
出典 https://blog.mcneelamusic.com/
アイルランドの楽器メーカーMcNeelaが公開しているブログの中から、ヴァイオリン(フィドル)のメンテナンスについて解説している記事を許可を得て翻訳しました。
原文:Top Tips for Violin Care and Maintenance
伝統音楽の相棒を守る:ヴァイオリンの基本ケア
楽器(特に木製のもの)は、美しい一方で気まぐれなところがあることは否定できません。適切なメンテナンスは、ヴァイオリンの寿命にとって非常に重要です。正しいお手入れ方法を学ぶことで、ヴァイオリンの状態をより長く良好に保つことができます。
アイリッシュ・フィドルを弾く方でも、クラシックのヴァイオリンを弾く方でも、あるいはその両方を極めている方でも、楽器を最良の状態に保つことはご自身のためになります。きちんと手入れされたヴァイオリンは何年にもわたって美しい音を奏でつづけますが、不十分なメンテナンスは割れなどのダメージを引き起こし、最終的には演奏できなくなることさえあります。
では、こうした問題をどう避ければよいのでしょうか。答えはシンプルです。ヴァイオリンを大切に扱えば、ヴァイオリンもあなたに応えてくれ、ともに美しい音楽を生み出せます。
このブログ記事は、ヴァイオリンのお手入れ方法を正しく学ぶためのヒントをまとめた、ヴァイオリンのメンテナンスにおける「やるべきこと」と「避けるべきこと」を知っていただくためのガイドです。
ヴァイオリンに少し愛情を注いで、その音楽的な寿命をもっと良く、そして長くしてあげましょう。
楽器を知る
ヴァイオリンを最良の状態に保つためには、その構造について少し知っておくことが大切です。
優れた音楽家は皆、自分の楽器がどのように作られ、どのように機能しているかを深く理解しています。この知識はヴァイオリンから最大限の力を引き出すのに本当に役立ちますし、どう手入れをし、どうメンテナンスすればよいかを判断する助けにもなります。
もしブリッジと魂柱の違いもよく分からないという場合は、私がまとめた「ヴァイオリンの構造ガイド」をぜひご覧ください。便利な用語集になっており、楽器の重要な部分を理解し、見分けられるようになるはずです。あっという間に詳しくなれますよ。

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ヴァイオリンの保管
当たり前のことのように思えるかもしれませんが、ヴァイオリンを正しく保管することは、楽器のためにできる最も重要なことです。安全に保管することで、思わぬアクシデントを防ぎ、楽器の寿命を延ばすことにつながります。楽器は育て、手をかけるべき大切な投資であることを忘れないでください。
購入するヴァイオリンには、しっかりしたケースが付いていることを必ず確認してください。ヴァイオリンを安全に保つためには、必ずケースに収納し、フタをきちんと閉めておくことが大切です。また、片付ける前に肩当てを外すことも忘れないでください。
ケースの外に出したままヴァイオリンを持ち歩くのは避けましょう。これはトラブルを招くようなものです。私はこれまで、ケースに入れて運んでさえいれば悲しい最期を迎えずに済んだであろう楽器をいくつも見てきました。
温度
どこに保管するかも非常に重要です。多くの楽器、特に木製のものと同じように、ヴァイオリンは極端な温度や湿度を嫌います。極端な高温・低温、または急激な温度変化が起こる場所に保管すべきではありません。温度の極端な変化は木材の反りを引き起こし、ペグや弦のイントネーションに影響します。
では、大切なヴァイオリンの理想的な温度とは何でしょうか。私は18℃以上25℃以下の室温で保管することをおすすめします。
湿度
木製の楽器は温度だけでなく湿度にも反応します。そのため湿度も一定に保つ必要があります。高すぎても低すぎてもいけません。湿度が40%を下回ると、ヴァイオリンが影響を受けやすくなり、チューニングや音色、演奏性に問題が出ることがあります。
除湿機や加湿器は強い味方です。意外に思えるかもしれませんが、冬は特に湿度管理に気を配るべき季節です。冬が乾燥する地域にお住まいならなおさらです(アメリカ東海岸の皆さん、特にそうです)。
もし加湿器を持っていない場合(多くの方がそうだと思います)、楽器を保管している部屋のラジエーターの近くに水を張ったトレイを置くことで乾燥を防ぐことができます。こぼさないようにだけ気をつけてくださいね。

