ペニー・ホイッスル(ティン・ホイッスル)の歴史と謎


出典 https://larkinthemorning.com/

Lark in the Morningに掲載されている「ペニー・ホイッスル(ティン・ホイッスル)の歴史」についての解説記事を、当店でおなじみの翻訳家・村上亮子さんの翻訳でお届けします。

原文:The History and Mystery of the Pennywhistle – Lark in the Morning

ペニー・ホイッスル(ティン・ホイッスル)の歴史と謎

アリーナ・ラーソン

ホイッスルは長い歴史がありますが、その起源は謎に包まれています。6つの指孔とフィップル型のマウスピースのあるシンプルな形ですが、それなりに色々な面を持った楽器です。単純なつくり、手ごろな値段、携帯に便利なことなどから、ティン・ホイッスルは身近にあるメロディー楽器の中でも、最も手を出しやすいものの1つと言えるでしょう。ティン・ホイッスルの音楽は世界中で、様々な場面で聞くことができます。

アイルランド音楽のミュージシャン達がこの楽器を広め、それでホイッスルを知るようになった人も多いでしょう。メアリー・バーギンMary Berginとマイケル・マゴールドリックMichael McGoldrickマイコー・ラッセルMicho Russellパディー・モローニPaddy Moloneyとショーン・ポッツSean Pottsダンカ・オ・ブリアンDonncha Ó Briainジョーニー・マッデンJoanie Maddenブライアン・フィネガンBrian Finneganケビン・クロフォードKevin Crawfordとキリアン・バーレイCillian Vallelyリアン・オフリンLiam O’Flynn等々、枚挙にいとまがありません。しかしこの楽器が使われるのは必ずしも伝統音楽に限られているわけではありません。注意して聞いてみると映画音楽(例えばロード・オブ・ザ・リング)やゲーム(マリオカートなど)にもホイッスルが使われているのに気が付くでしょう。クウェラ(南アフリカの音楽)やロックジャズでも使われています。

ホイッスルの起源をはっきりと定めるのは簡単ではありません。フィップル付きの縦笛は少しずつ形を変え、(人類が木や骨を彫って楽器を作ってきた限り)人類の歴史を通して存在してきた可能性が高いのです。例えば、おそらくフィップルが付いていたと思われるディヴィエ・ベイブ ”Divje Babe” は6万年前に遡り、熊の大腿骨でできています。見つかっている限りで最古の楽器です。ヨークシャーで見つかったマラム・パイプ ”Malham Pipe” と呼ばれる羊の骨でできた笛は中世初め頃のものです。12世紀に遡る骨の笛が幾つかアイルランドのダブリンで見つかっています。ですからホイッスルは決して新しい発明ではないのです。

しかし今の形のホイッスルはイングランドのロバート・クラークRobert Clarkeが作り出したものと見られています。彼は1840年頃からブリキ板を先が細くなるように巻いて、木のブロックを詰めてホイッスルを作りました。(同じころの他の笛職人は鉛を使いました。ですから、もし古いホイッスルを持っていたら、吹くときに気を付けてください。)もともとは「クラークのフラジョレット」として売り出され、これらのティン・ホイッスルは作りが簡単なので大量生産されました。クラークのホイッスルは今でも人気があり、「クラーク・オリジナル」はこの笛のもともとの形を思い出させます。

一般にティン・ホイッスルは全音階の楽器だと思われていますが、「半分閉じ」や「クロスフィンガリング」を使って、もっと多くの音を出すことができます。D管ホイッスルの基本的なスケールはDメジャーですが、Gメジャーも普通に吹けます。またDミクソリディアン、Aミクソリディアン、Eドリアン、Aドリアンなどの関連したモード、EマイナーやBマイナーも吹けます。近年はロー・ホイッスルの人気が出ています。これはフィンバー・フュレーFinber Fureyの要望により、1960年にバーナード・オーバートンBernard Overtonが作った新しい楽器です。よくあるキーには(普通のホイッスルもロー・ホイッスルも)F、A、B♭、C、D、E♭がありますが、どれを使うかはあなたがやりたい音楽や個人的な好みによります。

ところで、どうしてペニー・ホイッスルと呼ばれるのでしょうか。路上演奏でチップにペニー(小銭)を受け取ったからだという人もいますが、それよりも特に1800年代半ばの量産品のこの笛が安くて買いやすかったということに関係ありそうです。「ペニー・ホイッスル」とか「ティン・ホイッスル」という名前が普通になったのは20世紀になってからで、それまではこのフィップル式笛の仲間は縦笛、ケルティック・フルート、ジバ・フルート(クウェラ音楽で)、ファドーグ・スターンfeadóg stáinなどと呼ばれていました。アイルランド語でファドーグはホイッスル、スターンは錫という意味です。

安い量産品のホイッスルを選ぶか、高価なホイッスルを選ぶかは、主に個人的な好みの問題です。多くの有名な演奏家が(ヘッドがプラスチックの)クラシック・ジェネレーションを好んでいます。(クラーク・オリジナルのような)木のブロックを使ったホイッスルの、柔らかく風音の混じった音を好む人もいます。(ディクソンスザートのような)ポリマーやABSプラスチックのホイッスルは温度変化の影響を受けにくく、音も悪くありません。一方、様々な職人による「高級」なホイッスルは、ユニークな音色を求めて、異なった金属や木材を取り入れています。

どうしてこんなに異なったタイプのホイッスルがあるのかと思うかもしれません。静かな音が欲しいこともあるし、大きな音が欲しいこともあります。森のハイキングで高価なホイッスルを持ち歩きたくないこともあるでしょう。多くの笛吹きはそれぞれの場面に応じてホイッスルを集めています。そしてどのホイッスルがあなたに合っているか知る一番いい方法は、録音したものを聞いたり、自分で吹いてみたりすることです!Lark in the Morning 楽器店にも多くのホイッスルを置いており、オンライン・ショップでも、音のサンプルを添えてホイッスルを並べています。

ホイッスルはシンプルな楽器に見え、おもちゃのようなもの、入門楽器と思っている人も多いですが、見かけに騙されてはいけません。ホイッスルのテクニックはフルートやイリアンパイプスに応用できますが、ホイッスル自体を活用する場面が、特に伝統音楽やフォーク音楽で多くあります。ホイッスルは長い歴史のある表現力豊かな楽器なのです。