バンジョーについて Part2

バンジョー奏者の大倉さんに、「バンジョー」を選ぶ際のポイントとなる、音色に特に大きな影響がある要素について解説していただきました。

楽器選びのポイント

楽器選びのポイントとなる、音色に特に大きな影響がある要素を紹介します。

リゾネーターとオープンバック

バンジョーの背面は元々開きっ放し(オープンバック)でしたが後に共鳴による音量を得るために蓋(リゾネーター)が付く様になりました。

リゾネーターが付くと共鳴により音量が増す他に低域成分の強化が見込まれ、音が前に飛ぶ鋭い印象の響きになります。

大抵は工具を使わず簡単に付け外し出来るので試奏できる場合は外した音も確認してみると良いでしょう。

オープンバックは廉価な仕様という扱いをされがちで実際安めなのですが、取り回しの良さと周囲との調和の取りやすさからパブセッションには有利な面もあります。

リゾネーターバンジョーでもフランジや固定具を外して完全にオープンバックにできる物があり、Clareen Special, Gold Tone CC-IT等はその例です。


▲図8. オープンバックタイプ(Gold Tone IT-17)とリゾネータータイプ(Gold Tone CC-IT)

レギュラースケールとショートスケール

テナーバンジョーの標準的な弦長(レギュラースケール)は23インチ(584mm)前後です。

元々はマンドリンやフィドル奏者のために開発された楽器ですので古い物では20インチ以下の物までありますが、現在はレギュラースケールより2フレット分(約62mm)短い物がショートスケールとされています。

レギュラースケールとショートスケールでは張れる弦のゲージが異なり、ショートスケールはアイリッシュ以外ではあまり用いられないので国内では弦がなかなか手に入りません。

弦長が短いのでマンドリンの弦を組み合わせれば多少費用はかかりますがセットを作る事ができます。

弦長や弦のゲージは当然音色に影響します。

バンジョーは元々長めの弦長に細い弦を張る楽器なのでショートスケールは演奏性のために音色を犠牲にしていると考えられる事が多い様ですが、手に合った楽器の方がダブルストップ(重音)や変奏等の表現の幅は広がります。

小指で5フレットを押さえた状態で人差し指が1フレットに届かなければショートスケールを考慮に入れても良いでしょう。

トラッドのみを単音で演奏するのであればそれ程気にする事はありません。

トーンリング

最もシンプルな物はロールドブラスやフラットバーと呼ばれる金属棒のリング(例: Gold Tone CC-IT)ですがバンジョー最盛期に様々に工夫され、それ自体が音色作りの役割を持つ様になりました。


▲図11. ロールドブラスタイプ(フラットバー)

フラットヘッドやアーチトップ等というのはトーンリングの形状の事で、どちらも代表例はGibson社のMastertoneを真似たタイプです。

フラットヘッドはリムの外縁でヘッドを支える形式(図12)、アーチトップは外縁より内側で支える形式(ポットの説明の図6)です。

Gibsonタイプのリム厚は3/4インチですので実際に振動するヘッド径はアーチトップの方が1.5インチ小さい事になります。

あくまで大まかな区別でそれぞれ様々な形式があり、例えばアイリッシュ用で名機とされるEpiphone Recording AとGibsonタイプでは全く異なる形状をしています。

概ねアーチトップの方が煌びやかさを抑えた硬質な音色で、立ち上がりが良いと言われます。


▲図12. フラットヘッドMastertoneタイプ

アイルランド音楽においてはとにかくアーチトップという向きが強いのですが、他にはソリッドな響きで軽量なロールドブラスやロールドブラスにレスポンスの良さを加えたWhite Laydie(例: Gold Tone IT-250)タイプもアイリッシュ向きと言えます。

リム

通常は11インチですが一回り大きな12インチの物(例: Gold Tone OT-17)もあります。

12インチの物は太く温かな音色を狙って作られるのでリゾネーターを持つ事は稀です。

先述の通り厚さ3/4インチがfull thicknessとされますがオープンバックでは1/2インチもよく見られます。

プライ数(積層された板の数)は2~3プライが良いと言われています。廉価な仕様として4プライ以上のマルチプライがあり、音色の面では十分ですが接着箇所が多いため劣化が起きやすい様です。

安価な物ではアルミ製の物(例: Clareen Bridge)もありますが、木製なだけで十分な厚みも(ウッド)トーンリングも持たない物よりはアルミ製の方がバンジョーらしい音がします。

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