ブズーキについて Part4

T. Yoshikawaさんによるブズーキ解説シリーズPart4では、ブズーキのチューニングや練習方法、メンテナンスについて解説していただきました。

チューニング

4コースのケルティックスタイルのブズーキの場合、低音側からGDADにチューニングすることが最も一般的です。

マンドリンやバイオリンの運指に慣れている人や、メロディー弾きが中心の人はGDAEのチューニングを用いることもあります。

弦はユニゾン・チューニングが一般的ですが、低音弦にオクターブ上の弦を用いるオクターブ・チューニングを用いる人もいます。

オクターブ・チューニングの楽器からユニゾン・チューニングに切り替える場合やその逆の場合、ナットやサドルの加工が必要になりますので、購入前に確認しましょう。

5コースのシターンでは、DGDADの他、ノルディックスタイルで一般的なDGDGDも用いられます。

特に「こうチューニングしなければならない」という決まりはありませんので、好みのチューニングを選択して、いろいろと試してみると良いでしょう。

ただし、チューニングを変えると、弦のテンションも変わりますので、違和感があれば、適切なゲージのものに変えてみましょう。

練習のしかた

OAIM (Online Academy of Irish Music) のオンラインコースでは、レッスン動画が比較的充実しているので、初心者にはオススメです。

楽器の維持管理

湿度と温度の管理

ブズーキなどの木製楽器の大敵は湿度と温度の変化です。

木材は湿度が高いと水分を吸い込んで膨らみ、逆に低いと乾燥してひび割れなどの症状を引き起こします。

できるだけ、40%から60%の湿度を維持できる場所で保管しましょう。

シリカゲルなどを用いた市販の乾燥剤を楽器ケースの中に入れても構いませんが、日本の夏の高温多湿な環境下では、除湿能力はとても追いつきませんので、エアコンや除湿器を効果的に利用しましょう。

また、ケースに保管する際は、定期的に取り出して演奏すると、ボディ内部の空気が滞留せず入れ替わりやすくなります。

また、夏の猛暑の間は特に、温度管理にも注意しましょう。

決して車の中や直射日光が当たる場所に楽器を放置しないでください。

高級な楽器では特に、膠などの動物性接着剤が用いられていることが多く、温度が高くなると軟化し、ブレーシングが剥がれるなどのトラブルの原因になります。

冬には逆に、暖房で空気が乾燥します。

暖房器具の近くで楽器を保管しないようにしましょう。

電車で移動する際などは、足元の暖房の送風孔の前に楽器を置いてしまうと、楽器を急激に乾燥させてしまうことになりますので、要注意です。

屋内で湿度が40%を切る場合は、加湿器を効果的に利用しましょう。

最近は、スマートフォンなどで湿度変化をモニタリングできるIoT対応の湿度計も販売されているので、本格的に湿度を管理したい人にはとても便利です。

塗装面のケア

ブズーキの塗装には、ポリウレタン、ニトロセルロースラッカー、アクリルラッカー、セラックなどがあります。

ポリウレタン塗装は吹き付け回数が少なく済むため、多くの工場生産品に用いられていますが、塗装環境の設備投資にコストがかかるため、個人製作家の間ではあまり用いられず、ラッカー塗装が最も一般的となっています。

ポリウレタン塗装は塗膜が硬く、リフィニッシュを行うには一度塗膜を剥がす必要がありますが、ラッカー塗装の場合は塗装後も修正を容易に行うことができます。

その反面、ラッカー塗装はゴムに長時間触れさせると溶ける場合がありますから、ラッカー非対応のギタースタンドなどに置いたり、掛けたりする場合には、接触部にクロスなどを入れるようにしましょう。

セラック塗装は伝統的な塗装方法で、非常に薄い塗膜を重ねて仕上げるため、最も音響特性に優れており、独特の質感があります。

その反面、高温多湿な環境では軟化し、ケースの布地やスタンドなどと癒着しやすく、デリケートです。

夏場はボディに触れる面を極力減らすようにして保管してください。

また、アルコールにも溶けますので、消毒用アルコールが付着した手で触れたり、除菌シートで楽器を拭いたりしないようにしてください。

塗装が溶けても演奏には支障はありません。

塗り直しも簡単にできますので、リペアに出してください。

塗装面の日々のケアは、基本的にどのような塗装でも、楽器用のクロスを使って乾拭きする程度で問題ありません。

ポリッシュを使いたい場合には、塗装の種類によって、ポリッシュの種類が変わります。

例えば、サテンフィニッシュ(艶消し)塗装に光沢の出るポリッシュを使ったりすると、艶を出してしまうことになってしまいますし、ラッカー塗装非対応のポリッシュをラッカー塗装に使用すると、白濁などの異常が出る場合があります。

楽器店では様々な塗装に対応した商品が販売されていますから、用途に応じて選ぶようにしてください。

またポリッシュは、直接楽器には吹き付けず、一度クロスに出してから、楽器の目立たない場所に付けて試し、問題がないことを確認してから使うようにしましょう。

様々な楽器で複数のポリッシュを使い分ける場合には、混ざらないよう、クロスも使い分けた方がいいでしょう。

テールピースなどの金属部品にもラッカー塗装がされている場合もありますので、ご自身の楽器の塗装種類を確認してから使うようにしてください。

指板のケア

指板のオイリングには、クリーニングと保湿の2つの役割があり、その目的によって様々な商品が販売されています。

最も一般的で使いやすいオイルがハワード社のオレンジオイルで、クリーニングと保湿を同じくらいのバランスで行える商品です。

レモンオイルもよく流通していますが、保湿よりもクリーニングを目的としています。(マーティンなど、レモンオイルの使用を推奨していないメーカーもあります)。

ブズーキの指板には、エボニーやローズウッドなどが主に用いられますが、エボニーは特に油分が少なく、湿度変化の影響を受けやすいため、日本の環境ではネックに狂いが生じやすくなります。

