ライター:松井ゆみ子
hataoさんからすごい原稿を読ませていただいたところなので、感想も含めての雑感を書いてみたいと思います。
hataoさんの「アイルランド音楽のグルーブ講座」。伝統音楽を学ぶ上での重要課題がリズム。これを分析して文章にするのはたいへんな作業だったと思います! 敬服!
自論ですが、アイルランド人はジグとリールのリズムがDNAにきざまれていると感じています。演奏するとかしないとかに関わらず。
それでもときどき、リズム感のよくない早弾き奏者にセッションが引きずられることがあり、ベテランたちが「どのチューンだ?」と首をかしげつつ、「これかな」という感じでペースを取り戻していくのを目撃します。リズムが整わないと、チューンも別物になっちゃうのですよね。こわいこわい。
現地アイルランドでフィドルのレッスンを受けるときに強調されるのは、まずリズム。「間違えるのはぜんぜんかまわないけど、リズムを乱すのはNG」と言われます。演奏手順をまちがえるからリズムが狂うんだけど・・とも思うのですが……。
初めてのチューンを学ぶとき、メロディとともにリズムも一緒に学びます。どこを強調するかetc。ダンスのステップを言及する先生もいます。「その演奏だと踊れないでしょ」ああ、肝心なのはそこか! あるフィドラーも「ダンスする人が踊りやすいのは、どっちの弾き方かな?」と問いかけていて、そういうことか!と膝を打ったことも。
とはいえ、近年はダンス向けの演奏者と、音楽に特化している演奏者に分かれている傾向もあるので、ダンスステップの影響がどれくらい演奏者に意識されているのかしらね?とはいえ、ジグもリールもダンスからきているリズムですから抜きにしては考えられないはず。
興味深い映像を見つけました。若い頃のパディ・グラッキンがダンスに合わせて演奏しています。コメントが入っていますが、シェイマス・エニスとノエル・ヒルの姿が。
そしてもうひとつ。衝撃映像です!まずはご覧くださいっ
1972年、12月23日の生番組。クリスマス特番だったのでしょう。Planxtyとチーフテンズ、ここにもシェイマス・エニスの姿が! ステップが速いかどうかよりも、踊る意欲と創造性に感服します。Planxtyの面々が唖然とした表情なのに比べて、チーフテンズは大受け。伝統的なダンスと音楽が別々の方向性を持ち始めたのはなぜか。垣間見た気がするのですが。
今月の原稿には間に合わないのですが、これからイルン・パイパーのレナード・バリーのコンサートを見に行きます。新作CDも素晴らしく、上質なセッションを理想的な形で収録しています。それをまた生で聴く幸せ。
現地アイルランドのトラッドミュージックシーンは、ひとつの成熟期を迎えている印象で、見逃したくないライブがたくさん!
来月はライブレポートとCD情報(今はネットで聴けるもんね)をお届けしたいと思います。