はじめに
本連載と執筆者について
みなさま初めまして!
私、吉山雄貴と申します。本名です。
アイリッシュを通してかかわった方々の間では、「よしやマン」というニックネームで呼ばれております。
このたび、「ケルトの笛屋さん」のコラムに拙文を掲載していただけること、とても光栄に思います。
この連載の趣旨は、題名にもあるように、「ケルト圏や北欧の伝統音楽を、オーケストラ・アレンジで聴いちゃおう!」、というもの。
百聞は一見に如かず、もとい一聴に如かず。まずはこの動画をご覧ください。
これはIevan Polkkaという、北欧フィンランドの有名なポルカ。
ボーカロイドがネギをふり回すアニメーションとともにYou Tubeに投稿され、それがきっかけで世界中に広まった、といういわくつきの1曲です。
アイリッシュ界隈でも、Finnish Polka(フィンランドのポルカ)の名前で、しばしば演奏されています。
最近だと、「いい部屋ネット」のテレビCMで、桜井日奈子さんが替え歌を歌ったのが、記憶に新しいかな?
いやそんなことより、特に前からこの曲をご存知だったかたに、お訊きします。
このアレンジ、いかがでした?
重厚!壮大!大迫力!!そんな言葉が並ぶのではないでしょうか。
実はこの音源、動画のタイトルにもあるように、オーケストラアレンジなんですよ。
演奏そのものは生の楽器ではなく、ソフトウェアで打ちこんだもののようですけど。
オーケストラはご存知ですよね。
コントラバスやらトロンボーンやらティンパニやら、いろんな楽器をもった人が数十人ズラッと並ぶアレです。
主に活躍するジャンルは、クラシック音楽です。
しかし、映画音楽もオーケストラの出番。
「スターウォーズ」も「ロード・オブ・ザ・リング」も「パイレーツ・オブ・カリビアン」も、すべてオーケストラが演奏しています。
私、伝統音楽ももちろん大好きですけど、同じくらいオーケストラが好きなんです。
何十人もの人間が奏でることで生じる音の厚み。
金管楽器の咆哮。腹の底にひびく重低音……。
こればかりはさすがに、伝統音楽に見られる2人から4人編成のバンドでは、到底かないません。
そもそも伝統音楽が追求するのソコじゃないしね。
でね、探してみると意外なくらい、伝承曲をオーケストラで演奏するためにアレンジした作品って、みつかるものなんですよ。
より正確には、オーケストラで演奏するために書かれた楽曲で、伝承曲を引用したもの。
この連載では、そういった作品を集中的にとり上げて、ご紹介します。
アレンジ次第で、映画音楽に引けをとらない迫力をも獲得しうる、伝統音楽のポテンシャル。
伝統音楽を聴いてたのしむ方法の多彩さ。
そういったものを感じとっていただければな、と思います。
ピックアップする楽曲は、そのほとんどがクラシック音楽です。
しかし、専門用語はほとんど使いません。
ですから、その点はどうかご安心ください。
というか、私自身が「うん?ポコ・アレグレット、……え?グラツィオーソ?なにそれイタリア料理の名前ですの?」(ちがいます)て感じの人です。
そんな私の耳にも心地のいい作品を、私でも理解できるコトバで、語りたいのです。
最後に、私よしやマンについて、少しおはなしします。
私、小学生のころから、ギリシア神話など神話が好きでした。
どれくらい好きかというと、北欧神話に登場するルーン魔術や、ドルイドが使用したといわれるオガム文字を実践するほど(アブナイ奴)。
中学生のとき、占星術を題材にしたホルストの「惑星」を聴き、それがきっかけでクラシック、というか音楽そのものにハマりました。
その後、主にイギリスや北欧出身の作曲家の作品ばかり聴いていましたが、あるとき、ホルストの「サマセット狂詩曲」という楽曲に出会って、民族音楽というジャンルに目覚めます。
何かとホルストに人生を方向づけられていますね私。
これが「サマセット狂詩曲」です。
イングランドの民謡をいくつか引用したオーケストラ曲で、郷愁をそそるメロディがたまりません。
これを聴いて以来、私は似たような旋律を探し求めて、「○○狂詩曲」とか「××民謡組曲」と銘打った楽曲を、手当たり次第に鑑賞しました。
本連載でとり上げる作品の大部分は、そのとき出会ったものです。
なぜ、クラシックというジャンルの中で民族音楽を探すなどと、大変まわりくどいことをしたのか。
理由は簡単。
「民族音楽のCDはワールドミュージックの棚にあるよっ!」、というごく基本的な事項を、当時の私は知らなかったからです。
ここ笑うところです。
ということで次回から、迫力のオーケストラ・サウンドで伝統音楽をたのしめる作品を、ご紹介してまいります。
第1弾は、ルロイ・アンダーソンの「アイルランド組曲」。