梅雨真っ盛りでジメジメした日が続くこの頃。
梅雨時のお悩みといえばどんなことを思い浮かべますでしょうか?
洗濯物が乾かない、食中毒が心配、髪のセットが決まらないなどなど…。
そしてもう一つ。
ケルト楽器愛好家の皆さまにとっては「楽器のヒビ割れ」も心配かと思います。
大切な楽器(特に木製の楽器)を守るために、お手入れ方法を今一度再確認してみましょう!
楽器のメンテナンスについて
木製フルートの取扱いについて(木製ホイッスルも同様です)
木製フルートを初めて手にされる方が不安に思うことは、楽器の管理が難しく、気を抜くとすぐに割れてしまうことではないでしょうか。
以下の決まりごとを守っていれば、長く、良い状態でフルートを楽しめることでしょう。
ここでは、楽器が割れる原因を説明し、日々の手入れの仕方についてお伝えします。
なぜフルートは割れてしまうのか?
木材には水を吸うと膨張する性質があります。
水分は演奏時にフルートの管の内側から入ってきます。
すると、内側からだけ膨らんで、外側は膨らまないままであるため、圧力の差が生まれます。
もっとも圧力に弱いのは、木材が薄くなっているジョイント部分です。
この圧力を押さえこむために金属のリングで留めているのですが、それを超える力がかかった時、割れてしまいます。
フルートの保管に気をつけましょう
楽器の状態を保つために、極端な温度や湿度の変化から、フルートを保護しましょう。
①
演奏後は管の内側の水分をよく拭きとります。
柔らかい乾いた布(スカーフ、ハンカチ、ガーゼ)をフルート用の掃除棒や菜箸に巻き付けて拭きます。
くれぐれもボア(管の内側)をこすって傷つけないように気を付けましょう。
逆に、空気の乾燥したところに置くなど極端に乾燥させないように注意しましょう。
ゆっくりと乾燥する方が木には良いのです。
湿度35~40%の場所に保管すると理想的でしょう。
極度に乾燥した環境では、プラスチックバッグ(ジップロック等)に保管します。
乾燥した地域にお住まいの方やエアコンを使う冬季には楽器用の湿度計の使用をおすすめします。
②
つゆをふき取り、分解してケースにしまいましょう。
フルートの保管にはハードケースが最適ですが、メーカーによっては付属していない場合もあります。
そのようなときには、厚い布を使って、簡単にソフトケースを自作できます。
キー付きフルートの場合は、キーが曲がったりする危険があるためソフトケースは余りお勧めできません。
③
保管場所に気をつけましょう。
直射日光のあたる場所やヒーターなどの熱源のそば、暑い日の車の中には置かないように気をつけ、極度の乾燥から保護してください。
セッションでは、椅子やソファにフルートを放置しないようにしましょう。
誰かが座って、ソケット(ジョイント)を壊してしまうかも知れません。
温度差の大きい場所の移動は、楽器をケースに入れ、楽器に大きな温度変化を与えないように扱って下さい。
冬季など、寒い屋外から暖かい部屋に入って演奏する場合などは、暖房の前やエアコンの直撃を避けて、 頭管部を手で握る、息を吹き込んで暖めるなどして、温度差を少なくしてください。
新しいフルートの「慣らし」
作られたばかりの楽器を吹く際には、徐々に吹く時間を増やしながら全体に水分が馴染むようにします。
一回の演奏を数分程度にして、一日あたりの合算の演奏時間を初日は10分、二日目は20分といった具合に、少しずつ増やしていくと良いでしょう。
初日から長時間練習すると、内側ばかりが膨張して割れの原因になってしまいますので、慎重に練習してください。
また、最初の1カ月は毎週1回は、オイルを塗りしましょう。
オイリングについて
乾燥による割れを防ぐために、フルートにオイルを塗りましょう。
これをオイリングと言います。
オイルは木が水分を吸収する速度を遅くする効果があると考えられています。
また、あるフルートメーカーはオイルが木肌のこまかい穴をふさぐために、音が良くなるとも言っています。
