好評連載中の、ケルトの笛屋さんインタビュー・シリーズ。
これから新しい企画が始まります。バウロン奏者へのインタビューです。
スコットランドのバウロン奏者メリッサ・ウェイト Marissa Waiteさんのブログにあるインタビューを、当店でおなじみの翻訳家・村上亮子さんに翻訳していただきます。
第一回目はRuraやImarといった、スコットランドの人気バンドのメンバー、アダム・ブラウン Adam Brownさんのインタビューをお楽しみください。
原文:https://modernbodhran.com/adam-brown/
はじめに(インタビュアーから)
2019.12.7
優れたバウロン奏者数名にインタビュー形式の質問を送り、その一部をここに公開します。
これらのインタビューは本当に素晴らしいもので、楽しんでいただけることと思います。
アダム・ブラウンは喜んでこの試みに参加してくれました。多くの方がアダムのインタビューを待ち望んでいることでしょう。
それを公表できることに私もワクワクしています。
アダムさん、貴重なお時間をいただきありがとうございます。
感謝します。さあ、皆さん楽しんでください。
インタビュー
出典 https://modernbodhran.com/adam-brown/
インタビュアー:どうしてバウロンを始めたのですか?自己紹介をお願いします。
アダム・ブラウンさん:やあ、僕はアダム・ブラウン。Imarというバンドでバウロンを、RURAではギターを弾いています。
バウロンを始めたのは3歳か4歳頃で、音楽の好きな家族だったから自然の成り行きでした。
家族全員何か楽器をやっていて、僕がバウロンを選んだのは、バウロンが一番熱心に僕に語りかけてくれたからです。
子供の頃、夏のフェスティバルに行ったり、セッションやギグにもよく連れていってもらいました。
それで興味がわき、好きな音楽を追いかけようと思うようになりました。
大きくなると姉のエリンがアイルランド音楽家協会ケンブリッジ支部のフィドルのレッスンに連れていってもらい、僕はセッションに連れていってもらって、その夜の終わりには年上の子や大人と一緒に演奏しました。
何年かして僕は音楽祭のコンクールに出て、アイルランドやスコットランドのミュージシャンと会うようになり、友達になりました。
15歳の時、学校で木工の授業があって、自分のバウロンを作ったらいいと思いつきました。それで家で父に相談して一緒に作りました。
その後日談は驚くべきもので、その後5年間にわたり、様々な大きさ、形、色、板で実験を続け、結局今でも作っている楽器、R&A ブラウンの「署名入り」バウロンとなり、世界中の熱狂的ファンやプロのプレイヤーに使ってもらっています。
僕は演奏も楽器製作も続けて、週末のギグにグラスゴーへ行くようになって、そして、そのまま家に帰らなくなったので、今日にいたるまでグラスゴーに住んで、バンドで演奏しています。
インタビュアー:最も影響を受けたのはどなたですか?
アダム・ブラウンさん:素晴らしい演奏家は大勢いますし、若い演奏家も次々現れて、僕を奮い立たせ、僕の演奏に影響を与えています。しかし僕の演奏とテクニックに一番影響を与えてくれたのは、大切な友達で素晴らしいバウロン奏者である、アンディー・ウィルソン Andy Wilson だと言っていいでしょう。
10代の頃、正確に打つことと左手がいかに大切かを説明してくれました。おしゃべりして、実演して見せてくれて、僕の演奏と教え方に大きな影響を与えてくれました。彼は今僕がやっているトップ・エンド・スタイル奏法の種をまいてくれました。また革新的なシェイマス・オケイン Seamus O’Kaneのバウロンを見せてくれました。
インタビュアー:常に気持ちを奮い立たせておくために、演奏家としてどんな事をしていますか?
アダム・ブラウンさん:本当にラッキーなことに僕はバウロンを演奏するのが大好きなのです。
ずっと小さいころから伝統音楽を聞くのが好きで、家の自分の部屋に座って、いつかバンドで演奏することを夢見て、何時間もバウロンを叩いていました。
大きくなって、特に10年ほど前にグラスゴーに引っ越してからは、セッションで演奏することが気持ちを高めてくれました。
パブで仲間と一緒に演奏することほど楽しいことはありません。
素晴らしい音楽と、さらに素晴らしい音楽家に囲まれて、気持ちが高ぶらないわけがありません。
これはバンドにおいても言えることです。
Imarも RURAもみんな素晴らしい音楽家で、いい仲間です。
インタビュアー:演奏の中で乗り越えてきた一番大きな問題は何ですか?
アダム・ブラウンさん:自分としては、実際の肉体的な痛みだと思います。
何年間もバウロンを叩いてきたことのよる手の痛みです。
多くの音楽家が同じ悩みを抱えているでしょう。
右手の特に親指のことでは、もうずっと長い間苦労してきました。
痙攣や繰り返す筋の痛みはバウロン奏者を苦しめるものです。
しかし何年もの間に、この問題を和らげる方法を見つけました。
やり過ぎない、激しくたたき過ぎないと心にとどめ、テクニックを駆使し、リラックスして演奏するのです。
インタビュアー:今使っているバウロン、スティック、ケースはどこのものですか?
アダム・ブラウンさん:もっぱらR&Aブラウンのバウロンを使っています。
父のロジャーと僕とで作っているものです。
もともとは趣味だったのですが、今ではトッププレイヤーや友人のためにバウロンを作っています。
スティックは、オークニー諸島に住む友達のオーイン・レオナルド Eoin Leonard が作るスネークウッドのスティックを使っています。
オーインは長年ベルガース・バウロン Belgarth Bodhanasというバウロンの工房を経営していて大変うまくいっています。
僕は12歳の時から同じスティックを使っていますが、ありがたいことに他のものを欲しいと思ったことはありません。
でも僕たちのバウロンを買ってくれた人に売るために、彼のスネークウッドのスティックをたくさん注文しました。
僕は何年も前に納屋で作ったすごいヤツをたたいていて、ありがたいことにいつも思った通りの音を出してくれて、もう何年も使っています。
他のプレイヤーも同じだと思いますが、ダブルストラップのついたプロテクション・ラケットのケースを使っています。
これはこの世界では常識で、持つべきものだと誰もが考えると思います。
インタビュアー:あなたの演奏をユニークなものにしているのは何だと思いますか?
アダム・ブラウンさん:僕がしていることが特にユニークだとは思いません。
僕は細いスネークウッドのスティックで打つのが好きです。
もう何年も、バウロンの高い音のこと、バウロンがどれ程多くの素晴らしい音を生み出せるかということに夢中になっていて、いつもそれを自分の演奏に取り入れようとしています。
何年もバンドで演奏して、ギターやブズーキなど他の伴奏者とぴったりと合わせることに集中しています。
伝統音楽をするにはこれは大切なスキルだと思います。
周りの音楽に集中することはとても大事で、自分の演奏では強調しておきたいことです。
インタビュアー:バウロンを始めたばかりの人に何かアドバイスをお願いします。
アダム・ブラウンさん:演奏を楽しんでください。
そうすれば上達します。
心から楽しめる音楽を聞くことで、自分のスタイルや、バウロン奏者として進むべき方向を決めるのがずっと楽になります。
もし誰かがカッコいいことをしていたり、自分がうまくできなくて苦労していることを上手にしていたら、どうしたらできるか聞いてみてください。
みんな喜んで教えてくれます。
そして最後に、練習に勝るものはありません。
時にはバウロンを投げ出したくなることもあるでしょう。
急ぐことはありません。
ゆっくり時間をかけて、リラックスしてください。そうすればいつかはそういう時が来ます。