ライター:hatao
こんにちは! ケルトの笛のhataoです。
先年11月にアイルランド音楽家協会の日本支部(CCÉ Japan)が主催したアイルランド音楽のコンペティションの結果が12月に発表されました。
前回の記事はこちら。
https://celtnofue.com/blog/archives/6662
今回私は以下の4部門で、コンペティションに初挑戦しました。
- フルート・ソロ (ダンス曲とスロー・エアー)
- ホイッスル・ソロ (ダンス曲とスロー・エアー)
- フルートのスロー・エアー
- ホイッスルのスロー・エアー
コンペティション参加を決心してから締め切りまで1週間くらいしかなかったので、あまり準備や練習もできない状況でしたが、とりあえず経験のために参加してみるか、という軽い気持ちで申し込みました。
今回はCCÉ Japanが企画したアイルランド音楽のお祭り「フェーレ」の一環として開催され、イベントの中には私が講師を務めるスロー・エアーについての講座もありました。
コンペティションというのは基本的にアマチュアが参加するものだと思っていますので、講師でありながらコンペティションに参加するのはおかしな話かもしれません。
ただ、私は自分のことをアイルランド音楽のプロ奏者だとは考えていないのです。
それは今回の話題とは別の話なので、改めて記事を書くかもしれません。
ずっと昔からコンペがあることは知りつつも、今回初めて挑戦したのはどういう風の吹き回しかといいますと……。
- 単純に、最近また自分の中でアイルランド音楽熱が再燃してきたから
- 自分が長年取り組んできたことへの客観的な評価を受けてみたいから
- 自分が長年の講師経験を通じて培ったアイルランド音楽についての考えを、自分の演奏を通じて評価してもらいたいから
- 今回は順位決めのない得点だけの評価だから(勝ち負けが嫌いなのです)
- アイルランド本戦出場を前提としていないから(本来なら決勝はアイルランドで行うのですが、仕事の都合で予定が合わず行けないこともありうるので)
- 何を基準に音楽を点数で評価するのか知りたかったから
アイルランド音楽を始めて数年の学生さんなら、コンペに出て運良く受賞できればそれは名誉なことですし、経歴にハクが付きますが、プロやセミプロ奏者にとってはリスクでしかありません。
なぜなら、生徒さんからお金をいただいて音楽を教えている私が、コンペに出場して箸にも棒にもかからなければとんだ恥さらしですし、まして落選した上に学生さんより点数が低かったら目も当てられません。
ですから、コッソリ参加して受賞できなければ公表しないというやりかたもあったのですが、正直なところ自分が落選したらそれはネタとして面白いかなと考え、SNSでも公言して参加しました。
選曲にあたっては、自分が普段コンサートで演奏している曲やレッスンで教えている曲、教本に掲載した曲を選びました。
演奏できるレパートリーは何百曲とありますが、コンペにはどんな曲がふさわしいのか基準がわからず、それならば日頃よく演奏している曲で勝負しようと考えたからです。
撮影は三脚にiPhoneを立てて行い、マイクはzoom(というブランドの)外付けマイクを利用しました。
すべての曲、たとえばホイッスルのコンペなら4曲をノーカットで吹ききらなければいけないため、全体を何度か撮り直して納得行くものを選びました。
こちらが「ホイッスル」の演奏動画です。
記録として残しておきますので、興味がありましたらご覧ください。
コンペ参加にあたり、アドバイスをもらおうと、北アイルランド在住のフルート奏者のBrendan Mulhollandさんにメッセンジャーで連絡を取りました。
本当はオンライン・レッスンを受講したかったのですが、コンペ提出日までにスケジュールが合わず、私の動画を見てもらって、アドバイスを伺いました。
とても親切丁寧にアドバイスをいただけました。
以下が翻訳です。
やあ、ハタオ。すごい演奏だぜ! 昨日今日の2回聞いたよ。
フルートについて…
エアーのLimerick Lamentationは僕の好きなJean-Michel Veillon (ブルターニュのフルーティスト)のヴァージョンだな!
もうひとつのエアーはMatt Molloy (バンドChieftainsのフルーティスト)のヴァージョンで、すごく上手に演奏しているけれど、彼のヴァージョンは原曲から離れすぎたアレンジだからフラーのコンペには合わないかも。
ジグの選曲は良いし、よく演奏できているけど、Bメロではグロッタル・ストップをもっと使ったほうがクリアになるな。明日、ビデオを撮って送るから。
リールについては、Sally Gardenはいい曲なんだけど、ちょっと初心者チューン過ぎるから、僕だったら違う曲を選ぶな。もっと難しい曲を選んだほうが良いよ。ホイッスルで吹いてるDrunken Landladyがいいと思う。あとBroken Pledgeはどうだろう? 僕の最新アルバムに入っている。リールのテンポは110/112 BPMを基準にしてみて。
ホイッスルについて…
1曲目のエアー(Bruach na carraige baine)はフルートでやってたみたいに吹いてみて。2曲目(Coolin)は変奏がちょっと忙しすぎるな。JM Veillonの影響が聞き取れるけど、ホイッスルではあんまり上手くいっていないみたいだ。でもフルートでやる分には完璧だよ。
僕はすげーJM Veillonのファンなんだよ! (I am massive JMVELLION FAN !!!!!)!
ジグとリールは完璧。ホーンパイプはすげーよ。
僕はホイッスルプレーヤーではないけれど、君の演奏はすごいね。フルートに戻って、君の演奏はスキだし、エアーでの音色はすごい。良い感じだ。アイリッシュ・フルート奏者がちょっと違ったふうに聞こえる小さなアクセントがあるんだけど、1、2回レッスンを受けたら、僕の言っていることが分かると思う。
僕自身はコンペを受けたことはないけど。僕のスタイルはコンペにはちょっと冒険しすぎだと思うからね……。
君は本当に的を射た演奏がよくできているし、手伝えて嬉しいよ。明日ビデオを送ります。あと、友達のホイッスル奏者のConor Lamb (バンドRealtaのメンバー)にも見せて感想を聞いてみる。
またね。ブレンダンより。
そして、翌日、何個もの演奏解説ビデオが送られてきたのでした。
ブレンダン、本当に親切で素晴らしい人です…。
彼ほどのプレーヤーでもコンペを受けたことがないということを聞き、ますます、プロ奏者またはプロを目指す者にとってコンペってどういう意味があるんだろうと考えざるをえませんでした。
コンペを受けるには、アイルランド人の信頼できる演奏者にアドバイスを求めるのはとても良い方法だと思いました。
さて、次回はその結果発表と講評についてお話します!
どうぞお楽しみに!