- 12月1日更新:「後日談-コロナと今後について-」を追記しました
冬の恒例ケルト音楽のフェス「ケルティック・クリスマス」
日本では1998年以来、20年以上続く「冬の風物詩」として親しまれているケルティック・クリスマス。
読者の皆様の中にもコンサートに行ったことがある方も多いのではないでしょうか。
今年は2020年12月12日(土)、13日(日)の二日に渡り初のオンライン開催という事で、主催のプランクトンからプロデューサーの是松渓太さんに今年の見どころを伺いました。
配信ならではの特別なコンテンツを
──今年はオンライン開催という事ですが、ケルティック・クリスマス2020の見どころを教えてください。
是松:これまでケルティック・クリスマスに出演してくれた沢山のミュージシャンに声をかけていまして、過去のライブ映像やセッションなど配信ならではのコ ンテンツを考えています。
世代を超えて人と人が繋がるというのがケルトの一番大きい魅力なので、新旧取り混ぜて、世界にこれだけケルトの音楽を継承してそれぞれでやっているという多様性や幅広さを伝えられるような場になるといいですね。
通常のケルティック・クリスマスでは2,3組しか観ることができない所を、大御所のミュージシャンが同時に何組も出演したり、普段はスケジュールが合わないことや遠くに住んでいて出演が難しいミュージシャンでも、オンライン上でひとつのセッションをすることが出来るのはオンラインならではだと思います。
──出演ミュージシャンの豪華セッションも観れるのですか?凄い!
是松:ケルトのミュージシャンたちは世界中にいますが、ボキャブラリーは同じ部分があるので離れていても一緒に演奏できるのです。
クラシックなど他の音楽ジャンルであれば譜面に起こしてパートを決めて、リハーサルをして…、という大掛かりな準備が必要になりますが、ケルト音楽ではそれが必要ないという点が大きな強みです。
すでに10組以上のミュージシャンが映像を送ってくれまして、個性やユニークな魅力が出ています。
ミュージシャンによって音響環境や演奏中の背景が違うので、音以上にその雰囲気を楽しんでもらいたいですね。
貴重な過去の来日映像も放出
──これまでのケルティック・クリスマスの過去の映像も流れるのですか?
是松:ケルティック・クリスマスは20年以上続いているので、撮り貯めた映像が沢山あるんです。
一つのイベントで出演ミュージシャンの現在と過去の姿を両方とも観ることができるのは、オンラインならではですね。
なかなか来日できないミュージシャンや残念ながら解散してしまったバンドの映像もあるので、かなり貴重なものだと思います。
──声をかけたミュージシャンの反応はいかがでしたか?
是松:良い反応でしたね。アイルランド国内はロックダウンしてパブも開いていない状態であり、アメリカなど国外での活動も難しく、演奏したくてもできないというのが現状です。
そんな中イベントに参加できることが嬉しいと思っているミュージシャンもいますし、自分たちでオンラインライブを始めてその形態に慣れてきたバンドもあり、基本的にはどのミュージシャンもノリノリでOKしていましたね。
こんな時代だからこそケルトの魅力を届けたい
──なんと無料配信なのですね!驚きました!
是松:無料にしたのは、チケット制にすることで見てくれる人を限定したくないという思いからで、こんな時代だからこそ沢山の人にケルトの魅力に気付いて欲しいのです。
古来のケルトの人々は自然と共生する意識を強く持っていて、今の新型コロナウイルスを例にすると人間対ウイルスという敵対関係として捉えるのではなく、様々なものが渦巻いている中に人間も自然(ウイルス)も同列に存在していると考えています。
また、移民の文化によって世界中にケルト民族の子孫が散らばっていて、今も同じボキャブラリーやカルチャーを背景に持つ彼らは断絶された中でも繋がれる要素を持っているし、そもそも移民に出て行ったのが飢饉だったり自然災害だったり、苦難を乗り超え生き延びるためだったり。
そういう歴史を持っているケルトの人々の文化や思想は、こういう時にこそ活きてくると思ったのです。
──チケット代がかかったとしても観たいという方は多いのではないでしょうか?