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清潔に保つ
私たちの手や指に含まれる油分は、木材の仕上げを傷めることがあります。そのため、楽器を扱うときは注意が必要です。ヴァイオリンは必ずネック部分を持ち、ボディには触れないようにしましょう。
松脂の蓄積を防ぎ、ヴァイオリン本体についた油分を取り除くために、演奏後は必ず乾いたマイクロファイバークロスで全体を拭き取ってください。
水や市販のクリーナーを使ってヴァイオリンを掃除しようとしてはいけません。もし指板に松脂が過剰に付いていたり、ボディに汚れが見られる場合は、必ずプロの製作・修理職人のもとに持ち込んでクリーニングしてもらってください。
また、手で触れてはいけないのは本体だけではありません。ヴァイオリンの弓の馬毛にも触れないことが大切です。皮脂は馬毛を傷め、弦をしっかり捉える力を弱めてしまいます。
優しく扱う
オーティス・レディングが歌ったように、少しの優しさが大切です。ヴァイオリンは繊細な楽器であり、演奏中も演奏していないときも常に丁寧に扱う必要があります。
たとえば、チューニングの際にペグを無理に回してはいけません。強引に動かすと弦が切れてしまうだけでなく、ペグそのものが折れてしまうこともあります。

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弦を交換する
新しい弦をヴァイオリンに張るときは、必ず1本ずつ交換してください。
すべての弦を同時に外してしまうと、駒(ブリッジ)が動いてしまったり、さらには魂柱の位置がずれてしまうこともあります。
ヴァイオリンの弦はどれくらいの頻度で交換すべきでしょうか?
弦は、使っているだけで自然と摩耗していきます。そして、摩耗した弦は音質が低下します。古く摩耗した弦は、音を出すためにより強い圧力が必要になるため、手首や肩を痛める原因にもなります。弦が細くなりすぎると、演奏中に突然切れる危険性もあります。
弦は使用状況に応じて徐々に劣化していくため、交換頻度はどれくらい演奏するかによって変わります。一般的には9か月〜12か月ごとの交換が推奨されています。もちろん、毎日何時間も練習する方は、これより早く交換が必要になるでしょう。
弦のチューニングがすぐ狂うようになったり、音に輝きや温かさがなくなってきたと感じたら、交換のサインです。楽器の反応にも違いが出ます。摩耗した弦では、以前のように豊かに響かなくなります。
演奏後に弦を拭いて松脂や汚れ、指の油分を取り除くことで、弦の寿命を延ばすことができます。
ヴァイオリンの弦の交換方法
※弦は必ず1本ずつ交換してください!
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・古い弦を外します。片方の手で弦を持ちながら、ペグをゆっくり回してテンションを緩めます。ペグが緩んだら、弦を外します。
・ペグコンパウンドを使ってペグを軽く潤滑します。
・正しい交換用弦を用意します。当たり前のようですが、外した弦と同じ音程の弦を選んでください。
・弦をペグに通し、外れない程度に適度な長さを巻きつけます(巻きすぎないように注意してください)。
・ボールエンドをテールピースに差し込みます。
・弦のたるみを指で支えながらゆっくりと取り除き、ボールエンドが正しく収まっていることを確認しつつ弦を張っていきます。さらに弦を軽く巻いて、しっかり固定されるまで締めます。
・弦をチューニングします。
・駒(ブリッジ)がまっすぐ立っているか確認します(E線にブリッジプロテクターがついている場合は、ブリッジの溝に正しく乗っているかも確認してください)。
危険な兆候
どれだけ丁寧に扱っていても、楽器が少し傷んでしまうことがあります。心配しすぎなくても大丈夫です。そんなときは、経験豊富なルシアー(製作・修理職人)やヴァイオリン製作者のもとに持ち込めば修理してもらえます。ここでは、ダメージが手遅れになる前に気づけるよう、注意すべきいくつかのサインをご紹介します。
ひび割れ
どんな楽器でも、ボディに入るひび割れは良くない兆候です。ヴァイオリンを定期的にチェックし、ボディが良い状態に保たれているか確認しましょう。
縁(継ぎ目)に沿った小さなひび割れは珍しいものではなく、通常は大きな問題なく修理できます。しかし、ボディそのものにひび割れが生じた場合、さらに深刻な問題を示している可能性があります。深刻なひび割れは修理に費用がかかることがありますが、良いルシアーであれば対応できます。また、音にも悪影響を与えるため、楽器の扱いや保管には十分に気をつけ、その状態を注意深く見守ってください。
指板の反り
ヴァイオリンの指板は、まっすぐで滑らか、かつ均一であるべきです。そうでない場合、再度削り直す(リプレイン)か、交換が必要になることがあります。
すべてのヴァイオリンには、もともとごくわずかな自然なカーブがあります。しかし、カーブが強すぎたり、左右に曲がってしまっていると、演奏に支障が出ます。
質の良いヴァイオリンでは、この問題が起きることはほとんどありません。安価な楽器では指板が不均一または反りやすく、弦が均等に配置されなくなるほど曲がってしまい、演奏できない状態になることもあります。
魂柱の位置ずれ
F字孔の奥には、ブリッジの近くに小さな木の棒「魂柱」が立っています。これは楽器の響きを作る重要なパーツであり、音色にも大きな影響を与えます。
魂柱がほんの少し動いただけでも、音色が劇的に変わり、全く違う音になってしまうことがあります。魂柱の位置を調整することで音量が変わったり、音を明るくしたり、暗くしたり、よりクリアにしたりすることができます。もしヴァイオリンの音が悪く変化したと感じたら、魂柱がずれている可能性があります。
とはいえ、心配はいりません。経験豊富な製作家であれば魂柱を簡単に調整でき、楽器の音を元の状態に戻してくれます。
駒(ブリッジ)の反り
ヴァイオリンのブリッジは、指板とテールピースの間に立てられ、弦を支えている小さな木片です。
ブリッジは時間とともに反ったり曲がったりすることがあり、ある程度の周期で交換が必要になるのは珍しくありません。これもまた、適切な保管とケアをしていれば、質の良い楽器ではそれほど心配する必要はありません。

