【岩浅翔さん編】日本のフルート/ホイッスル奏者へのインタビュー

2020年6月27日に開催された日本のフルート/ホイッスル奏者のオンライン・ミーティングでは、参加者に事前に質問事項を送り、インタビューを行いました。

今回は”Cocopeliena”などで活躍されている岩浅翔さんのインタビューをご紹介します!

フルートについて

――現在吹いているフルートについて教えてください(職人、材質、モデル、キーの数、購入年など)

岩浅:Hammy Hamilton D管 ( 6キー付き)です。たぶん2005年に手元に届きました。

――その素材を選んだ理由は何でしょうか、また他の素材と比べたときの特色はなんだと感じますか?

岩浅:当時はケルトの笛屋さんのようなお店も無く現在に比べると情報量も少ない状況で、ウェブサイトを持ち実績もあるメーカーをと考えて購入しました。

――足部管の低音キーは使用しますか?またその理由や使用する状況について教えてください

岩浅:6キー以上は考えていません。

――第3オクターブを演奏しますか?またそれはどのような時ですか?

岩浅:たまにアレンジとしてメロディをオクターブ上げて吹いた時に使う事があります。また、曲によって3オクターブ目が必要な場合があります。

――あなたにとってフルートの「良い音色」とはどのような音色ですか?

岩浅:抽象的ですが、よく震えている音というイメージです。

――D管以外のフルートは演奏しますか?またどのようなときに演奏しますか?

岩浅:スローテンポの曲を演奏する時にBb管を使う事があります。

――あなたにとって理想のフルートとは、どんな楽器ですか?

岩浅:正直に言うと良くわかりません。今の楽器に満足している所も不満に感じている所もあって、たとえ違う楽器を手に入れたとしても同じような思いになるような気もします。

――現在の楽器まで、どんな楽器を経てきましたか?

岩浅:
【ティン・ホイッスル】 Sweetone, Susato, Walton, Feadog, Kerry(Songbird), SZBE

【ロー・ホイッスル】 Susato, SZBE, Overton, MK whistle

【フルート】 Des Seery, Hamilton, Gilles Lehart, Galeon, Olwell(bansuri), Harsh Wardhan(bansuri)

――現在のフルートについて、気に入っている点・不満な点を教えてください

岩浅:Hamilton fluteについてですが沢山吹き込んだ分パワフルに鳴ってくれます。管の直径、指孔が大きく取扱いがやや難しいです。諦めましたが金属部分がすぐに黒ずんでしまいキラキラしているのを見ると羨ましいです。

――今気になっている楽器職人はいますか?

岩浅:もし今から新しいフルートを買うという意味ならPatricl Olwell を選択します。

ホイッスルについて

――現在吹いているホイッスルについて教えてください

岩浅:SZBE、ローはMKです。

――その素材を選んだ理由は何でしょうか、また他の素材と比べたときの特色は何だと感じますか?

岩浅:SZBEはまず特筆すべきは値段が1万円前後というリーズナブルな価格ながら全体的に品質が良いと思っています。それに加え面識のある日本人が作っているという事を応援する意味があります。音色に関してはやや尖った感じのする音で牧歌的な曲調には不向きだと思います。また、僕は結構吹き込む方ですがあまり裏返る事なく吹き込んだ分大きく鳴ってくれます。

――デザイン的な好みはありますか?

岩浅:持っていませんがブラス製は見た目が好きです。

――第3オクターブを演奏しますか?それはどのようなときですか?

岩浅:なるべく使いません。フィドラーが作った曲などで3オクターブを使うメロディの時にうっかりつかってしまう場合があります。なるべくなら代理の2オクターブの音でアレンジします。

――あなたにとってホイッスルの「いい音色」とはどのような音色ですか?

岩浅:なんとも定義しにくいです。ただ同じ管楽器のリコーダーとどっちが良い音色だ? というディスカッションがあったとするとホイッスルの良さはハスキーな音色やピッチの不完全さによるブルース性だとは思います。

――D管以外のホイッスルは演奏しますか?また、どのようなときに演奏しますか?

岩浅:Eb管、F管をたまに。セッションで使う事はないですね。

――あなたにとって理想のホイッスルとは、どんな楽器ですか?

岩浅:今のSZBEで結構満足しています。とはいえ特色の違うホイッスルが必要と思う時もあります。それぞれ個性があって、使い分けなのかなあと思います。

――現在のホイッスルについて、気に入っている点・不満な点を教えてください

岩浅:(SZBEについて)価格の安さ、手に入りやすさに関しては最高です。メーカーロゴのラベルがシールなのですが浮いてくる事があります。剥がしてやろうかと思う事もありますが、応援する日本製を広める為にも接着材を使って修復しています。

――ロー・ホイッスルは演奏しますか?どのようなときに演奏しますか?

岩浅:自宅で演奏する事はありますが、セッションでは音量の問題、バンド活動では良い使いどころが見つからず結局あまり演奏する機会がありません。

――同じキーの複数のティン・ホイッスルを使い分けますか?使い分ける方は、その使い分けについてどのように考えていますか?

