ライター:松井ゆみ子
地元のパブでのセシューン練習会が週1回ペースで行われていて、フィドルを弾く機会がぐっと増えています。楽しい。教えてくれる先生夫婦はパブの向かいに住んでいるので、時間があるとさっと集まれるのです。
先日はバンジョーの練習会にフィドルで参加。バンジョーは弦の数も並びもフィドルと同じなので一緒に練習するのは興味深い体験でした。バンジョーの指使いを見て学ぶことも多く。この日初めてバンジョーを弾かせてもらったのですが、ネックの長さに戸惑ったものの、覚えているチューンがすぐに弾けたのにびっくり。スムースには弾けるわけもありませんけれど、あまり興味のなかった楽器が急に親しみのあるものになったのは新鮮な驚きです。
スライゴーのフィドラーといえばマイケル・コールマンが代表格ですが、同じくらい有名なのがジェイムス・モリソン。アメリカに渡ってフィドルを教える際にバンジョーを使っていたと聞いて合点がいきました。アイルランドのバンジョー・ブームも、そこから始まったようです。
「Monaghan jig (モナハン・ジグ)」というチューンをご存知ですか?
万年ビギナーのわたしが、なぜこのチューンを学びたいと思ったのか、きっかけは忘れてしまいましたけれど、どこかで耳にしてすぐに気に入ったことは確かです。
参考になるかもと先生が送ってくれたYouTube動画は、なんとイーリアンパイプス。マイケル・コールマンもパイパーからチューンを学んだと聞きますが、スライゴー流儀をわたしも体験する機会を得たわけです。が、それ以上に送られた映像と情報から学ぶことが大きかったのはチューンそのもののバックグラウンドでした。
モナハンはご存知のように北部のカウンティで、北アイルランドとの県境にあたります。チューンはその土地のことを描いたものと思っていたのですが、まったく別のストーリーによって作られていました。
モナハンはカウンティのことではなくて人の名前。1916年、イースター蜂起の直前に亡くなったIRAのメンバーを偲ぶチューンだったのです。
北アイルランド出身のチャーリー・モナハンは、IRAの活動中にカウンティ・ケリーのバリーキッサーンBallykissaneの海で溺死しています。
このYouTubeはその海岸で撮影されたものでした。
もの哀しい旋律にこめられた意味を知って、ことさらこのチューンを学びたいと思うとともに、大切に弾かないといけないという気持ちも強く感じています。人前で演奏することはないですが、それでもいつもチューンの意味を忘れたくないと思ったのです。
この映像で演奏している女性パイパーはソリカ・ニ・スコリーSorcha Ni Scolai。2019年にイーリアンパイプス(12歳以下の部門)で アイルランドのトップに選ばれています。経歴がよくわからないのですが、この撮影時もたぶんまだ高校生。ですが、すでに新進気鋭の奏者として活躍しています。そして彼女の演奏している楽器が、どうやら日本のパイプスメーカー中津井さんの作品らしいのです!アイルランドで彼の作るパイプスが愛用されていることは耳にしていました。素晴らしい。
では最後に彼女の演奏するモナハン・ジグを。