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ヴァイオリンの弓のお手入れ
ヴァイオリン本体と同じように、弓も最良の状態で演奏するためには手入れと注意が必要です。
弓毛(ボウヘア)
弓毛は緩んでおり、スクリューは無理なく回る状態であるべきです。しかし、締めすぎや経年劣化によって毛が伸びてしまうことがあります。弓毛が長くなりすぎた場合は、張り替え(リヘア)のタイミングかもしれません。
弓毛の長さを確認するには、弓毛をできるだけ緩めてみてください。もし弓毛がハンモックのように垂れ下がる場合は、長すぎるため交換が必要です。
保管する前には必ず弓毛を緩めておきましょう。
弓の木部
スティック(弓の木部)にひび割れや損傷がないか注意深く観察してください。特に木製の弓では、弓毛を締めすぎることでスティックが反ったり、最悪の場合は折れてしまうこともあります。
弓そのものは、フロッグ(根元)と先端が一直線になるよう、まっすぐであるべきです。ただし、弓特有の反り(カンバー)は保たれている必要があります。
反りやゆがみを確認するには、弓を目の前に掲げ、スティックの木の部分を見通してください。もし左右どちらかに曲がっていたり、木が歪んでいる場合は、演奏には適していません。
これは、どんな木製の弓でも、適切に手入れされていなければ起こりうることです。弓を守るためには、ヴァイオリンと一緒にケースにしっかり収納しておくことが大切です。
こうした問題を完全に防ぎたい場合は、カーボンファイバー製の弓を検討してみてもよいでしょう。非常に丈夫で壊れにくく、軽くて扱いやすい弓です。

出典 https://blog.mcneelamusic.com/
壊れたヴァイオリンを修理するには
短い答えはこうです。自分で修理はしないでください。専門家に任せましょう。ヴァイオリンは非常に繊細な楽器であり、経験豊富な職人が細心の注意を払って扱うべきものです。修理については、必ずプロフェッショナルの助言を求めてください。
ひび割れを瞬間接着剤でくっつけてみたり、独自の「応急処置」を試したくなることがあるかもしれません。しかし、家庭でできる対処法は正しい解決策ではありません。どれだけ器用でも、壊れたヴァイオリンを自分で修理しようとしないでください。
修理不可能な場合
時には、どれだけ丁寧に扱っていても、ヴァイオリンが寿命を迎えてしまうことがあります。使い込みすぎた古いヴァイオリンは音に影響が出ることがあり、必ずしも修理で改善できるとは限りません。
その場合は落ち込まないください。マクニーラ社にはさまざまな年齢やレベルに応じた幅広い品揃えがあります。