岩浅:実際に使い分ける機会はあまりありませんでしたが、ホイッスルだけで重奏をする場合などは音程が正確すぎない方がホイッスルらしい雰囲気がでる場合があると思うのでWaltonsなどを選択するかもしれません。

――フルートとホイッスルで同じ曲を吹くとき、演奏技術面において変えていることはありますか?

岩浅:フルートの場合はブレスの強弱によってリズムをとる事がありますが、ホイッスルではしません。その分ホイッスルではタンギングが多くなります。

音楽家として

――影響を受けた伝統音楽のフルート・ホイッスル奏者を挙げてください(5名まで)

岩浅:
hatao(テクニックや小技など、主に装飾において圧倒的でした)

Seamus Egan(どれだけ聞きこんでもコピーしきれないパーカッション的なメロディに惹かれました)

Brian Finnegan(タンギングを使ったトリッキーなリズムと、音量のダイナミクスに影響を受けました)

Conal O’Grada(説明しにくいですが、特にPolkaはズバ抜けてグルーヴを感じます)

【hatao】

【Seamus Egan】

【Brian Finnegan】

【Conal O’Grada】

――管楽器奏者以外の影響を受けた音楽家を挙げてください

岩浅:
Stefan Grossman(アメリカのブルース・ギターリスト)

Adrian Freedman(尺八奏者)

Flankie Gavin(アイリッシュ・フィドル奏者)

【Stefan Grossman】

【Adrian Freedman】

【Flankie Gavin】

――フルートやホイッスルを学ぶ人が聴くべきCDを教えてください

岩浅:
Matt Molloy – Music At Matt Molloy’s
Donncha O’Briain – Traditional Music on Tin Whistle
Conal O’grada – Cnoc Bui
Liam Kelly – Sweet Wood
Paul McGratton – The Frost Is All Over
Frankie Gavin – Up and Away

――自分が伝統音楽を始めたときの最初の困難は何でしたか?

岩浅:当時はインターネットもなく情報が無くて、周りに一緒に演奏できる人間がおらず、日本全国を探してもアイリッシュをやっている人なんていないだろうという風に思っていた。

――楽器演奏による手や身体の不調や故障に悩まされたことはありますか? あるとすれば、どんな症状でどのように克服しましたか/あるいは受け入れましたか?

岩浅:右手親指のバネ指に数回なっています。ステロイド注射をしてその都度痛みは解消しましたが、慣れない無理な練習を、根を詰めてやるとなってしまうようでした。今は再発する事はありません。

――初期の頃の練習方法や日課はありましたか?

岩浅:ひたすら耳コピ(完コピ)するようにしていました。

音源をスロー再生で聞いてどんな装飾を入れているか解析してそれを真似たりしていました。

――現在の決まった練習方法や日課があれば教えてください。

岩浅:ルーティンとしては特にはありませんが、演奏の時には脱力を意識しています。

――フルート/ホイッスル以外に取り組んでいる楽器はありますか?

岩浅:バンジョーと、最近気晴らし程度にコンサーティーナを弾いています。

――音楽家として最も大事にしていることや力を注いでいることは何ですか?

岩浅:やりたくない演奏はやらないように(やらなくてすむように)しています。

――今一番取り組んでいるプロジェクトや、これから手掛けたいことについて教えてください。

岩浅:新しいユニット、自身のソロなどでCD制作をしたいと思っています。

――どのような音楽家でありたい(または、~になりたい)と思いますか?

岩浅:現状維持しつつスキルの向上に努めていきたいです。

音楽講師として

――初めて教室に来る生徒にどんな楽器(ホイッスル、フルート)を薦めますか?

岩浅:ホイッスルはSZBE、フルートは入門用としてはGaleonを勧めます。

――初心者が練習において気をつけるべきことはなんですか?

岩浅:耳で聞いて覚える、楽譜を見ないことです。

――レッスンのカリキュラムやテキストがあれば教えてください。

岩浅:基本的な装飾などについては自分で作成したテキストを使っていますが、基本的にはそれぞれによって異なるので一概にはなんとも言えないです。

――レッスンで大切にしている価値観は何ですか?

岩浅:例えば自分が1か月でできた事は1か月以内でできるようになって欲しい。自分の経験などを伝えて自分が学んできた道のりよりも楽な道のりを伝えたいと思っています。

――生徒に期待することは何ですか?

岩浅:それぞれ色んなスタンスで来られるのであまり期待を押し付けないようにしようとは思っていますが、理想でいうとそのうち技術的に自分を追い越して出会った時にはこっちから挨拶しないといけない関係になるのが理想です。

――伝統音楽は完全に独学でも習得ができると思いますか?

岩浅:どこまでできるようになれば習得したといえるのか微妙ですが、インターネットの普及などもあるので独学でも十分学べると思います。

――今後、日本のケルト音楽・アイルランド音楽シーンに望むことがあれば教えてください

岩浅:まだまだ一般的には認知されていない音楽なので広く一般にも普及して一緒に演奏できる人が増え、さらにはアイリッシュユニットがオリコンチャートにランクインなどすれば最高です。


My Cup of Tea / Cocopeliena


Tune the Steps / Cocopeliena

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