ライター:ネットショップ 店長:上岡
みなさんこんにちは、ネットショップ店長の淳平です。
家にいる機会が多すぎるこの夏、笛屋さんのスタッフ全員で、専門外の楽器にチャレンジしよう企画がはじまりました。
話し合いの結果、ネットショップ店長は「バグパイプ」担当になったのですが、ここでちょっとした問題が……。
それは同居している母に聴覚過敏があって、バグパイプの練習を家でするとすごく嫌がられるということ。
そこで、楽器を変えてバウロンにしようかなとも思っているのですが、聴覚過敏の母の横の部屋で太鼓を叩くのももしかしたら、ストレスを与えるかもしれない……?(ちなみに店長も聴覚過敏があるけど、母とはちょっと種類が違う)
ということで、バグパイプのことを調べつつ、それと同時にそんな母がいる家でも練習できるいい感じの楽器を探したいという、他のスタッフにはない裏テーマも意識しながら、店長のささやかな自由研究、スタートです。
まずはバグパイプの歴史から
つまり、家で練習できない状態でコラムをスタートしたので、まずは知識面から蓄えていきましょう。
バグパイプの歴史を調べてみると、一説には紀元前3000年(日本の縄文時代)にまでさかのぼると言われています。
そんなことからバグパイプは、最も古くから存在する楽器のひとつとされてるわけですね。
リードで音を鳴らすという手法は、実はさらに古くからあるもので、バグパイプの形ができる数千年前には発見され、人々によって習得されてきたとされています。(人類は笛民!?)
昔の演奏法は運指ではなく倍音を使ってメロディを演奏するやり方で、1つの指孔から倍音で3つの音を出すという方法が受け継がれてきました。
古代ギリシャの哲学者で音楽大好きだったアリストクセノスさんのいうところには、彼の時代のパイプ(今で言うチャンター(メロディを演奏するパーツ)の部分)は2オクターブ以上の音域を持っていたと記されています。
ただ、そんな数千年にわたって受け継がれてきた倍音奏法でしたが、これにはちょっとした問題があったそうです。
倍音ばっかり吹いてた弊害?
その前にひとつ、昔の人が一生懸命音楽を学ぶ理由についてですが、これは今みたいに、放課後カラオケいっちゃう?的なものではなかったんです。
それはおそらく宗教的な儀式で用いられるもので、可能な限り持続的に音を鳴らし続けることを求められていました。
なので、この頃には吹きながら鼻から息を吸う、いわゆる「循環呼吸」も取り入れられていたんですね。
そんなことをしないといけないぐらいの、どちらかというとハードな奏法を求められた結果、笛吹きは顔の変形に悩まされました。
ついには、その変形をやわらげるためのバンド(革製のヘアバンドを鼻の下に装着した感じ)までできるぐらいの問題になっていたんですね。
ちなみに、ここまでの地理的な流れは、起源が今のイラクに位置するシュメールで、そこからエジプト、フリジア、リディア、フェニキアへと広がり、ギリシャ、そしてそれらの地域の一部を領土にしていたローマ帝国へと伝わっていったそうです。(半分知らない名前だ)
奏者の口はバグパイプのバッグ
さて、実はローマに伝わった時にはすでに「バグパイプ」つまり「バッグのあるパイプ」と言われていましたが、この時代はまだ口をバッグと見立ててそう呼んでいたのだろうと考えられています。
つまり笛吹きの口(循環呼吸必須)は、バッグのように空気をためて永遠に音を鳴らせるもの、という感じだったんですかね。
ただ、先ほども書いたみたいに、健康に害が出るぐらいのガチ度で練習させられ、それをマスターした頃には顔に問題が生じてしまうということで、人気が下がり(そりゃ下がるわ)その解決策として、バッグに空気をためて、笛にそれを送り込み、リードで音を鳴らす方法になったとされています。
笛文化の大きな転換
バッグから空気を送りこむ方式が長らく取り入れられなかったのは、最初に書いたように「倍音」をメインとする奏法で何千年と進化してきた笛文化から、「倍音」を取り除くことになるからだったようです。
でも、まぁ体に悪くてパイパーもいなくなっちゃ意味がないと言うことで、歴史的な決断を昔の時代のみなさんがしたというわけですね。(ちなみに先ほどのパイパーの負担軽減器具も同じ時代に生まれたようなので、バッグ派と倍音にこだわる派に分かれていたみたいですね)
(つづく)