是松:ありがたい事に応援してくださる方も多く、そういう方にはクラウドファンディングという形でご支援をいただいています。
クラウドファンディングを実施すること自体とても悩みましたが、すでにたくさんの方が支援してくれていて。
これだけ反響があるということの理由の一つには、生の演奏を見る機会を失い海外から文化が入って来ない状況で、それに対しての危機感を皆さんが持っているからかもしれないですね。
素晴らしいミュージシャン達が活動できない状況で、それを途絶えさせないよう応援するということにたくさんの方が賛同してくれて嬉しいです。
弊社としても今年はコンサートが一本も開催出来ず厳しい状況ですが、皆さんが支援してくれるのであれば、社会的に必要とされているというか、続けていくべきことなのだろうと思いますし、皆さんがどう思っているのか 判断を仰いでいるという意味もありますね。
──支援の返礼品がとても魅力的ですね!
是松:こちらのお返しとしてはささやかなものではありますが、これまでのケルティック・クリスマスの歴史を振り返るパンフレットを作ることにしました。
20年以上も続くイベントにも関わらずパンフレットは作ったことが無く、今回はたくさんのアーティストが参加してくれますし、これまでのケルティック・クリスマスを総括するようなものを作ってもいいんじゃないかと。
オフィシャルTシャツを作るのも初めてですが、どちらも今まで欲しいと言ってくれる方が多かった ので、支援のリターン品とさせていただきました。
──最後に皆さんにメッセージをお願いします!
是松:ケルティック・クリスマス2020のホームページで出演アーティストを随時発表していきますので、楽しみにしていてください。
また、このような状況になったことでケルトへの愛着がより強くなり、「ケルティック・ジャイア〜ケルトの渦〜」というケルトの総合情報サイトを立ち上げました。
“ジャイア”はゲール語で“渦”という意味がありまして、この名前を付けたのも渦というのがケルトの世界観をすごく現わしていると思ったからです。
ケルトの笛屋さんのサイトは情報量が多く詳しいので新たに総合情報サイトを作ることに対して少し考えましたが、またチャンネルが違うものかと思いますのでケルトの事を知りたい人達にはそれぞれのサイトを行き来してもらえたら嬉しいです。
現在公開されているトム・ムーア監督の新作映画『ウルフウォーカー』のインタビューもありますので、そちらもぜひご覧ください。
(おわり)
後日談-コロナと今後について-
新型コロナウイルス感染症と今後について語ってくださいました。
是松:コロナがあったことで、よりケルト的な世界観・考え方への想いが高まり、ケルト文化の新たなホームページを立ち上げました。
今年に入り一度もライブが出来なかったこともあり、じっとしているよりは何か行動を起こそうと思いまして。
今までコンサートの宣伝はチラシや口コミ、イベントで親しい人に情報を伝えて拡散してもらうなど、草の根の活動に力を入れておりましたが、やはりデジタルや配信の文化に向き合わないといけないと思ったわけですね。
私は今の現代社会が直面している数々の問題は実はコロナによる影響とは捉えていなくて、音楽業界で今起きている問題に関しても、もともと90年代ごろからずっと課題だったものがコロナをきっかけに顕在化したという事だと思います。
CDからストリーミングに代わり、メディアもそのあり方を急速に変えていく中、本来それに適応していかなければならなかった。
業界全体がみんなそれに気づいていながら、急速な変化を恐れて「いつか向き合わなきゃね」という感じで、なんとなく今までのフォーマットにしがみ付いているようなところがありました。
そこにコロナが起こり、社会の距離感が否応なく変わってしまったことで、いきなりその問題と目の前に対峙させられた感じがします。
人と人の距離ができて、デジタルで皆が繋がっていく時代に、プロモーターやレコード会社、音楽業界がどういう存在になっていくべきなのか問われている気がしますね。
【Profile】
- ゲスト:是松渓太(これまつけいた)
- プランクトン/プロデューサー。
- http://plankton.co.jp/
- インタビュアー:天野朋美(あまのともみ)
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ケルトを愛するシンガーソングライター、やまなし大使。
株式会社カズテクニカCM出演中。 - https://twitter.com/ToMu_1234