いを交えながらお届けしています。

――どんなきっかけでラジオ番組パーソナリティのお仕事に就いたのですか?

恩田:今まで様々な声の仕事をする機会がありましたが、どれも知人の紹介からでした。

「オンちゃんは声がいいからやってよ!」と結婚式の司会の誘いが始まりで、そこで人前で話すことが楽しいと思ったんです。

それから司会の仕事が増えて、中には父親の一周忌の依頼もありましたね。

「本当にこんな感じでいいの!?」と戸惑いましたが、「楽しいのがいいんだよ」と依頼主が話してくれました。

声の張りがいいのは、映画の寅さんに憧れて鎌倉で的屋をしていたからですかね。

銀杏に甘栗、ラムネなんか売っていましたよ。

きんぎょすくいなんて、短いスカートの女の子が来ると「なんていい仕事なんだ!」ってね(笑)。

ラジオも人からの紹介で、コミュニティFMの立ち上げから関わることもありました。

――この仕事に就いて良かった!と思うのはどんな時ですか?

恩田:ラジオ番組をやっていると「いい曲をかけてくれてありがとう」「オンちゃんよくこんな古い歌知ってるね!」なんてメッセージをもらうこともあって、「だってレコード持ってたもーん!」なんて自慢したりして(笑)。

そのやり取りがとても嬉しいですね。

あとは番組に来たゲストが笑顔で帰ってくれると、この仕事をしていてよかったなぁと思います。

番組をやる上で、ゲストがリラックスして気持ちよく話せるような場の雰囲気作りには特に気を使っています。

こちら側は黒子ですからね。

事前にゲストのSNSを見て、収録前に「あのケーキおいしそうだったね」なんて話をしたり。

ホテルマンをしていたこともあるので、その時のおもてなしの経験が生きていますね(笑)。

やっぱりリスナーには声の笑顔は伝わりますからね。

――逆にこの仕事は大変だ…と思うのはどんな時ですか?

恩田:僕は専門学校に通って声の仕事に就いたわけじゃなかったので、司会業の依頼があっても最初はどんなことを話せばいいかわからず苦労しましたね。

その当時はインターネットも無かったので調べることもできず、その仕事をしている先輩に聞くしかなかったです。

幸い周りに恵まれて、いろいろ教えてもらって原稿を書いていましたね。

――声のお仕事のスペシャリストの恩田さんですが緊張することはありますか?

恩田:それがね、あるんですよ。

本番1分前になって、「こんな仕事受けちゃって、もし失敗したらどうしよう…」なんて分厚い壁ができてしまうことがあります。

だけどマイクを通した自分の声の返しが良ければ、安心して上手く話すことができるんです。

特に日比谷公会堂での返しの声が良かったですね。

「本日はお集まりいただき・・・うわあいい声!」って本番中に自分で言っちゃってみんな笑っていましたよ(笑)。

それからは自分が番組やイベントをやる時には出演者にその辺のことを聞いてあげるようにしていますね。

映画音楽を愛した少年時代

――恩田さんは今までどんな音楽を聴いてきたのですか?

恩田:小学5年生ぐらいから、映画のサウンドトラックにハマりました。

初めて父に買ってもらったのは、ラロ・シフリンが音楽を担当した「燃えよドラゴン」のサントラです。

その後は小遣いを貯めながらジョン・ウィリアムズが担当した「タワーリング・インフェルノ」「ジョーズ」「インディージョーンズ」など。

その当時はLP盤*3でしたね。

邦画では大野雄二の「犬神家の一族」、芥川也寸志の「八つ墓村」です。

頭の中のスクリーンに自分が監督をした映像を映写する

恩田:様々なサウンドトラックを聴くうちに、「映画音楽の原点はクラシック音楽!だよな?」と生意気なことを思いムソルグスキーの「展覧会の絵」「禿山の一夜」や、ドビュッシーの「月の光」などを聴いては、頭の中のスクリーンに自分が監督をした映像を映写していました。

今考えると暇な中学生ですね(笑)。

音楽を聴きながら勝手に妄想で映像を作るのが好きなオタクでした。

映画音楽から洋楽ポップスへ

恩田:高校に入ってからも映画音楽は聴いていましたが、当時ヒットした「サタデーナイトフィーバー」辺りから映画のサントラにポップス系の音楽が当てられたのがきっかけで洋楽にハマり、70年代後半から80年代のモータウン*4系やロック、AOR*5なども聴き、カセットテープに収めていました。

カセットテープに録音するときには「途中で曲が途切れるのはNG!」と考えていましたから、片面30分でキッチリ収めてB面へチェンジできるようにしていましたね。

18歳くらいから忙しくなり音楽を聴く時間が無くなり、ラジオから聴こえてくる洋楽を聴く程度になりました。

――音楽再生機器はどんなものを使っていたのですか?

