出典 https://blog.mcneelamusic.com/
アイルランドの楽器メーカーMcNeelaが公開しているブログの中から「アイリッシュ・フルートの練習方法とメンテナンス方法」についての記事を許可を得て翻訳しました。
原文：Practice and Flute Maintenance
アイリッシュ・フルートの練習方法とメンテナンス方法について
この記事では、練習とアイリッシュフルートのメンテナンスについて、フィンタン・バレリー著「A Complete Guide To Learning The Irish Flute」からの素晴らしい抜粋を紹介しています。
練習方法
練習はフルートを演奏する上で最も大切なことです。曲のレパートリーができれば、たまに友人と会って合奏することができるようになるでしょう。しかし新しい曲を学びたいのであれば、一人で練習をする必要があります。そのためには練習に適切な条件を整えることが重要です。自分が安らげる部屋であるか？ 誰にも迷惑をかけないような場所であるか？ 音楽を学ぶ以前に、音楽をよく聴くことも大事なので、ワイヤレス・ヘッドフォンは便利です。自分の1日や1週間を振り返ってみて、どこに練習時間を組み込むか決めてください。練習場所が自分の生活スタイルに合っていれば、いつでも気が向いたときに練習ができるかもしれません。
練習を確実にする1つの方法は、フルートをケースから出して組み立てたまま、部屋の隅などに置いておくことです。もう言い訳はできません。一日中5分だけ繰り返し練習するのは大事なことで、そうすれば時間が積み上がりますし、この方法で練習すれば、全体としてより多くの練習ができるかもしれません。楽器を放置しておけるように、古いフルートやプラスチック製の安いフルート、マーチングバンド用のフルートなどがあれば、ちゃんとしたフルートを破損させる恐れがないでしょう。
演奏の準備
人前で演奏する前に、良い楽器で十分な練習をしてください。自宅で古い楽器を使った時には素晴らしい演奏ができても、良い楽器ではきちんと演奏ができないのでは、練習した意味がありません。フルートにはそれぞれ演奏法や吹き方があり、どんな古いフルートであろうと吹くのはアンブシュアにとっては良いことですが、やはりメイン楽器の独自性に慣れる必要があります。まとめると、
- 1. 定期的に練習する
- 2. いつ、どこで練習するかを決める
- 3. 毎回練習する曲のプログラムを決めておく
- 4. 週に1回、あるいは月に1回、新しい曲を弾くという目標を立てる
- S. 練習のたびに、音域、呼吸、装飾など、特に練習することを決めておく
レパートリー
フルートに適した曲は数多く存在します。ウェブ上にも、thesession.org、worldtrad.org（フルート関連のサイト）、norbeck.nu、イリアンパイプスの組織である pipers.ie、ダブリンのThe Irish Traditional Music Archive itma.ie など、曲専用のウェブサイトがたくさんあり、数千曲の曲にアクセスすることができます。
練習のヒント
エア、ポルカ、ジグ、ホーンパイプ、リールというように、さまざまな種類の曲を選んで取り組みましょう。エアは音色のコントロールを、ポルカは徐々に速いテンポに、ジグは強いリズムを、ホーンパイプはそれをさらに発展させ、リールはスタミナを試すというように、この順番に従って目的を明確にして練習してください。
最初のうちは簡単なメロディーを選びましょう。これは自分に過度の負荷をかけないようにするために重要なことであり、また音符の動きが少ない曲の方がリズムに注意を払うことができます。
演奏の練習をするときは、個人的な満足のためにレパートリーを増やすことも意識してください。各曲を完璧に仕上げることです。自信のある曲であっても常にやり方を変えてください。そのためには、過去に覚えた曲に戻ることをためらわないでください。そのたびに自分がどれだけ成長したかを実感できるはずです。
練習のアドバイスのまとめ
個人の目標：毎回の練習で目標を持つ。何を吹くか決めて、それを守る。
正確さ：練習していることに完全に集中する。ゆっくりと、完全に、正確に行う。
姿勢を正す：頭を上げ、背筋を伸ばす。最初に身につけた姿勢は、演奏人生の中でずっと続くものです。
唇：唇はしっかりと硬く、かつ伸びすぎないように、そして唇と唇の間のアパチュアはリラックスした薄いアーモンドの形であることを確認しましょう。
音色：フルートの当て方を色々に動かして、音色の変化を試してみましょう。
リラックスする：あくびをして、口、喉、肺を時々リラックスさせましょう。
