韓国のアイリッシュ・シーン 2024年の現況リポート

ライター:hatao

6月に1週間、ソウルに滞在して2つのコンサートと3つのティン・ホイッスルセミナーを開催しました。韓国には何度も訪問して音楽活動をしているのですが、今回は5年ぶりの訪問となりました。最新の韓国アイリッシュ・シーンについて簡単に報告します。

韓国では、2010年頃に活動が活発だった男女二人のユニットBardが、最初期にアイルランド音楽を演奏し始めました。それまでも韓国ドラマのOSTや映画音楽(例えば「イ・サン」)でティン・ホイッスルが使われることがあったのですが、アイルランドの伝統音楽としてではありませんでした。Bardはルビン氏とパク・ヘリ氏の二人ともが歌を歌い多様な楽器を奏でるユニットで、K-POP風の楽曲と伝統的なアイルランド音楽が掛け合わされたとても興味深い音楽でした。もともと二人はそれぞれが作曲家であり歌手で、アイルランド音楽以外の活動も多いです。

Bardは歌が良いのですよ。K-POPとアイリッシュ両方好きな人には最高です。

解散後はそれぞれで活動しています。2020年にパク・ヘリさんが発表したティン・ホイッスルの作品が配信で聴くことができます。

その頃からソウルを中心に、当時20代の若者たちがアイルランド音楽の演奏をし始め、イテウォンのWolf Hound(現在は閉店)などで定期的なセッションが行われていました。初期はアイルランドCCEで発行されたFionn Seisiunの楽譜を見ながら手探りの状態でした。私が通うようになったのも、この頃からです。

今回は6月22日に孔徳駅そばのカフェ・グレンの貸しスペースにて日韓アイルランド音楽愛好家の交流会を開催、20名以上の方々が集まりました。懐かしい面々はもちろん、遠くは電車で2時間以上の光州からも参加してくれました。最初に日本人チーム4名(フルートの私、フィドルのさいとうともこ、フルートの清水俊介、歌手の重松理恵)と、主催者でハープ奏者のハン・スミさんのステージが1時間。それから全体でのセッションです。皆さん本当に上手で、ダンスも披露され、とても盛り上がりました! 一部が動画で公開されています。

その翌日6月23日はソウル市江東区の千戸駅そばのスペース「亀」で、日韓8人メンバーによる「ケルティック・バロック」のコンサートを開催。18世紀のアイルランド、スコットランドの音楽などを演奏しました。配信はこちらで見ることができます。

現在の韓国のアイリッシュ・シーンは、演奏者としては新しい顔ぶれはそれほど出ていないそうです。セッションはイテウォンのCraic Houseで毎週水曜日に開催されています。また、月2回日曜日に、別の場所でも行っているようですが、メンバーが30代になりそれぞれ忙しく、毎回5名程度までの人数で行っているとのことでした。

こちらはセッションの様子

バンドとしては唯一、ギターのDarrenさん(韓国人)、コンサーティーナのスルギさん、フィドルのミンジョンさんのトリオによるThe Wild Atlantic Wayが活動しています。ドニゴールやケリーの音楽、歌やダンスを織り込んだ本格的な演奏を聴かせます。とても素敵なので、見てみてください。

ほか、光州に数人アイルランド音楽を演奏する人がいます。こちらは光州の演奏者をインタビューしたドキュメンタリーです。

これら伝統音楽シーンとは別に、永登浦区のFolk Music Societyという団体がティン・ホイッスルの講習を行なっています。私は今回含め、これまで何度も講師として教えさせていただきました。

韓国にはIrish Association Koreaという団体があり、St.Patrick’s Dayイベントなどアイルランド文化のイベントを開催しています。YouTubeチャンネルがあるのでご紹介します。

https://youtube.com/@chairirishassociationofkor3416?si=nNrWulAyo4734MRk

この秋10月12日〜15日、こちらのIrish Association KoreaとCraic Houseが中心となり、International Feile in Seoulが開催されます。日本、台湾、シンガポール、マレーシアからゲストを招き、3日間セッション、コンサート、楽器と踊りのワークショップ、プレゼンテーションなどが開催されます。日本からは私、Toyota Ceili Bandほかが参加予定です。アジアのアイルランド音楽関係者が集まる機会は初めてで、記念的な催しとなりますので、興味のある方はぜひ予定にしておいてください。