ケルトの笛屋さんで新たにアルバムの取り扱いが開始した国内アーティスト「Men’s Cap(メンズキャップ)」をご紹介します。
アイルランド、スコットランドなどケルト圏の音楽をモチーフにしたオリジナル楽曲を制作し、演奏する。自然が良く似合い、どこか懐かしさを感じる作品は、誰をも癒しの世界へと誘う。
Men’s Capは2014年に日本大学芸術学部音楽学科に在籍していた「ぺん」さんと「sumomo」さんほか4人によって結成されました。
その後メンバーの入れ替えを経て、現在の主要メンバーは以下の3人です。
ぺん (フィドル、ブズーキ等)
sumomo (アイリッシュ・フルート、ティン・ホイッスル等)
めかぶ (ギター、マンドリン等)
これまでに全曲オリジナルで3枚のアルバムを発表しています。
ケルトの笛屋さんでは今月より2ndアルバム”In my hands”と3rdアルバム”Trace”を取り扱い開始します。
ライブ・スケジュールや活動の詳細については公式ホームページをご覧ください。
In My Handsのご紹介(レビュー by hatao)
- 収録曲
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[1] Shining black tea surface
[2] The sigh
[3] Lanterns
[4] It’s a sunshower
[5] Fireplace価格 税込み1,300円(+税・送料)
In My Handsは2018年末に発表された2枚目のアルバムです。大学で活動していた頃のメンバーの脱退が相次ぎ、ぺんさんとsumomoさんの2人で活動していた頃のもので、ゲストのギター奏者「武蔵」さんが参加する[1][2]を除いては、基本的に2人による多重録音で作られています。
作品は全曲オリジナルで、ケルト風味でありながらアイルランド音楽そのものでもない、独特の世界を作っています。
以下、短く解説します。
[1]短調のクールなフィドルからホイッスルが参加してアップビートに変わる、アイリッシュ・リールのスタイルの楽曲。
[2]フィドルとロー・ホイッスル(ティン・ホイッスル)によるアイリッシュ・ジグのスタイルでの楽曲。
[3]アイリッシュ・フルート独奏をフィーチャーした和風イメージのスロー・エアーからホイッスルのジグ、リールにメドレーする楽曲。間の曲は”Bon Odori”とのことで、バウロンが入ってお囃子風のリズムになるところが遊び心があって楽しい。
[4]ホイッスルとブズーキで奏でる6/8リズムのしっとりとした行進曲風の楽曲。景色が見えてオリジナリティがあり個人的に好きな曲。
ホイッスルが良く生かされていると感じる。
[5]フィドル、ホイッスル、蛇腹楽器の厚い響きによるスローな楽曲。
短い曲を繰り返してメドレーでつなぐところや、リールやジグのリズム、アレンジ手法など基本的にはアイルランド音楽のフレームを利用しながら、メロディはアイルランド風ではない独特なセンスを感じさせる音楽です。
演奏が良いのはもちろんですが、ぺんさんとsumomoさんの多彩ぶりには脱帽します。
デュオのCDでありながら、収録されている音色はカラフル。
ブズーキ、ギター、コンサーティーナ、バウロンはメイン楽器に劣らず、おまけにジャケットまでsumomoさんがデザインしているというから驚きです。
全曲で23分と短いCDですが、曲の個性が立っているので何度もリピートして楽しめる作品になっています。
TRACEのご紹介(レビュー by hatao)
- 収録曲
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[1] Gecko not a Newt
[2] Sunlight in Early Morning
[3] Midnight Jig
[4] RUN!
[5] Three Fragments of Sea価格 税込み1,300円(+送料)
Traceは2019年に発表された、全曲オリジナルの3枚目のアルバムです。
新メンバーに「めがぶ」さん(ギター)を加えたトリオ編成での初の作品です。
5曲のうち[2][3][5]の3曲は2017年発表の1stアルバム(未聴)にも収録されている楽曲ですが、アレンジが異なるとのことですので、ファンの方は1stアルバムをホームページで手に入れて聴き比べるとさらに楽しめるでしょう。
[1]アコースティックギターのカッコいいリフが印象的な楽曲。転調とリズムチェンジを繰り返す凝った展開がワクワク感を高めます。
sumomoさんはD管アイリッシュ・フルート → Bbホイッスル → D管アイリッシュ・フルート→ D管ホイッスル → A管ホイッスルと4回も持ち替えをしているように聞こえるのですが、ライブでどうやって演奏するのか個人的には気になります。
このCDの中では最も光っている楽曲です。
[2]ティン・ホイッスルをフィーチャーしたタイトル通りの爽やかな楽曲。そのままフィドルのリール風の2曲につながる。
後半の笛とフィドルがユニゾンするアレンジはアイルランド音楽のスタイルです。
[3]アイリッシュ・ジグのスタイルの楽曲。
フルートとホイッスル、マンドリン、バウロンなどを重ねてにぎやかな編成になっています。
[4]短調のアイリッシュ・リールのスタイルの楽曲をベースにしながらメロディの感じはトラッド的ではありません。
バッキング・アレンジはアグレッシブで、スタイリッシュなロックのような雰囲気もあります。
ライブでは盛り上がるでしょう。
[5]ブズーキとホイッスルから始まる6/8リズムの曲。
楽器が変わりながら次々と景色を換えてゆく展開は聴き応えがある。
2nd CD “In My Hands”と聴き比べるとギター奏者めかぶさんの参加によってアレンジや楽曲の可能性が広がり、進化したことがよくわかります。
全体的にギターの個性が光りますが、特に[1][5]はアイリッシュ・バンドに留まらない将来を感じさせます。
世の中におきまりの展開のアイリッシュ(ケルト系)音楽は溢れているので、ケルト音楽スタイルでのオリジナル音楽はとてもおもしろい試みです。
何風でもない、Men’s Cap独自の世界観をぜひお楽しみください。