【北欧の笛】ヘリエーダルス・ピーパ Härjedalspipan

ヘリエダーレン地方

ヘリエーダルス・ピーパ(Härjedalspipan)は、スウェーデンのリコーダー型のダクトがついた縦笛です。
ヘリエダーレン地方に伝わる笛なので、この名前となりました。指孔は6つです。

構造

ヘリエーダルス・ピーパは円筒管でできています。
一方、スウェーデンのダーラナ地方に伝わるもう一種類の伝統的な縦笛、スピロピーパ(spilåpipa)はリコーダーと同じ円錐管です。

円筒管は、円錐管の笛に比べて低音域において力強い音が得られることが特徴です。

運指はティン・ホイッスルのように下から開けてゆくだけのシンプルなものです。

伝統的なヘリエーダルス・ピーパはトウヒ材から作られ、最低音がA#に調律されます。音階にはある種の“ブルーノート”が含まれます(後述)。

笛の製作方法は、 Lillhärdalに住む故オスカル・オロフソン(Oskar Olofsson) 氏からグンナル・ステンマルク(Gunnar Stenmark)氏に継承され、現在も製作がつづけられています。

歴史

スウェーデン固有の笛についての歴史は不明なことが多いのですが、最初の記述はリチャード・ダイベック(Richard Dybeck)によって書かれた1846年の本“Svenska vallvisor och hornlåtar med norska artförändringar”(ノルウェー音階によるスウェーデンの羊飼いの歌と角笛の曲)に見出せます。

この本によると、ヤムトランドやヘリエダーレンにおいて、柳の樹皮や、樹皮を剥いた木から作られた6つ孔の笛がspäla-pipaと呼ばれています。

ダイベック氏によると、笛吹きの伝統は羊飼いの生活と固く結びついていたので、羊飼いが残り続けたこれらの地域で現在まで笛が伝承されてきたのだそうです。

この笛の最も有名な担い手は、ヘリエダーレン地方に住んでいたウーロフ・ヨンソン(Olof Jönsson 1867–1953)氏でした。

スウェーデンには他にも同様の構造をもった様々な笛が多数あります。
現在、以下の笛が確認されています。

スウェーデン語で「笛を吹く」という意味の言葉から…
spilåpipa (Älvdalen, Dalarna地方)
Spälapipa (Överberg, Härjedalen地方)

用途から…
vallpipa (att valla とは家畜を集める、の意味)
låtpipa (låt とはメロディの意味),

見た目から…
långpipa (lång は長い、の意味)
träpipa (trä は木で出来た、の意味)
björkpipa (björk は白樺の意味)
granpipa (gran はモミの木の意味)

伝承される地域から…
evertsbergspipa (Evertberg in Dalarna, North West Sweden)
hälsingepipa (Hälsinge in Hälsingland, North East Sweden)
offerdalspipa (Offerdal in Jämtland, North West Sweden)

リヴァイバル

スウェーデンの笛吹きの伝統は19世紀から20世紀にかけて衰退したのですが、1989年にミュージシャンのアレ・メッレル(Ale Möller)氏がヨナス・ヨンソン(Jonas Jönsson 1864-1961)氏の笛を分析し、これがヘリエーダルス・ピーパの標準形となりました。

この笛は、平均律の長音階と比較すると3度が25-30セント、6度が25セント、7度が25-30セント低いのが特徴です。
また、1度や2度の音程も平均律に当てはまらない音程であることがあります。

アレ・メッレル氏は1996年に伝承曲の調査の結果を“HÄRJEDALSPIPAN”(1996)というCDにまとめて、発表しました。これがスウェーデンにおける伝統的な笛のリヴァイバルのきっかけとなりました。


本来ヘリエーダルス・ピーパは独奏、または笛同士の合奏で演奏されており、ヴァイオリンやギターといった楽器との合奏の習慣はありませんでしたが、現在ではアンサンブルで演奏することを前提に基準ピッチを440hzとしており、様々なバンドの録音でも使用されています。

代表的な演奏者と録音


Göran Månsson “Mon”(2006)


Ale Möller バンド”Frifot”として”Jarven”(1996)


Mats Berglund


Erik Askupmark バンド”Svanevit”として”Svanevit”(2005)

グンナル氏の製作する笛の種類について

グンナル氏は伝統的なモデルに加えて、独自に開発したモデルを含む様々な笛を製作しています。
当店で販売していない楽器のご注文は、輸入代行にてお引き受けします。
価格表はこちらをご覧ください。

伝統的なモデル

グンナル氏は様々な調子で製作しています。
調律は伝統的なスウェーデンの音階と平均律からお選びください。


Göran Månsson ”PL 1523″ E管を使用

Glamaleik “Vals after Ante Falk” E管を使用

Glamaleik “Polska after Ante Falk” E管を使用

関連リンク