Wrenコンサーティーナを壊れにくくする改造をしました

ライター:hatao

当店で販売しているアングロ・コンサーティーナWrenは、低価格帯でありながら演奏しやすく入門用の楽器として人気があります。

しかし価格を抑えるために上位機種よりも低いグレードのパーツを使っていたり、機構を合理化しているため、不具合が起きやすい傾向があります。

当店ではこの状況を踏まえ、ユーザーがWrenの性質についてよく理解し、不具合が出た際にご自身で修理をしながら演奏し続けられるように、2020年8月にマニュアルを公開しました。

このマニュアルはオンラインである利点を生かして、順次アップデートを繰り返していますので、ユーザーの方はぜひご一読ください。

https://celtnofue.com/media/files/wren_manual.pdf

さて今回は、不具合が起こらないように予防するための改造方法について自身の経験をまとめました。

この方法がベストかどうかは未だ確証がありませんので、ご自身で判断をし、ご自身のリスクにおいて改造を行うようにお願いいたします。

Wrenで報告される症状の多くは「音が出っぱなしになる」ことです。

この症状には多くの原因が考えられるのですが、Wrenにおいてはボタンがひっかかって戻らないことが原因となることが多いようです。

ボタンがボタン孔にひっかかると、アームが戻りきらないためパッドが空気孔を閉じられず、蛇腹を操作した際に意図せずに音が出てしまいます。

その理由には、Swanなど上位機種にはないWren特有のアクション部分の機構があります。

(1)ボタンの横ずれ防止にオーリングを装着する

Wrenではアームにボタンをゴムリングで挟んで留めているだけなので、ボタンを押下するとやがてボタンがアームを横滑りして、先端のほうにずれていってしまうのです。

するとボタン孔に対してボタンの角度が垂直ではなくなり、ボタンがボタン孔と摩擦を起こして、やがてはひっかかって止まってしまいます。

これを解消するためにはフタを開けてボタンの位置をボタン孔に対して垂直に戻す必要があるのですが、ボタンをアームに留めるゴムリングが次第にゆるくなり、すぐに横滑りするようになってしまいます。

かといって完全にボタンとアームとを接着して固定すると、ボタンを押下したときにボタンがボタン孔に対して垂直を維持することができずに、やはり引っかかってしまいます。

そこでアームにオーリングをはめて、横滑りを予防してみます。

オーリングはモノタロウで1個20円で購入できます。

これがアームの数だけ、つまり31個必要です。

Oリング ISO型 内径do 2.00Φmm、線径 1.8Φmm、外径 5.6Φmm(外部サイト)

フタを外してアームにオーリングをはめ込みます。

奥のアームにはピンセットを使ってください。

はめ込む際にボタン位置がずれないようにし、片側にすべてはめ込んだらフタを閉じて実際にボタンを何度も押して、ひっかかりが無いか(ボタンの横位置が正しいか)確認し、ひっかかりが認められたらボタン位置をずらして調整してください。

オーリングはアームにきつくはまるので動くことはないとは思いますが、私は念を入れて木工用ボンドでオーリングのすき間を閉じて接着しました。

木工用ボンドは必要に応じて簡単に剥がすことができます。

(2)ボタンの押しすぎ防止に、アームのキャッチャーを付ける

さらなる予防策は、ボタンを押しすぎないようにすることです。

ボタンを押しすぎるとボタンが横ずれする原因になり、またボタン孔にひっかかりやすくもなります。

ボタンを深く押せないようにするにはアーム下に障害物を付ければよいのです。

私は100円均一のセリアにある発泡スチロールのボード(厚み5mm)を購入して加工してキャッチャーを作りました。

木やプラスチックなどの硬い素材にしなかったのは、ボタンを押した時に指にかかる衝撃を減らすためです。

キャッチャーは、2種類の装着方法を考案しました。

上列の(派生音用の)ボタンにはアームがパッドボードに接するポイントに、スチロールを厚み7mmほどの四角形に加工してパッドボードに木工用ボンドで接着します。

ほかの2列(C列とG列)のアームには、このようにキャッチャーをパッドボードに貼りつける余地がないため、クラフトナイフを使ってコの字型にスチロールを加工し、ピンセットを使って、シャフトに押し込みます。

装着の際にはボタンの押下でキャッチャーが動かないように、木工用ボンドをスチロールに塗って、シャフトと固定するようにしました。

キャッチャーはボタンの押し加減がそれぞれのボタンによって異なることがないように、予め20個分を作っておき、アームに対する高さを揃えてください。

こうして2種類の方法によりエアボタン含む31本すべてのアームの下にキャッチャーを装着し、すべてボタンが深く押下できないようになりました。

ボタンを深く押せないと、演奏面においても指の運動が少なく済み、速く弾きやすくなったり装飾音が付けやすくなる効果があるようです。

(3)ゴムリングが破断する可能性も…

Wrenユーザーの方から、このような改造を施してしばらく使い続けていたところ、アームがゴムリングに負荷をかけるために、いくつかのゴムリングが破断したというご報告をいただきました。

ゴムリングは当店で安価で提供が可能ですので、ご自身で交換していただくことができます。このゴムリング破断を予防する方法についてはこれから検討をしてまいります。

今回は、当店でレンタルとして在庫していた中古品のコンサーティーナに上記の加工を施しました。

作業時間は2時間程度です。

改造はユーザーご自身で行うこともできますが、ご希望があれば加工賃6000円(資材費込・税込)と往復送料で代行いたしますので、以下フォームからご依頼ください。

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