恩田:落し玉や貯金を貯めて小学5年生で買ったのはカセットテープレコーダーのSONY 1980markⅡ。

当時父親が持っていたオープンリール*6デッキを内緒で使っていましたが、やっぱり自分専用のレコーダーが欲しかったですね。

その後はマランツのカセットテープレコーダー。

続いてステレオへ移行してパイオニアのアンプやチューナーやカセットデッキは個別に購入してコンポにしていました。

ちなみにMDは収録時の音域が狭くなるので使わなかったです。

――楽曲も機器もとても詳しい恩田さんですが、ご自身で演奏されることはありますか?

恩田:全くありません!カラオケで昭和のアニメソングを唄うのが好きなくらいですね。

知らぬ間に聴いていたケルト音楽

――恩田さんとケルト音楽の出会いを教えてください。

恩田:実は最初はケルトという言葉自体は知らなかったのですが、今回インタビュアーとして来てくれているティンホイッスル奏者でありシンガーソングライターの天野朋美さんが僕の番組にゲスト出演したときに、「聴いていると頭の中に自然の風景の映像が浮かんでくる…この雰囲気がケルト音楽だったのか!」と発見がありました。

アイルランド自体もサッカーで聞いたことがある程度でしたね。

僕の好きな映画音楽の中でも調べていくうちにあれもケルト、これもケルトとどんどん出てきて…。

実はケルトの要素が入った音楽をたくさん聴いていたと気づいたんです。

空気に溶けていくような優しい音色

――恩田さんのケルトを知るきっかけになり光栄です!

お仕事をされている中で、いろいろな音楽を聴いたりミュージシャンに出会う機会が多いかと思いますが、恩田さんの思うケルトの魅力はどんな所だと思いますか?

恩田:一言でいえば、優しい音色ですね。

特にティンホイッスルは、リコーダーにもフルートにも、弦楽器にもない、空気に溶けていくような音だと思いました。

発した声は二度と戻ってきませんが、ティンホイッスルの音色は空気と混ざり合い空間を揺らすような音楽だと思います。

その波長が体に入ると、琴線を揺さぶるのだと思います。

強すぎず弱すぎず、人間にとって心地いい風の強さ…風当たりのいい音です(笑)!

聴いている人は、ケルトの音色が溶け込んだ空気で呼吸をするような感覚になるのではないでしょうか。

調べてみると、色々な作品でティンホイッスルは使われているんですよね。

まずは僕が昔から好きだった「ロード・オブ・ザ・リング」のサウンドトラック。

トラック17に7分近い大作の曲が入っているんですが、この中の2分20秒からしばらくティンホイッスルのソロがあります。

そのあと4分35秒あたりから、またティンホイッスルがスッと入ってくる。

映画のラストの方でこの曲が使われているんですが、そこがまたいい場面で涙を誘うんですよ!

他には、日本の映画の「ローレライ」、NHKドラマの「マッサン」、ゲームソフトの「Final Fantasy」、ジブリ映画の「ゲド戦記」でも使われていますね。

ケルト音楽が知られていないのはもったいない

――とてもお詳しいですね!どうやって調べたのですか?

恩田:インターネットで調べていたら、「サウンドトラックの中のケルトの笛」*7という所に詳しく載っていたんですよ。

――それは…まさにこのインタビューが掲載される「ケルトの笛屋さん」のページです!

恩田:そうだったの?それは嬉しい偶然ですね!

他にもいろいろ調べたけれど、このページが一番詳しく書かれていましたね。

こんな風に様々な映画や作品に使われているのに、ケルト音楽というものがあまり知られていないなんて本当にもったいないですね。

日本でケルト音楽を演奏するベテランの方もいらっしゃるようですし、もっと日本で普及させるべきだと思います。

(つづく)

ラジオ番組パーソナリティの恩田裕之さんをゲストにお迎えした第一回「私とケルト」。

今月はここまでです。

次回も引き続き恩田さんをゲストに、ラジオで流す音楽へのこだわりや横浜とケルトの知られざる繋がりのお話をお届けします。

どうぞお楽しみに!

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*1:鎌倉エフエム毎週木曜 19:30~20:00
*2:かわさきFM毎週木曜 14:00~15:00
*3:長時間記録できるレコード盤としてクラシックやアルバムの収録に使用された。
*4:デトロイト発のレコードレーベル。スモーキー・ロビンソンやスティーヴィ・ワンダー、ジャクソン5を排出しポピュラー音楽の人種統合において重要な役割を担った。
*5:1980 年代の日本で音楽用語として用いられた。意味は「大人向けのロック」
*6:リールに巻きつけただけで、カセットに入れていない磁気テープ。
*7:ケルトの笛屋さん HP 内

【Profile】

ゲスト:恩田裕之(おんだやすゆき)
神奈川県出身。ラジオ番組パーソナリティからクレイジーケンバンドライヴMCまで、声のお仕事のスペシャリスト。
インタビュアー:天野朋美(あまのともみ)
山梨県出身。ケルトの魅力にハマってしまったシンガーソングライター、ティンホイッスル奏者。ケルトの妖精と日本の妖怪が好き。
https://twitter.com/ToMu_1234