肺：肺活量が増えるように努力しましょう。横隔膜を押し下げるような感じで、深く息を吸い込む練習をします。肺が一杯になったと思ったら、さらに力を入れて、最後の息を吸い込む。
息を絞る：練習の際、肺の中の空気がなくなるまで演奏した後、腹筋と上半身の筋肉に力を入れ、さらに最後の音を出そうとします。繰り返すことで肺活量が増え、自信がつきます。
呼吸法：最初はゆっくりとした曲で練習し、音色と呼吸のコントロールを確立します。
テンポ：ダンス曲は、最初はゆっくりしたテンポで演奏しますが、できるだけ早く標準的なテンポに合わせます。ジグやリールはスローエアではありません。
近道をしない：聞いたり書いたりした通りにすべての音を吹く。きちんと演奏し、ラクをしない。短絡的な演奏は誰も騙せません。曲をきちんと吹くのか、きちんと吹かないのかはあなた次第です。
タンギング：タンギングは使うのは控えめに、考えを持って使いましょう。できれば口の奥の方で「ク」という発音で、リールやジグであっても、曲のなかでタンギングを活用してリズムをコントロールするようにしましょう。
正しい音域：常に曲の中のあるべき正しいオクターブの中で演奏しましょう（オクターブをはずさない）。オクターブを外して良いのは、装飾、強調、ベース奏法（低音域を挟む）、曲の変更の合図といった場合に慎重に選んで行うときです。
息継ぎをする：息継ぎをする予定の場所より前に空気がなくなってしまった場合は息継ぎをしますが、リズムをはずさないように、息継ぎによって吹けなかった音は省きます。
緊急の場合：パート終了時に息が足りなくなった場合、高いオクターブを吹いて終了すると、より少ない息の量で済むでしょう。
ミスをする：練習では好きなだけ間違えてください。人前で演奏するための曲にも取り組みましょう。この曲では、一息で演奏できる音数は無理のない程度にし、曲中のすべての音を最後まで演奏するようにしましょう。
時間：自分の足でリズムを刻みます。そして最初のうちは他の奏者の足踏みも見て、タイミングを合わせましょう。
レパートリー：曲のタイプを吹きやすい1種類に絞るのは避けましょう。様々な曲で演奏することで、あなたの演奏の様々な側面を向上させることができます。
フルートのメンテナンス
フルートの故障の原因といえば、フルートに衝撃を与えることだけではありません。湿気も同様で、多すぎたり少なすぎたりしてもいけません。演奏中にできる結露は、すべて底部から滴り落ちるわけではなく、一部は木にしみ込んで膨張し、菌類やバクテリアの快適な住処となります。菌やバクテリアが繁殖し、繁殖した菌は幸せかもしれませんが、徐々に木材を侵食していきます。
ですから、演奏が終わったら、フルートの棒の先に布を通したもので楽器を拭き取ります。
楽器が乾いたら、アーモンドオイルをしみこませた布でこすり、断面を見たときにかすかに光沢があるようにします。アーモンドオイルは薬局で買うことができ、量が多ければ多いほど値段は安くなります。1/4リットルの容器は一生分使えますが、小さなボトルの4倍程度の値段で買うことができます。食用油は使わないでください。腐敗します。亜麻仁油のような濃い油は、乾くと固まりますので使わないでください。
修理
市場に流通しているフルートの多くはかなり古いもので、中にはアンティークも少なくありません。アンティークの多くはただ眺められるだけの存在ですが、現役のフルートは常に活動しています。あらゆる道路をあらゆる車で運ばれ、湿度が高かったり低かったり一定でなく、暑い部屋や氷点下の飛行機の機内に置かれ、ポケットに入れられ、熱い窓辺や車のダッシュボードで干されます。フルートは何度も何度も人々によって握り合わされ、引き離され、しばしば1日に数回以上、人々によって、空気や唾液、タバコの煙やタールが何時間も充填されます。振動が伝わり、指孔を指で叩かれ、疲労でバラバラにならないのが不思議なくらいです。常に叩かれ、落とされ、振られ、上に座られる。
こうして破損したとしても修理は可能ですが、同じ故障を何度も繰り返してしまうこともあります。フルートほど酷使される木工品が他にあるでしょうか？ もし、あなたが忙しく演奏して回っているのであれば、毎年修理が必要になっても驚かないでください。
丈夫な楽器
とはいえ、フルートはかなり頑丈な楽器で、キーのないモデルであれば、多少の衝撃にも耐えることができます。しかし、キーがあるものはデリケートで、簡単に故障させてしまうのです。主な損傷箇所は、ヘッドジョイントのコルク、チューニングスライド、楽器同士の接合部、キーのヒンジ、スプリング、パッド、そしてフルート本体の木部です。コルクは、ヘッドジョイントに心地よくフィットするものでなければなりません。コルクが緩い場合の一時的な修理方法としては、コルクを水に浸すか、コルク・グリースを側面に塗るか、柔らかい綿糸で巻き直すとよいでしょう。
