【クレイグ・バクスター(Craig Baxter)】ケルトの音楽家 インタビュー


出典 https://modernbodhran.com/craig-baxter/

スコットランドのバウロン奏者メリッサ・ウェイトMarissa Waiteさんのブログにあるインタビューを、当店でおなじみの翻訳家・村上亮子さんの翻訳でお届けするシリーズ。

今回はノッスGnossというバンドにてスコットランドの音楽シーンで活躍するバウロン・プレーヤー、クレイグ・バクスターのインタビューをお楽しみください。

原文:https://modernbodhran.com/craig-baxter/

クレイグ・バクスター Craig Baxter

これは私の新しいシリーズで、優れたバウロン奏者数名にインタビュー形式の質問を送っています。

とてもワクワクしていますし、皆さんも楽しんでいただけることと思います。

今回は素晴らしいバウロン奏者クレイグ・バクスターです。

クレイグはグラスゴーを拠点に活躍している優れたミュージシャンで、最近はノッスGnossというバンドでスコットランドの音楽シーンで活躍しています。

クレイグがこのアンケートに応えてくれて嬉しいです。

参加してくれてありがとうございます!

彼の演奏は本当に素晴らしいもので、彼の音楽の見方、音楽への取り組みを聞けるのが楽しみです。

どうぞお楽しみください。

どうしてバウロンを始めたのですか。自己紹介をお願いします。

クレイグ:バウロンを始めたのは4年ほど前、16か17歳の頃でした。

僕は9歳の時からバグパイプ・バンドでスネア・ドラムを叩いていました。

ですから、十代の頃はずっと、バグパイプ・バンドでコンクールに出たり、コンサート、パレード、軍楽隊演奏などに参加したりしていました。

好きだったけれど(今も好きです)何か別のものをやってみたくなって、たくさんのフォークやトラッドの音楽を聞き始めて、バウロンに引かれ、いつかやってみたいと思うようになりました。

15歳の時にバウロンを買って、デイビッド・フォリーDavid Foleyのレッスンを受けましたが、学校のテストとバグパイプ・バンドで忙しくて続きませんでした。

その後1年程は真剣に取り組むことはできませんでしたが、今度はマーティン・オニールMartin O’Neillのレッスンを何回か受けて、本格的に演奏し始めて、練習もきちんとしました。

この頃、グラスゴーの王立芸術院の伝統音楽コースに受かり、このことが僕の背中を押して、進むべき道を開いてくれました。

スネア・ドラムやバグパイプ・バンドだけでなく、もっともっと伝統音楽に関われるようになりたかったのです。

RCS(スコットランド王立芸術院)に入って、大学のレッスンでバウロンに取り組む他に、できるだけ多くのセッションに参加しました。

また、TRIPというバンドでも演奏しました。寄宿舎でキッチンを共有していた仲間と始めたバンドです。

それでグラスゴーでの最初の年の終わるころにはかなり上達して、スネア・ドラムに代わってバウロンが僕の一番の楽器になりました。

何か月か後、RCSの新学期が始まる直前、僕はノッスに参加しました。

僕が入った時には、ノッスはもう何年か活動していました。

すでに自分たちの音を確立して、色々とやり方が出来上がっているバンドに加わることは、またとないことでした。

僕が参加してすぐにノッスはEP 盤のレコーディングをしました。

それで初めてレコーディングをするという体験もできました。僕にとって大きな成長の機会で、素晴らしい経験でした。

幸いなことに、その後2,3年両方のバンドで多くのギグやレコーディングをしました。

また、マドレーン・スチュワートMadeleine Stewart、フィンリー・マクドナルドFinlay Macdonaldプロジェクト・スモックProject Smok、 Brighde Chaimbeul 、ジェーミー・マーフィーJamie Murphy、アイオナ・ファイフIona Fyfeなどのバンドやアーティストと一緒に色々なことをする機会がありました。

また2018年のRCSのバンドÙrのメンバーになりました。

このバンドは毎年カナダのケルティック・カラーズ・フェスティバルに参加しています。

こんなにも多くの多彩なミュージシャンと一緒に演奏できることを楽しんでいます。

こんな「ニッチな」ジャンルにも、本当に様々なスタイルや演奏法があるのです。

一緒に演奏した全てのバンドやミュージシャンから色々学びました。

バウロンを演奏することで一番気に入っているのは、こういう点かもしれません。

最も影響を受けたのはどなたですか?