オイルには適しているものとそうでないものがありますが、適したオイルの中ではアーモンドオイル、ピーナッツオイルが比較的入手しやすいでしょう。
楽器店では、他よりもたくさんの種類のボアオイルを取りそろえており、お勧めです。
またはビタミンEを配合したアーモンドオイルであるランシード・オイル(rancid oil)を使うこともあります。
ですが、もし匂いがきついようなら、使わないでください。
ムスクなど香水入りのものや、マッサージオイル、ラヴェンダーオイルなど香りつきのオイル、リンシード・オイル(Linseed oil)、桐油、皮膜を作る油を使わないでください。
また、絶対にマシンオイル、野菜油、石油系のオイルは避けて下さい。
オイリングは1月目は週に一回、その後の最初の一年は月に1回、それ以降は木の乾燥が気になるときで充分です。
布にオイルをしみこませ、長い棒に布を絡ませ、管の内と外に薄く延ばしながら塗って下さい。
オイルを塗るには練習直後を避け、楽器がほどよく乾燥した状態にし、塗った後はしばらくおいてから演奏するようにしてください。
オイルを塗るのは木の部分だけにし、コルクには塗らないで下さい。
接着剤を溶かし、コルクがはがれやすくなります。
キー付きアイリッシュフルートの場合、キーを取るなどしてオイルがパッドにつかないよう配慮して下さい。
オイルを塗ったら、数時間放置し、余ったオイルを拭きとって下さい。
ソケット、テノン・ジョイント
テノンとは、笛の管と管とつなぐためのジョイント部分の、糸やコルクを巻いている方です。
ジョイントがゆるすぎるなら、糸を巻きなおしたり、もう少し糸を巻きたすことで対処できます。
その場合、デンタル・フロス(歯の掃除用の糸)にワックスを塗ったものが使えます。
楽器の到着時はジョイントがやや緩いことがあります。
少し演奏すれば水分を吸って適切なきつさになるでしょうが、それでも緩い場合は糸を巻き足して下さい。
ジョイントの緩さは、音色の質が損なわれたり、演奏の質が不安定になる原因になります。
その他のメンテナンス
■チューニングスライドが緩い場合はスライドグリスを塗って下さい。
無い場合はロウソクを使っても問題はありません。
ビーズワックスを塗るという人もいます。
■コルクがきつすぎるようであれば、水分をすって膨張している可能性があるためしばらく(1日ほど)放置して様子を見、それでもきつい場合は、コルクを痛めないためにコルクグリスを塗って下さい。
まだきついようならコルクの交換を依頼したほうが賢明です。
■きつい状態で使用し続けコルクがぼろぼろになってしまったら、メーカー及びクラリネットなどを扱う楽器店で修理を依頼できるはずです。
もし修理期間の演奏活動に差し障りがあるようでしたら、糸やセロテープをまいて急場をしのぐこともあります。
糸はデンタルフロスなど、水を吸収しない材質を使用し、木綿糸など水を吸収する素材は絶対に使わないで下さい。
■頭管部の端のコルクは、空気が漏れてしまうとよい音がならなくなりますので、漏れてしまっているようならば交換してください。
この部分は箸で水分をとる際、傷が付かないように注意して掃除して下さい。
■頭管部の端のコルクは自分で動かさないようにし、オクターブ間の音程が悪いなどの心当たりがあるときのみ、メーカーに相談して下さい。
■管の先についている金属のリングはただの飾りではなく、薄くなっているジョイント部を補強し割れを防ぐためのものです。
もし緩いようでしたら直ちに修理をしましょう。
■指穴や歌口にたまったゴミは、音色やピッチに影響を与えることがありますので、定期的に掃除して下さい。
ただし、穴を傷付けないよう、綿棒や柔らかい布で慎重にすること。
その他詳細はこちらをご覧ください。
動画でわかるメンテナンス方法
アイリッシュフルート編
ティンホイッスル編
どこでもパイプス編
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