出典 https://blog.mcneelamusic.com/
アイルランドの楽器メーカーMcNeelaが公開しているブログの中から、クレア州リシケイシー出身のコンサーティーナ奏者「ジャック・タルティ」による、コンサーティーナを学ぶ際のポイントについて解説された記事を許可を得て翻訳しました。
原文:My 5 Top Tips for Learning the Irish Concertina – by Jack Talty
ジャック・タルティによる、コンサーティーナを学ぶコツ
楽器を調達する
コンサーティーナを学ぶ上で特に難しいのは、手頃な価格で演奏しやすい楽器を見つけることです。私は幸運にも、数年後に自分のコンサーティーナを購入するまでは、叔父のノエル・ヒル Noel Hillから良質のLachenalを借りることができました。
最近の初心者向けコンサーティーナの問題点
最近の初心者向けコンサーティーナの問題点は、鍵盤の動きが遅く、蛇腹が弱いために演奏が非常に難しく、それによりコンサーティーナを必要以上に身体的負担の大きい楽器であると感じている生徒にとって、練習の障壁となりかねないということです。かといって、軽いアクションと優れた演奏性を備えた高品質のコンサーティーナは、始めたばかりの生徒にとっては高すぎるでしょう。
演奏性 VS 音色
私のアドバイスは、最初は音色を犠牲にしてでも、比較的演奏しやすいコンサーティーナを探すことです。最初に軽くて練習の妨げにならない程度の楽器でコンサーティーナの演奏が楽しいと感じられれば、良い音色のコンサーティーナに投資することはいつだってできます。
出典 https://blog.mcneelamusic.com/
McNeela製初級コンサーティーナ
McNeelaミュージックとのコラボレーション(詳細は近日公開予定!)を通じて、私は同社のコンサーティーナを演奏する機会を多く持ち、その魅力に心から感動しています。
The Wren(訳者注:ケルトの笛屋さんのFurzeと同程度)は手頃な価格で演奏しやすい入門用楽器ですが、同社のプレミアム入門用コンサーティーナであるThe Swan(訳者注:ケルトの笛屋さんのShamrockと同程度)は、市場で最も価値のある入門用/上達用コンサーティーナだと感じています。初級コンサーティーナと上級コンサーティーナの間にある非常に重要なギャップを解決しています。
コンサーティーナ学習者にとって、初級コンサーティーナからのアップグレードは、価格の大幅な違いを考慮すると、常に困難な課題でしたが、The Swanは信頼でき、品質が良く、さらに高価な中級クラスの楽器にくらべて価格が良いという特徴があります。
McNeela製中級コンサーティーナ
ジャック・タルティは、 McNeela Phoenix Concertinaを紹介しています。
先生を探す
コンサーティーナの先生を探すのは、現代ではそれほど難しいことではありません。なぜなら、多くの優れたコンサーティーナ奏者がいて、多くの指導経験があるからです。この場合も、よく調べて、自分が本当に尊敬するコンサーティナ奏者にアプローチするようにしましょう。
私は幸運にも、叔父のノエル・ヒルが先生で、教室の外でも、より正式で定期的なグループレッスンと同じくらい、コンサーティーナやアイルランドの伝統音楽について学びました。
私自身のコンサーティーナ学習者としての経験から、生徒の皆さんには、テクニック、レパートリー、スタイルなど、通常の基礎的な部分について指導やサポートをしてくれる先生を探すことをお勧めします。
アイルランドの文化に触れる
また、アイルランドの伝統音楽の文化や社会的な側面を知ることができる先生や、歴代の伝統音楽家の音楽に触れることができる先生と一緒にレッスンを受けることを強くお勧めします。
出典 https://blog.mcneelamusic.com/
音楽を聴く
コンサーティーナを習い始めると、機会あるごとに習いたての楽器を演奏したくなるのは当然で、それは賞賛されるべきことです。しかし、どのようなジャンルであれ、音楽性を高めるには、他の人の創造性や才能からインスピレーションを得ることが大切です。
ですから、コンサーティーナを学ぶ皆さんには、可能な限り「聴く」ことを意識していただきたいと思います。
演奏の仕方を改善する
「演奏したいのと同じくらい、他人の演奏も聴きたい」という欲求は、若いコンサーティーナ学習者であった私にとって自然な感情でした。しかし人は皆違うので、誰かの演奏を聴くのは、最初は少し作業的に感じるかもしれません。そこで、なぜコンサーティーナやアイルランドの伝統音楽に興味を持ったのかを思い出し、できるだけ多く聴くことが、自分の演奏に大きな影響を与えることを理解するように心がけてください。私の知るベテランの伝統音楽家の多くは、アイルランドの伝統音楽を楽しむため、あるいは演奏に欠かせない要素として、「聴く」ことを挙げています。
グループで演奏することの重要性
例えば、デュエットやトリオ、あるいは小さなグループで、周りのミュージシャンの演奏をよく聴きながら演奏することは、とても満足のいく体験になるはずです。メロディーの微妙な変化に対して、全員が暗黙の了解のような会話をしながら反応するのは、長年にわたり積極的に音楽を聴かなければ不可能なことです。
出典 https://blog.mcneelamusic.com/
整理整頓する
私には経験豊富で熟練した先生がいたからこそ、いつもコンサーティーナに納得ができたと考えています。一方でコンサーティーナは直感に反した、取り組むには難しい複雑な楽器です。そのため、私はいつも、学習体験をできるだけシンプルにするよう心がけています。
悪い習慣に気をつける
コンサーティーナ学習者は現代手に入れることができる様々な教育方法や演奏哲学に影響を受けているからか、頭の中に多くの雑念があることに驚かされることがあります。例えば、生徒がコンサーティーナの特定の蛇腹の押し引きや特定のボタンで音を出していることの理由を問うと、その方がフレージングやリズムが良くなると誰かに言われたからだと言います。でも、私はもっと単純に、クロスフィンガー(同じ指で、ある音から別の列の隣の音に飛ぶこと)をしないようにすれば、大丈夫だと思います。もちろん教えるには、それ以上のことが必要です!
