David Brown氏による「中国の横笛」についての解説記事を、当店でおなじみの翻訳家・村上亮子さんの翻訳でお届けします。
中国の横笛
中国では昔から竹の笛が使われています。オカリナのような陶器の笛、パンパイプ、縦笛も広く使われていますが、中国で最もよくあるタイプの笛は、西洋でシンプルシステム・フルートと呼ばれる6つ孔の横笛です。中国の横笛は竹のほかにもヒスイ、象牙、金属、骨などで作られていますが、竹が一般的です。
笛子と呼ばれる笛の多くは、梆笛バンディbang di (中国北方の梆子劇という劇伴奏に使う笛)と同じように 吹き口と最初の指孔の間に演奏に使わない孔が開いています。その孔は薄い膜(di mo) に覆われていてカズー(訳者注:アフリカ起源の膜鳴楽器)のようなブーンという音が加わり、中国の笛に独特な豊かな味わいを加えています。このうなるような音が必要でない場合は、孔をセロテープで塞げば普通のクリアな音になります。膜に覆われた孔がなくても竹の横笛の素晴らしい音色を得ることができます。
中国の笛には先の方にいくつか余分な孔があるものがあります。チューニングを調整する役割があり、房をつけることもできます。この孔は指で塞ぎません。指で塞ぐのは6つの指孔だけです。
中国ではふつう笛を区別するのに、左手の3つの指孔を全部閉じて右手の3つの指孔を全部開けたときに出る音で呼びます。3つ目の孔の近くに“C”と記された笛は基音がGで、西洋のファイフやフルートのGと同じです。
3番目の孔の近くに“G”と記されたフルートの基音はDで、西洋風に言えばD調のフルートです。中国の笛職人が両方の音、この場合で言えば3番目の孔にG、6番目の孔にDと記すことは滅多にありません。ふつうは3番目の孔の名前だけが刻まれます。
中国式の呼び名 | 3番目の孔 | C | D | F | G | A | Bb |
西洋式の呼び名 | 6番目の孔 | G | A | C | D | E | F |
中国の横笛が、西洋で言うところのGより低くなることはほとんどありません。ローDの笛(中国風に言えばG)なら、簫(しょう)という縦笛を使います。アイリッシュ・フルートのDにあたる中国の横笛(中国ではG)は珍しく、ほとんどないと言ってもいいくらいです。
中国のプロのフルート奏者は、孔を半開にしたりアンブシュアを工夫したりして、1つの笛で様々な調の曲を吹くことができます。また中国笛のソロ演奏では、素早いタンギング、フラタータンギング(舌を震わせる奏法)、ピッチベンド、鳥のものまね等様々な特殊奏法が使われます。
竹は丈夫な素材ですが、時には例えば友達が誤って笛の上に座ってしまうとかで、小さな亀裂ができることもあります。心配ご無用です。瞬間接着剤を使えば亀裂を塞ぎ、演奏性能は元通りです。時々スウィート・アーモンド・オイルで管の内側と外側をオイリングすれば、常に最高の状態を保ち、湿気から守ることができます。