木製アイリッシュ・フルートの手入れ


出典 mcneelamusic.com

アイルランドの楽器メーカーMcNeelaが公開しているブログ記事の中から、木製アイリッシュ・フルートのメンテナンスについてまとめた記事を当店でおなじみの翻訳家・村上亮子さんの翻訳でお届けします。

原文:https://blog.mcneelamusic.com/2021/01/18/irish-wooden-flute-maintenance/

木製アイリッシュ・フルートの手入れ

木製フルートは美しい楽器ですが、なかなか手のかかるものです。

アイリッシュ・フルートを長く使うためにはお手入れが欠かせません。

よく手入れされたフルートは何年たっても美しい音色を奏でますが、手入れの悪いフルートは美しい音を失い、優れた奏者の手によっても貧相な音しか出せません。

ひび割れや他のダメージで、フルートが鳴らなくなることもあります。

では、どうすればこのような問題を避けることができるでしょうか。

簡単なことです。

ちょっと手間をかけてやれば、あなたのフルートはよくなり、寿命を伸ばします。

きちんと手入れをすれば、美しい音楽を生み出し演奏を素晴らしいものにして、あなたを癒してくれるのです。

少しご説明しましょう。

このブログは主に木製のアイリッシュ・フルートを持っている人に、フルートを正しく手入れする方法を学んでいただくために書きました。

アイリッシュ・フルートのメンテナンスをする上で「するべきこと」、さらに大切なのは「してはいけないこと」を学んでください。

ダメージを受けたフルートの音を聞き分けられるようにお教えします。

そうすればひび割れや他の問題に気づくことができます。

日常の手入れやオイリングの正しいやり方を身につけることができます。

このガイダンスに従えば、あなたのフルートを最高の状態に保つことができます。

1. フルートの保管

基本から始めましょう。

どこに、どのように木製フルートを保管するか、は重要な問題です。

木は気温と湿度の影響を受けます。

極端な気温の影響を受けるところに保管したいとは思わないでしょう。

するべきこと:

  • ケースに入れて涼しい乾いた場所で保管する。
  • 丁寧に扱う。

してはいけないこと:

  • 暖房機の上に置いてはいけません。(かつてこれをした友人がいます。名前は言いませんが。)暖房機にスイッチが入って、哀れにもフルートは大きく割れてしまいました。今までに出会った最悪の破損でした。2番目にひどいのは氷点下になる車の中に一晩置き忘れられたフルートです。
  • ケースから出した状態で不用意に持ち歩かないでください。何か堅いものに当たって傷ついたフルートをたくさん修理してきました。このようなトラブルはケースに保管することで容易に避けることができます。

簡単ですね。では次に進みましょう。


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2. 日常の手入れ

正しく手入れをしないと木製フルートは傷んできます。

湿った所ではカビが生えて、木を腐食させるのです。

演奏した時に発生する結露(それは唾液ではなくて、結露です!)が木に染み込んできます。

その結果、木は膨張し反ってきます。

またカビの生えやすい環境でもあります。

それで演奏後にフルートの中を拭くことが大切なのです。

フルートを買った時に掃除棒がついてくるものもありますが、そうでない場合も簡単に手に入れることができます。

当マクニーラ楽器店ではフルートのメンテナスに必要な物全て含むメンテナンス・キットを販売しています。

一般的な掃除棒は片方の先に穴のついた細い木の棒で、清潔な布をその穴に通してフルートの中を拭きます。

布は吸湿性の高いものがよく、私は木綿、または柔らかいものがよければ絹をお勧めします。

古いシャツの端切れなどを掃除用に残しています。

円錐形ボアの場合は気を付ける必要があります。

片方がもう片方より細くなっています。

掃除棒を太い方から入れて、細い方で布を詰めてしまわないように気を付けてください。

掃除棒がボアの内部を傷つけないように、そっと優しく扱うように気を付けてください。

もしセッションで掃除棒を持っていないことに気が付いたら、アンブシュアを完全に口でふさいで、強く吹きこんでください。

これで、内部の結露を少しは吹き飛ばすことができます。

しかし、これをするときは、まわりのミュージシャンの飲み物に気を配ってください。

伝統音楽のミュージシャンは床に飲み物を置く悪い癖があるのです。

どれだけのビールがフルート奏者のおかげでダメになったことか!


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3. オイルを塗る

オイルで木製フルートの寿命を延ばすことができます、フルートを健全に保つために必須なものなのです。

好ましくないオイルも多くありますが、グレープシード・オイルとアーモンド・オイルは使っても大丈夫です。

ナッツ・アレルギーがあるのでしたら、グレープシード・オイルを使ってください。

他のオイルを代わりに使ってはいけません。

フルートにダメージを与える恐れがあります。

植物性のオイルの中には料理には向いていても、デリケートな木製フルートのメンテナンスには向いていないものがあります。

アーモンド・オイルもグレープシード・オイルも健康食品や薬を扱っている店で買えます。

ビタミンEが配合されているものもありますが、大丈夫です。

お肌にもフルートにもいいものです。

フルートにオイルを塗ると、乾燥を防ぐことができます。

乾燥した環境で起こる歪みやひび割れから起こる亀裂の可能性を減らすことができます。

でも、覚えておいてください。

オイリングはダメージを受けたフルートを修理することはできません。

修理することより傷めないように気を付ける方が簡単です!

