バンジョーについて Part4

バンジョー奏者の大倉さんに、演奏方法や装飾音、バンジョーの奏者と演奏スタイルについて解説していただきました。

練習について

チューニングと運指

テナーバンジョーは通常フィドルの5度下のCGDA(4弦-1弦)にチューニングしますがアイリッシュではフィドルの1オクターヴ下のGDAEにするのが標準です。

バンジョーは弦を張っていくとヘッドが沈んでチューニングがやや下がります。

何度か繰り返すと下がり幅が小さくなってチューニングが合いますが、慣れてくると下がり幅が分かってきます。

お馴染みのD調とG調の音をGDAEチューニングの指板の上に示すと図15のようになります。

赤字(3弦開放)がD管の笛の再低音に当たります。

図では7フレット目までしかありませんが大抵はこのポジションだけで演奏できます。


▲図15. 指板上の音の配置(奏者から見た目)

ピッキング

ピックの持ち方や選び方、ピッキングの基本はギターと変わりませんのでギター専門店の記事等を参考にしてみて下さい。

ここではバンジョー特有の話をします。

弦を弾く位置は大体ヘッドの真ん中あたりを基本とし、好みの響きが出る位置を探します。

ピッキングの際に手が完全に宙に浮いてしまうと安定し難いのでヘッドに小指や薬指を軽く乗せたり、ブリッジからテイルピースの間に手のひらを触れさせたりします。

アイリッシュの奏法ではピッキングが忙しいので後者の方が良いでしょう。

ブリッジやヘッドに力を加えてしまうと響きをミュートしてしまいますので気を付けて下さい。

まずは各リズムの基本パターンを安定して弾けるように練習しましょう。

バンジョーは軽く弾いても音量が出ます。強くピッキングして強拍を作る意識で弾いてしまうと思ったようなニュアンスが出ないばかりか、力みに繋がりリズムに乗り遅れる原因にもなります。

リールでは自然と各拍の頭がダウンピッキングになりますがジグの場合は連続してダウンで弾くタイミングがあるのでなかなか大変です。

しかしパターンを崩すと装飾を入れていく上で不都合が出る事が多いのです。


▲譜1. ピッキングの基本パターン

バンジョーでの装飾

バンジョーは音が伸びない楽器なので代わりに譜2のように音を区切る変奏が多用されます。

音を伸ばすのをアクセントに考えても良い程です。

これは他の楽器でよくカットやロングロールを入れるタイミングとも似ていますのでそのようなイメージで弾くと良いでしょう。


▲譜2. 音を区切る変奏の例

バンジョーといえばなんといってもトリプレットです。

他の楽器でトリプレットを入れる所に加えショートロールもトリプレットに置き換えられますが、タップやカットを入れる場所もバンジョーではトリプレットになります。

トリプレットにはロールと同じくイーブン気味な時と最後の音を長く取る時がありますが、特にジグの場合はトリプレットと言っても譜面に書き下した様に明らかに三連符ではありません。


▲譜3. リール(The Wise Maid)での例


▲譜4. ジグ(Banish Misfortune)での例

トリプレットの始動はダウンピッキングでないと困難なのですが、ここでピッキングの基本パターンを見直してみると装飾を入れたくなる場所がほとんどダウンピッキングの位置である事が分かります。

なんでもトリプレットで表現するバンジョーの場合どうやって変化を付けるかが腕の見せ所ですが、あまりにピッキングパターンを崩しているとトリプレットを入れたい箇所でアップピッキングという事態が起こりがちです。

適宜パターンを崩した場合でもリセットしましょう。

バンジョーの奏者と演奏スタイル

バンジョーのスタイルは概ねモダンなスタイルかそれ以前からの古いスタイルかで捉えられます。

古いスタイルは他の楽器のスタイルをバンジョーに置き換えた様な形です。

Gerry O’Connor

アイリッシュでバンジョーと言えばまず名前が上がる、名実共に現在のトッププレイヤーでしょう。

CGDAのチューニングで弾くプレイヤーでもあります。

アルペジオやドローン的な音を挟む変奏や自在なタイミングでのトリプレットによるドライブ感はモダンなスタイルのお手本です。

楽器はライブでは故Dave Boyle作、レコーディングではClifford Essex Paragon等を使用している様です。

John Carty

いわゆる「古いスタイル」ですが要所要所でダブルストップやコードを重ねて緩急を付けるスタイルです。

動画で弾いている楽器はOME社製で12インチリム、ロールドブラストーンリングのモデルです。

Angelina Carberry

トリッキーな所の無いストレートな装飾の入れ方は他の楽器でアイリッシュの経験がある人にも非常に参考になると思います。

セッション指向であれば是非ともお手本にしたいスタイルです。

ショートスケールの楽器(Oakwood社製)を使用しているプレイヤーです。

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