【店長、ケルトの国へ行く】第35回:19日目 フルート製作家の工房へ【世界的な笛製作家ポールさん】

ライター:オンラインショップ 店長:上岡

ケルトの国へ行くシリーズについて
オンラインショップ店長の上岡さんが2017年にケルトの国々を旅した時の「旅行体験記」です!

本日は、昨晩のセッションに途中から参加されたポールさんという、著名な笛製作家のおうち兼工房におじゃますることになっています。(もちろんキアランさんが手配してくださいました)

朝ごはんは、またしてもhataoさんが用意してくださり、そのおかずと共にフランスパンやらチーズやらをいただきます。

あぁ、ありがたい。(店長は何もしてないただのパン人)

10時ごろに車でポールさんのご自宅へ向かいます。

またしても森に入っていき、ある分岐路に差し掛かった時に「ここを右に行くとポールさんの家だけど、左に行くとシルヴァン・バルー(ブルターニュの天才フルート奏者)の家なんだよ」とキアランさんが教えてくれます!

なんてこった、この14世紀の姿を残す小さなブルターニュのゲムネという町は、ケルト音楽ファンにとっては聖地のひとつだったのか!と感心しているうちに、石造りの素敵なおうちが見えてきました。

はじめて訪れるフルート工房に興味津々で、フルートが椅子の足みたいな角材から、丸く削られて、最終的にあんな筒状の楽器になるという説明を聞くと、まず、この角材のほとんどの部分へ削り取られてしまうんだ…とびっくりしてしまいました。(角材の値段を聞いたらなかなかのお値段!)

つまりなかなかのお値段だけど、このクオリティの角材はそうそう手に入らないし、これはいい音が鳴りそうだ!と目をつけたものを製作者が購入し、それを完成に従って削り、研磨し、そして繊細な調整を繰り返しながら、いつも納品していただいているフルートの形になっている、というのは、ほんとに大変な労力の上にできあがったものなんだ!と、すごく目を開かされました。

さて、ちょっと面白いことに気づいたのですが、店長は名前を「じゅんぺい」と言います。

ただ、英語を喋る人にとって「Jumpei」というのはなかなか覚えづらいのは重々承知していたので、この旅行中は昔からのニックネームのひとつでもある「JP」を積極的に使っていました。

特に「JP from Japan」(ジャパンから来たJP)は会話のつかみに最適で、これだけでひと笑い取れるので、かなり重宝していたわけです。

が、フランスに入ってからというもの、この「JP」万能説がうまくはまらなかったんです。

なんでかしら?と、お上品に首を傾げていると、hataoさんが「じゅんぺいくんって、ジャン=ピエールっぽいよね、きっとフランス人にはJumpeiの方が発音しやすいんじゃないかな」と、かくも見事なほど的確なアドバイスをくださりました。

そのアドバイスのあとでポールさんに再度「おっす、おらジュンペー!」と名乗ると、「OK、ジュンペー、しっかり覚えたよ!」とすぐに覚えてもらうことができました。

なるほどねー、とひとりで感心しつつ、新しいニックネームに「ジャン=ピエール」を正式採用しようかしらなどと考えながら工房をあとにし、これまた大きな空間に温かみのある木材構造がステキなダイニングに案内していただきます。

すごく手間を掛けて入れてくださったコーヒーをすすりながら、ポールさんが製作されたフルートをいくつも並べていただいて、試奏大会がはじまります。

おいしいコーヒーに、ステキな音楽、そして超クオリティの高い楽器。

ケルトの笛っ子として、これ以上に至福の時はないですよね。

ポールさんの作るフルートはとても評価が高く、世界的な名プレイヤーのケビン・クロフォードさんらに愛用されています。

が、当のポールさんは、「作りたい時に作ります精神」を大切にされていて、作りたくない時は本当にフルート製作には手をつけないのだとか。

その期間、最長で6年。

もはや転職レベルの長き沈黙だったようですが、最近は少し作る気が湧いて来て、今朝には「ぼくはフルート製作に戻って来たよ!」と宣言し、キアランさんはじめ、ぼくら笛吹きを大喜びさせてくれました。

店長は、絶対にポールさんのブラックウッドかモペイン製のキーレス・フルートを予約しようと、心に決めましたとさ。