ハンマー・ダルシマー 持ち運べるピアノ


出典 https://larkinthemorning.com/

Lark in the Morningに掲載されている「ハンマー・ダルシマー」についての解説記事を、当店でおなじみの翻訳家・村上亮子さんの翻訳でお届けします。

原文:Hammered Dulcimer – Portable Predecessor of the Pianoforte – Lark in the Morning

ハンマー・ダルシマー 持ち運べるピアノ

アリーナ・ラーソン

ハンマー・ダルシマーは最も古い弦楽器の一つです。弾いて鳴らすのではなく、叩くタイプのプサルタリーで、この台形のツィターは西暦900年頃にペルシャ帝国で作られたようです。もっともアイルランドのtiompan(一種のハンマー・ダルシマー)のほうがもっと早くから存在していたという説もあります(こちらもどうぞ)。1600年代になるとハンマー・ダルシマーは移民によってアメリカに持ち込まれ、ワームディドゥルwhamadiddle、リンバージャック・ピアノ(樵のピアノ)limberjack’s pianoの名で300年にわたって広く愛されました。

当時の移民は移動することが多かったので、「持ち運べる」というのは大切な要素でした(こちらもお読みください)が、アメリカ人が定住し、持ち運べる楽器よりもピアノを選ぶようになり、ハンマー・ダルシマーはそれほど求められなくなりました。その後1960年代のフォーク・リバイバルを経て、合衆国でハンマー・ダルシマーへの関心が復活しました。ですから、皆さんもこの楽器のことはご存じでしょう。(皆さんのハンマー・ダルシマー体験をコメントで聞かせて下さったら嬉しいです。)

現代のピアノはハンマー・ダルシマーの子孫だとよく言われます。1960年代にドイツのダルシマー奏者パンタレオン・ヘーベンシュトライトPantaleon Hebenstreitが、ダルシマーの躍動する感性とハープシコード(これは弦をはじいて音を出します)の音域を融合させようとして、9フィート(270cm)の長さで弦が200本あるダルシマーを作りました。のちにイタリアのバルトロメオ・クリストフォリBartolomeo Cristoforiが最初のピアノ(gravecembalo col piano e forte)を製作ました。これは基本的にはハンマーを動かすためのキーがついたダルシマーでした。この二つの発明はそれぞれ別個に起こったのですが、より大きな音を出すためにハンマーを使う利点は明らかで、ハープシコードはピアノに取って代わられるようになりました。

ダルシマーという語はギリシャ-ローマ語のdulce(ラテン語で甘い)とmelos(ギリシャ語で歌)から来ています。フレットがあって、ひざに置いて弾くタイプのアパラチアン・ダルシマー(マウンテン・ダルシマー)と混同しないでくだい。ハンマー・ダルシマーはそれぞれの音が、別々の弦で発せられ、その点はハープに似ています。


▲ハンマー・ダルシマーとアパラチアン・ダルシマーの比較はこちら

一般には弦は2本ずつ(またはコースで)ユニゾンに調弦され、そのおかげで音が大きく澄んだ鐘のような音色がします。すでにお気づきのことと思いますが、ハンマー・ダルシマーを特徴づけている特色の1つはハンマーです。(例はこちら)一般には木製で両手に持って演奏します。(ほかにもジム・ボウズのような別の道具もあります。)


▲訳者参考動画:ハンマーダルシマー用の弓を試してみました♪

ハンマー・ダルシマーはあらゆるジャンルの音楽で使われます。クラシック音楽、アパラチアの民俗音楽、アイリッシュ音楽等ジャンルの垣根を超えています。また、世界中で様々な名前で呼ばれています。サントゥール(ペルシャ)、ヤンチン(中国、洋琴)、ツィンバロン(ハンガリー)、キム(タイ)、タンパノン(フランス)、ハックブレット(ドイツ)等々、他にもあります。Lark in the Morning楽器店では、ダスティー・ストリングス、ソングバード、マスター・ワークスなど様々なハンマー・ダルシマーを販売しています。

ハンマー・ダルシマーを始めるにあたって

大きさ

当サイトのダルシマー・リストを見ると、12/11 とか 16/15 のような数字が付いています。このスラッシュ(/)はブリッジを表していて、数字は双方からブリッジを横切る弦の数を表しています。例えば 16/15 は高音域で16本、低音域で15本の弦がブリッジをわたっていることになります。12/11 のダルシマーは2オクターブ半であるのに対して 16/15 は3オクターブの音域があることになります。(下記の動画でご確認ください)

チューニング

ダルシマーは弦の数が多いので、(ハープと同様に)チューニングはいささか面倒です。弦は四角いペグに巻かれていて、チューニング・レンチを使って1本ずつチューニングしていきます。すべての半音を備えたダルシマーもありますが、そうでないダルシマーもあります。ハンマー・ダルシマーのチューニングの参考動画は役に立ちますが、スマホ用の初心者向けのアプリもあり、その中ではチューニングについても触れられています。

1度チューニングをすれば、安定した湿度のコントロールが効いた環境の下では、ダルシマーのチューニングはそう狂うものではありません。