チューニングスライドは常にグリスを馴染ませておく必要があります。スライドはしっかりと固いけれども、押し込むのも押し出すのも簡単で、緩んでいないことが大切です。緩すぎると、ヘッドジョイントを顎に固定することができません。コルクグリスの厚い層で固めたり密閉することもできますが、その処置が必要なほど摩耗している場合は、交換したり再度メッキする時期が来ています。
フルート本体の各セクション間のジョイントは、乾燥して反ることがあります。しかし最も典型的な接合部の損傷は、過度の圧縮や糸やコルクの結合部の磨耗です。この場合もコルクのグリスで補うか、柔らかい綿糸を数回余分に巻くかします。また配管用ジョイントテープを使って、過度の遊びや空気漏れを補う人もいます。ジョイント部分はしっかりとフィットしていなければなりませんが、組み立てたり分解したりするときに、激しくねじったり、力を入れたりする必要があるほどではありません。
キーのヒンジとなる金属ピンは、摩耗したり曲がったりして、孔をうまく閉じられないことがあります。また、バネが弱くなったり、パッドが乾燥したり、分解したりすることもあります。このような場合、キーのパッド側でフルートに輪ゴムをかけると、正しく密閉されることがあります。また、フルートを水で洗い、キーや接合部の漏れを塞ぐという古くからある方法も、一時的な対策としては有効です。キーパッドの下の孔は、緊急時には粘着テープで塞ぐことができ、その場合の音色への影響はそれほどではありません。
ひび割れとボディーの補修
フルート本体も乾燥しすぎると割れることがありますが、その場合もテープで閉じることで問題がなくなることもあります。また、フルートを水洗いすれば、ひび割れは塞がります（訳者注：そうは書いていますが、絶対に水洗いしないでください）。割れが軽微であれば、フルートを吹き始めは鳴りにくいことがありますが、演奏するうちに改善されます。これは息の結露がキーパッドやジョイントの隙間に入り込んで隙間を閉じてしまうからです。
以前の演奏家たちは手元にある最も近い液体、しばしばビールを楽器内に注いでひび割れを「埋める」ことがありました。しかし、これは激しくドラマティックな行為で、語り草となることがあるものの、フルートに対しては徐々に死をもたらす行為です。なぜなら液体は木材を膨張させひび割れを広げるだけでなく、ビールの糖分がひび割れの中で腐敗し真菌の成長を促進して楽器の物質を食い破り、音色と反応性を失うようになってしまうためです。
破損や故障を発見したら応急処置をしてください。そしてできる限り早く、あるいは余裕があるときに修理業者に持ち込んでください。スライド、キーワーク、ジョイント交換などの重大な問題については、フルートメーカーに依頼するのがよいでしょう。しかしこれは面倒で時間のかかる作業であり、手元から数週間フルートがなくなることもあることを覚えておいてください。
フルートを保護する最も簡単な方法は、ケースに入れておくことです。ケースは木やグラスファイバー、耐衝撃性のあるプラスチック製、またはパッド入りの布製など、手頃な価格で購入することができます。ケースを固定するためにはキャッチをつけるかストラップをつけるなどして、最終バスに駆け込むときに道に落ちてしまわないようにしましょう。もし暑い地域にお住まいであれば、楽器の脱水症状を防ぐためにフルートを薄いビニール袋に入れてケースに入れておくのも悪くないアイデアです。
授業料とワークショップ
アイルランドや海外の多くのフェスティバルでは、1日または週末にフルートのワークショップ授業が行われます。より洗練されたサマースクールでは、1週間毎日数時間の授業が行われ、有名な奏者や少なくとも高い能力を持つ奏者が指導にあたります。地元の教室は各地域の演奏家に問い合わせるか、インターネットで探すのが一番です。
アイルランドで最も有名なサマースクールは、クレア州のミルタウン・マルベイで開催される「ウィリー・クランシー」です。毎年7月の第1週目に開催されます。翌週はアン・タバーカリーで開催されるサウス・スリゴ・スクール、その翌週はライトリム州ドラムシャンボで開催されるジョー・ムーニー・スクールがそれに続きます。
時間さえあればハットトリックを達成することができます。Co. MayoのScoil Adaは8月に続いて開催されます。他にもニューヨークのキャッツキルズやフランスのトカネなど、季節ごとに様々な学校があります。フルート専門の学校はウェストコークのCruinniu na bhFliuitです。これらの場所での社会的、また音楽的な環境によって、演奏スタイルとレパートリーの両方において独特の経験を得ることができるでしょう。