シンガーソングライターの天野朋美がお送りする「私とケルト音楽」。
このコーナーでは様々な世界で活躍している方に、ケルト音楽との出会いやその魅力についてお伺いしていきます。
ついに最終回となりました、フィドル奏者であり“音楽のある暮らし”をテーマにひとびとへワクワクする時間を届ける会社、Ode.Inc(オード インク)代表の小松大(こまつだい)さんのお話、どうぞお楽しみください!
求められるのはコミュニケーション能力と柔らかいイメージ
――ミュージシャンの派遣も行っているとの事ですが、ここで「ミュージシャン必見!雇う側はこんなミュージシャンを望んでいる!」なんて教えていただけますでしょうか?
小松:そうですね、マルシェのイベントではお客さんや出店している人など多くの人と交流する機会が多いので、コミュニケーション能力が求められます。
あとは、アーティスト写真がイベントのイメージと合っていることも重要です。
マルシェはライフスタイルをイメージするものが多いので、身近に感じられる柔らかいイメージのミュージシャンが好まれることが多いです。
個人的には、若い世代のミュージシャンに仕事を振りたいと考えています。
僕らのような30代から40代の世代にはプロミュージシャンが多いですが、その下の世代では学生サークルは盛んでもプロミュージシャンはほとんどいません。
プロにならなければいけないということは無いですし好きなスタンスで演奏すればいいのですが、せっかく演奏者が増えているなら若い年齢の人にもこういう職業を目指してほしいですし、僕達の世代ばかりが目立っているのはアイルランド音楽業界的にハッピーな事じゃないと思うのです。
今一緒に活動しているハープ奏者の若い女の子がいるのですが、屋外イベントだと女性のお客さんも多いので彼女にアドバイスをもらうこともあり、そういう意見の交換も楽しいと感じています。
ミュージシャンが持ち味を発揮できる環境づくり
小松:若手を育てるというか、みんなが色々な事が言えてやりやすくなることがアイルランドの音楽シーンが発展していく事だと思っていて、ミュージシャンがそれぞれの持ち味を発揮できることが僕の会社の使命のひとつだと思っています。
嬉しい事に関わった若いミュージシャンは「大さんなら話をわかってくれるし、こういうアイデアをぶつけたらおもしろいんじゃないか」と思ってくれているので、そういった意見を拾って具体化していくと楽しいですよね。こういう事を増やしていく事でシーンがだんだん変わっていくと思います。
音楽と自然に出会い気軽に演奏できる場を
――色々な側面を持ち大活躍の小松さんですが、今後の展望はありますか?
小松:今はOde Inc.(オード インク)の代表としてやっていくのが自分のひとつのライフワークだと思っているので、「音楽がある生活」をテーマに家族でアイルランド音楽を楽しめるレッスンの企画や、新型コロナウイルス感染症の影響で延期になってしまったアイルランドフェスタをしっかりやりたいですね。
あとは、アイリッシュハープの普及を進めていきたいと考えています。
この楽器は凄く可能性があると思っていて、家のリビングにアイリッシュハープがあったら素敵だなと思っていまして。
今まで不動産の広告ではリビングに必ずピアノが置いてあるなんていうこともありましたが、今は電子ピアノが主流ですし、それならアイリッシュハープはサイズ感も音色も良いですしその選択肢もありだと思うんですよね。その広告を見たことがきっかけになって楽器を始めるのもいいですし、実際住宅メーカーの知人にお勧めしているんですよ。
また会社としては、野外のマルシェのイベントでその音楽に触れて気に入って、自分で深く調べることをしなくても「習えるところもありますよ」と紹介もできるような、自然な出会い方と演奏への敷居を低くすることも考えています。
今後のアイルランド音楽シーンの在り方
小松:新型コロナウイルス感染症が流行し、今後は音楽の在り方や表現の仕方が変わっていくと思っています。
緊急事態宣言によってイベントが中止になったりセッションなど実際の演奏活動が出来なくなりましたが、それによってプロやアマチュアなど立場関係なく色々な方法で発信するようになりました。
僕も3月15日にやや大きな規模の配信ライブを行ったのですが、発起人は企業に勤めている30代のアイリッシュダンス愛好家の友人で、その彼が「こんな状況でミュージシャンの仕事が減っている状況を何とかしたい」と声をかけて来てくれまして。
彼の想いが書かれた文章は広がり、その後また新しい企画が生まれました。
今後はそれぞれが発信者として独自に活動していくというシーンになっていくのではないかと思います。
例えばクラシックなどは若手や大御所など上下関係がはっきりしていて、業界が大きければ大きいほどその関係を飛び越えて活動していくのは難しい事ですが、アイルランド音楽業界ではそう言った心配はいりません。
オンライン上では誰でも気軽にできますし、演奏でなくても好きなミュージシャンを熱く語るだけでも面白いですよね。
会社としては曲をたくさん覚えてセッションに行ったり、アイルランド音楽に詳しくなくても、難しい事は考えずに自然に「この音楽いいよね」という感覚を大切にしたいです。
――ありがとうございました!最後に読者の皆様にメッセージをお願いします。
小松:アイルランド音楽が身近にある生活はとても豊かなものだと思うので、より広い層の多くの方に「こういう音楽があって楽器があって、やってみると楽しいよ!」という事を一緒に広めていきましょう。
楽器からアイリッシュダンスに興味をも持ったり、アイルランドカルチャーのなかで行き来があってもいいですね。
(おわり)
フィドル奏者でありOde Inc.(オード インク)代表の小松大さんをゲストにお迎えした第十二回「私とケルト音楽」いかがでしたか?
小松さんの活動をぜひホームページでチェックしてみてください!
【Profile】
- ゲスト:小松大(こまつだい)
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フィドルとヴィオラというふたつの楽器を手に音楽と人と場所をつなぐアーティスト。
“音楽のある暮らし”をテーマにひとびとへワクワクする時間を届ける会社、Ode Inc.(オード インク)代表。 - https://www.ode-inc.com/
- インタビュアー:天野朋美(あまのともみ)
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ケルトを愛するシンガーソングライター、やまなし大使。
株式会社カズテクニカCM出演中。 - https://twitter.com/ToMu_1234