梅雨時などは保湿用オイルで保湿しておくと、湿気の吸収を抑えることができ、ネックの狂いを最小限に抑えられるとされています。

また、冬場の乾燥する時期に保湿をしておくと、指板から水分が抜けてフレットの浮き上がりを防ぐこともできます。

ステファン・ソーベルは、保湿力の高いウォールナットオイルを推奨していますが、FERNANDESのRose Neck Oil 424など、強力な保湿力を持った指板オイルも市販されています。

指板オイルの中には、ラッカー塗装に反応してしまうものも多くありますから、オイルを塗る時には必ずクロスに数滴取って、ネックの塗装面に付かないように注意しながら塗布してください。

ベタベタに付け過ぎないようにするのも大切で、塗布後は軽く乾拭きして、余分なオイルを拭き取ると良いでしょう。

フレットのケア

フレットは、あまり頻繁に磨いてしまうと、少しずつ減っていきますので、気になる時だけコンパウンドで磨くようにしましょう。

コンパウンドは各メーカーから様々なものが販売されていますが、研磨力の弱いものがオススメです。

フレットを磨く時は、必ず指板面を粘着力の弱いマスキングテープで保護するか、フレット磨きプレートで保護してください。

フレットは消耗品ですから、中古品を購入する場合は、減り具合を確認すると良いでしょう。

減りが気になり始めたり、特定の部分だけがすり減ってバズが発生したりする場合には、フレットの擦り合わせやフレット交換(リフレット)が必要になりますので、ギターリペアショップに相談しましょう。

トラスロッドの調整

ブズーキのネックには、弦による強い張力が加わり、何もしないと順反り方向にネックが反って行きます。

この反りを調整する役割を果たすのがトラスロッドで、指板の下に埋め込まれています。

トラスロッドは通常楽器が完成した段階で調整され、出荷されて店頭に並びますが、ネックは湿度や気温などの環境の変化によって動くため、個体にもよりますが、基本的には定期的な調整が必要になります。

1フレットと14~最終フレット(楽器によって異なる)を押さえた状態で、8~12フレットあたりで弦とフレットの間に僅かな隙間があるのが理想です。

隙間がない場合は逆反り、隙間が大きすぎる場合は順反りです。

トラスロッドはペグヘッド側から調整するタイプと、サウンドホール側から調整するタイプがあります。

ペグヘッド側の場合は、カバーを取り外してください。

トラスロッドにも様々な種類がありますが、ブズーキの場合、基本的には六角レンチで調整できるものがほとんどです。

順反りの場合は時計回りに、逆反りの場合は反時計回りに回してください。

初めは45度程度回して調整し、様子を見ながら調整しましょう。

トラスロッド調整により、反り具合が変わるため、弦高も変わります。

ただし、弦高の調整は、必ずしもトラスロッド調整だけでできるわけではありません。

ナットの摩耗具合や、サドルの高さ、フレットの摩耗具合など、様々な要素を考慮した上で本来は行うものです。

技術が必要な作業ですので、リペアショップに調整を依頼するのが無難です。

また、古い楽器の場合、トラスロッドの回ししろがないものもありますので、中古品を購入する際は、どのくらい調整が可能かを確認した方が良いでしょう。

理想の弦高は、人の好みによって変わります。

伝統音楽のリズミカルな演奏を基本とする奏者は、一般的なフィンガーピッキング用のギターのセットアップより少し高めの弦高を好む傾向にあります。

楽器が届いた時点では、必ずしも自分の好みにセットアップされているわけではありません。

メーカーによっては、販売店による調整を前提として、出荷時のセットアップを大まかな精度に留めている場合もあります。

購入する際に違和感があれば、リペアショップに持ち込み、好みの設定に仕上げてもらうことをオススメします。

オクターブ調整

フローティングブリッジを採用したブズーキの場合、ブリッジが接着されていない場合がほとんどです。

従って、弦交換の時には、1コースずつ交換するか、粘着力の弱いマスキングテープなどで元のブリッジの位置がわかるようにして交換しましょう。

ブリッジの位置が変わると、弦長が変わり、正確な音程を保てなくなるからです。

このような場合には、オクターブ調整が必要になります。

オクターブ調整では、12フレット上のハーモニクスと押さえた状態での実音を一致させる作業を行います。

まずは、ブリッジを大まかな位置に置きましょう。

理論的には、ナットから12フレットまでの距離を2倍した数(弦長)に、サドル補正分として2mm~5mmを加えた場所にブリッジを置くことになります(この補正分の距離は楽器のサドルの作りによって変わります)。

その後、チューニングをした状態でハーモニクスと実音を鳴らし、ハーモニクスの音程が実音より高い場合は弦を緩めた上でブリッジを前に、低い場合は後ろにずらして、調整してください。

クリップ式のチューナーでは、正確な音程が把握しにくいこともありますので、感度の良いストロボチューナーがあると便利です。

この作業を高音側と低音側で行ってください。

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