「ファースト・フィンガー・ファースト」の原則
私自身の指導では、生徒には「一番目の指を一番に」の原則で取り組むようアドバイスしていますが、必要なときや正当な理由があるときは、それをさらに発展させるようにしています。
- クロスフィンガーやスキッピングを避ける
- 特定の装飾音や和音を演奏する
- 空気が足りなくなったら、音の方向(蛇腹の押し引き)を変える
シンプルにする
私は、自分自身は何をしたいかに応じて蛇腹の「イン」と「アウト」の運指を自由に選べるようにしており、クロスフィンガーやスキップを避けられるのであれば「不正解な運指」は存在しないと考えていることを生徒には伝え、できるだけシンプルに考えさせるように心がけています。生徒の心配事は尊重しながらも、私たちコンサーティーナ弾きが感じているごちゃごちゃしたことが多すぎるので、それらをむしろ生徒の成長に最も大きな影響を与えるアドバイスに置き換えることが望ましいと思っています。
楽しむ
コンサーティーナの生徒として着実に上達することは、時に不満の溜まる経験でもあります。そこで私は、なぜ最初にアイルランドの伝統音楽をコンサーティーナで学ぼうと思ったのかを思い出してもらいたいと思っています。それは、自分で演奏するのも楽しく、どんな年齢のどんな人に対しても社会の道を拓くという伝統音楽の豊かで複雑な芸術のありかたです。アイルランド音楽について、非凡で興味のそそられることは、多くの物事や多くの人なのです。
セッション&フェスティバル
コンサートでは優れた演奏家の演奏を聴くことができますが、多くの質の高い演奏や交流は、コンサートのステージから遠く離れた、様々な伝統音楽フェスティバルの小さなバックルームで行われます。
コンサーティナを学ぶ皆さんには、可能な限りこのような機会を探すことをお勧めします。
先輩ミュージシャンとつながる
私自身、コンサーティーナを習っていた頃の経験を振り返ってみると、アイルランドの伝統音楽を学ぶ上で特に良かったのは、多くの知識を教えてくれる先輩ミュージシャンとのつながりでした。
私にとってアイルランドの伝統音楽を演奏することは、社会に存在する年齢の壁を取り払う重要な方法であり、その過程で多くの素晴らしい曲を学ぶことができました。
ですから、コンサーティーナを習う方へのアドバイスとしては、アイルランド伝統音楽に関する知識や、アイルランド伝統音楽を演奏する際のエピソードや思い出を楽しく伝えてくれる、地域の先輩ミュージシャンの知恵を求めることです。
出典 https://blog.mcneelamusic.com/
ゲストブロガーについて ジャック・タルティ
ジャック・タルティ…クレア州リッシーカシーLissycasey, Co. Clare出身のコンサーティーナ奏者です。10歳の時に叔父のノエル・ヒルに教わってコンサーティナを始めました。現在では、アイルランド音楽界を代表するコンサーティーナ奏者の一人です。ロンドン音楽大学卒業、コーク大学でBAとBMus、アイリッシュ・ワールド・アカデミー・オブ・ミュージック&ダンス(UL)でPhDを取得しました。また、Seán Ó Riada Memorial Awardをはじめとする数々の賞を受賞しています。
教育者としての経験も豊富で、最近、コーク大学のアイルランド伝統音楽講師に任命されています。演奏家としては、「コンサーティーナのルネサンス。崇高なものを聴く耳を持つ」と賞賛されています。2011年、アイルランド音楽レーベルRaelach Recordsを設立し、コンサーティーナ奏者のコーマック・ベグリーとともにアルバム『Na Fir Bolg』をリリースし、高い評価を得ました。また同年、受賞歴のあるセプテット、Ensemble Ériuを結成し、2015年に名誉あるGradam Comharcheol TG4を受賞しています。
2016年、ジャックはソロコンサーティナのデビューアルバム『In Flow』をリリースし「荘厳」「華やかなメロディと耳を引く雰囲気に満ちている」と評価されました。