クレイグ:多くの演奏家から影響を受けましたが、いちばん大きな影響はマーティン・オニールMartin O’Neillです。

最初のレッスンの多くは彼から受けたものですし、今はRCSで僕の指導者です。

僕が知っていることはほとんど全て、彼から学びました。

基本やテクニックだけでなく、彼のグルーブへのアプローチ、そしてとりわけ音の精確さ、また彼の演奏がどれほど計算し尽くされ、研ぎ澄まされているか、ということから多くを学び、自分自身の演奏に生かそうと努めてきました。

もう1人、大きな影響を与えてくれたのは、間違いなくジョン・ジョー・ケリーJohn Joe Kellyです。

フルックFlookマイク・マコールドリックMike McGoldrickや、彼が演奏している他のアルバムやYouTubeは何でも、いつも繰り返し浴びるほど聞いています。

彼の演奏はコントロールがきいて安定しているだけでなく、そのエネルギー、力強さがたまらないのです。

ジム・ヒギンズJim Higginsもスタイルが好きで学ぶところが多くあります。

こちらに来てからは、グラスゴーのセッションや、RuraやImarなどのバンドでデイビッド・フォリーDavid Foleyやアダム・ブラウンAdam Brownもよく聞くし、色々と刺激を受けています。

ドラム・セットの人ですが、グレッグ・バリーGreg Barry、ジェームス・マッキントッシュJames Mackintosh、エリック・ロートンErik Laughtonのようなドラム、パーカッションの人も、自分のバウロンの演奏についての見方を変えてくれたと言えます。

それぞれが繊細で音楽性のある奏者で、その演奏を聞くのが好きです。

優れた演奏家は大勢いるので、まだまだいくらでも話せますが、とにかくみんなから、色々と影響を受けています。

常に気持ちを奮い立たせておくために、演奏家としてどんな事をしていますか。

クレイグ:できるだけ多く音楽を聞くようにしています。僕は本当にあふれるほどの伝統音楽を聞く、友達に言わせればオタクですが、バウロンでも他のパーカッションでも、ピアノやギターでも、様々なスタイルの伴奏を聞くことで、アイディアが湧いてきます。

また幸いグラスゴーのギグやセッションで色々なミュージシャンと一緒に演奏したり、聞いたりできるので、多くの人から刺激をいただいています。

演奏の中で乗り越えてきた一番大きな問題は何ですか。

クレイグ:バウロンを始めたばかりで、バグパイプ・バンドのドラムに馴染んでいたころ(ドラムのスコアはいつも変化して、曲に寄り添っています)、規則的に1つのグルーブを保つことに苦労し、自分がいつも何か変化をつけようとしていることに気付きました。

自分を押さえて、いつも1つグルーブを保つのが難しかったのです。

自分の演奏を聞いて、派手にやったり、コロコロと変える悪い癖がついていると気が付いて、いくつかひらめくものがあり、それ以来きちんとコントロールすることに気を付けています。

今使っているバウロン、スティック、ケースはどこのものですか。

クレイグ:使っているバウロンは Christian Hedwitschak のMONss で、主にMartinの Monster stick seriesを2本使っています。

マーティンが叩き出す音、とりわけその楽器の出せる低音域での音色の幅が好きで、一貫してギグやレコーディングでいい音を出していると思います。

バウロンをもう1つか2つ手に入れようと思っていますが、まだできていません。

あなたの演奏をユニークなものにしているのは何だと思いますか。

クレイグ:僕は曲のグルーブを聞き取るいい耳を持っていて、一緒に演奏している他の人の動きによく反応することができると思います。

僕の演奏は音楽性があって(希望的観測!)自分が伴奏している相手に、そっと寄り添うことができます。

そしていつも活力と意欲をもって演奏しようとしています。

これらが特に「ユニーク」なものかはわかりませんが、いつも演奏している時に心掛けていることです。

最後にバウロンを学んでいる人に何かアドバイスをお願いします。

クレイグ:時間をかけて、しっかりと基本を身につけ、できるだけチャンスを見つけて、セッションなどで他の人と一緒に演奏してください。

また曲のメロディーを知ることは、メロディー・プレイヤーの場合と同様に大切だと思います。

そうすれば、ある曲にはどんなグルーブが向いているかという感覚を得る助けになるし、特に今までに一緒にやったことのない人達と演奏する時に役に立ちます。

また、バウロンの色々なスタイルの演奏を聞いたり、他のドラムやパーカッションのもできるだけ聞いて、自分が演奏したいスタイルとか、バウロン奏者としての自分の音は何なのかを描いてください。

そして何よりも、演奏を楽しんで、頑張ってください!

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