ブルターニュのフルートの伝統(1)歴史

ライター:hatao

こんにちは、ケルトの笛のhataoです。

私はアイリッシュ・フルートを演奏するのですが、この楽器はアイルランド音楽だけではなくヨーロッパの様々な伝統音楽で活躍しており、中でもフランスの北西部、ブルターニュ地方には優れた演奏家が多いです。

今回はそんなブルターニュのフルート奏者にスポットを当てて紹介いたします。

ブルターニュのアイリッシュ・フルート?

ご存知の方も多いかと思いますが、アイリッシュ・フルートはアイルランド発祥の民族楽器ではなく、本来は19世紀スタイルの木製フルート、中でもロンドンで製造されていた楽器が起源となっています。その後クラシック音楽ではベーム式フルートが主流となり、現在はアイルランドの伝統音楽で盛んに使用されているため、「アイリッシュ・フルート」と呼ばれています。

ブルターニュでは、ローカルな伝統音楽を演奏する場合にはフルート・トラヴェルシエ・アン・ボアFlûte traversière en bois、直訳すると「木の横笛」と呼ばれていますが、アイルランド音楽を演奏する場合にはそのまま仏語訳でフルート・トラヴェルシエ・イロンデイズflute traversière irlandaiseと呼ばれます。

ブルターニュの「木の横笛」の歴史

ブルターニュの伝統音楽では本来、横笛は使われていませんでした。フルート奏者のジャン・ミシェル・ヴェイヨンJean-Michel Veillonのインタビューによれば、パトリック・モラールPatrick Molardとアラン・クロアトルAlan Kloatrが1975年頃、アラン・スティヴェルと一緒に演奏していた時にアイルランドでフルートを購入して、演奏し始めました。その後、ヴェイヨン氏を筆頭に多くのフルート奏者が短期間に現れ、フルートは数十年の間でブルターニュで一般的な楽器として受け入れられました。

ブルターニュの楽器

ブルターニュの農村では屋外や広い屋内のスペースで大人数で輪になって踊る伝統(round dance)があり、そのためには大音量の楽器が求められました。そのため、ダンスの伴奏音楽で最も人気があったのはバグパイプのビニウ Binioùと、オーボエ型の伝統楽器ボンバルド bombardeのカップルによるsoner(楽師)のスタイルです。

ヴァイオリンは16世紀から伝統に根付いており、ハーディーガーディは北部ブルターニュを中心に演奏されていました。20世紀初期からクラリネットやサクソフォンが演奏されるようになり、後発のアコーディオンに人気が映っていきました。

80年代なるとアイルランド音楽やスコットランド音楽の伝統音楽復興の動きの影響を受けました。

ハープは中世から吟遊詩人の楽器として演奏されていましたが、スティヴェル氏の活躍によって復権しました。同じ頃、スコットランドのグレート・ハイランド・パイプスもバガッドbagadと呼ばれるバグパイプとボンバルドの大合奏に取り入れられています。フルートはこのような歴史的な文脈の中でブルターニュ音楽に登場しました。

ブレトン・フルートの黎明期

ヴェイヨン氏がフルートの演奏を始めたのはアイルランド音楽でしたが、その時すでにボンバルドでブルトン音楽を演奏しており、踊り手でもあったので、ブルトン音楽の演奏にフルートを使い始めました。その頃ビニウ、ボンバルドの製造をしていた22歳のジル・レアールGilles Lehartがフルートの製造を開始、このことによって多くのフルート奏者が誕生しました。フルートは音量が控えめであるため当初はそれほど受け入れられていなかったようですが、ヴェイヨン氏のコルノグKornogやバルザスBarzazといったバンドが人気を博したことから次第に受け入れられるようになりました。


Gilles Lehart 木製アイリッシュ・フルート D管


Gilles Lehart 6キー付き 木製アイリッシュ・フルート

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