方法:
布または自分の手を使って(アーモンド・オイルもグレープシード・オイルも乾燥肌にいいものです)、フルートのボディーに数滴のオイルを塗り拡げます。

しばらくおいて染み込ませ、乾いた布で拭きとります。

オイリングをする時に心に留めておいてほしいことがあります。

  • 少量で十分です。オイルは控えめに使ってください。使い過ぎないでください。1~2滴で十分です。
  • キー付フルートの場合は、キーに気を付けてください。キーはデリケートなものです。キーのパッドにオイルをつけないようにしてください。
  • コルクやジョイントにオイルをつけないでください。たわんできます。
  • あまり頻繁にオイリングしないでください。最多で月1回です。頻繁に演奏するのなら、さらに少なくても大丈夫です。
  • ボアの内側もオイリングできます。

    アーモンド・オイル、グレープシード・オイル共にフルートの外側でも内側でも使えます。

    別の布を掃除棒につけてください。(または掃除棒を2本用意してください)

    布に少量のオイルをつけて、フルートの中を通します。

    どんなに手入れの行き届いたフルートでも、修理が必要になることがあります。

    そういう場合はどうしたらいいでしょうか。


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    4. 壊れたフルートの修理

    自分では修理はしないでください。

    自分で修理をしようとする前に専門家のアドバイスを求めてください。

    セッションで、年季の入ったベテラン奏者が、テープやひもで補修した傷だらけのフルートを吹いているのを見たことがあるでしょう。

    それを見て、カッコいいと真似をしてはいけません。

    有能なフルート職人や修理の専門家が世界中にいるので、壊れたフルートは修理してもらえばいいのです。

    オンラインで連絡を取ってアドバイスを求めれば、スピーディーで簡単です。

    専門家に任せる:
    折れた腕を自分で接ごうとは思わないでしょう。

    フルートも同じように丁寧に心を込めて扱ってください。

    フルートを自分で接着しようとはしないでください。

    特に瞬間接着剤はダメです。(これを書きながら鮮明に思い出すことがあります!)

    私達マクニーラ楽器店では、どのようなご質問にもお答えします。

    また批判めいたことも言わないとお約束します。

    しかし、どういう場合に助けを求めるべきかは、どうすればわかるのでしょうか。


    出典 mcneelamusic.com

    5. アイリッシュ・フルートが壊れる兆候

    ひび割れはどんなに手入れをした楽器でも起こります。

    ひび割れができても心配しないでください。多くは簡単に治ります。

    髪の毛程の細い割れ目は、目で見てわからなくて、音で気が付くかもしれません。

    フルートが突然スカスカで風音まじりの、ぼやけた音を出すようになったら、どこかにひび割れがあって、空気が漏れているのかもしれません。

    時には乾燥のし過ぎで、音が出なくなることもあります。

    まずオイリングをして、それで改善しないか見てください。

    数日おいて、滑らかな張りのある音に戻らないか様子を見てください。

    もしだめなら、どこかに傷がないかよく調べてみてください。

    もともとの木目や木の風合いのために見つけにくいかもしれません。

    よくある場所はヘッドジョイントの下の方か、本体の上の所です。

    つまり、ヘッドとボディーがつながるところです。

    コルクやジョイントに裂け目がないか探してみてください。

    摩損や裂け目はフルートをつないだり分解したりする時によく生じます。

    フルートを組み立てる時にグリスを使うことで摩耗を減らすことができます。

    キー付きフルートの場合は、キーが動きにくくなっている可能性もあります。

    定期的にキーをチェックして、キーが正しく動くことを確認してください。

    破損がどのような物であっても、専門家には直すことができます。

    私は多くのフルートを復活させてきました。

    新たな命

    このステップに従ってメンテナンスをすれば、アイリッシュ木製フルートは今までにない最高の状態になります。

    しかし古い木製フルートも、いつかはその一生を閉じる時が来ます。

    長く使って摩損してくると音色に影響が出て、修理もできなくなってきます。

    こういう状態になっても絶望してはいけません。

    他にもたくさんのフルートがあるのです。

    あなたの古いフルートは、あなたが一歩踏み出して、新しいフルートとうまくやっていくことを願っています。

    私たちマクニーラ楽器店では、自身の工房で作ったフルートや他の職人のフルートなど、様々なフルートを扱っています。

    一度オンライン・ショップをのぞいて、目に留まるものがないか探してみてください。

    探しているのが、木製ケルティック・フルート、キー付きアイリッシュ・フルート、初心者用フルートであっても、あらゆる予算や能力にあったフルートをご提示できます。

    私共は40年以上フルートを作り、販売しています。

    ですから修理でも新規購入でも最高のアイリッシュ・フルートの専門家に出会ったことになります。