McNeelaが推薦するコンサーティーナのアルバム5選


出典 https://blog.mcneelamusic.com/

アイルランドの楽器メーカーMcNeelaが公開しているブログの中から、「おすすめのコンサーティーナのアルバム」を紹介している記事を許可を得て翻訳しました。

原文:McNeela’s Top 5 Best Concertina Albums

McNeelaが推薦するコンサーティーナのアルバム5選

コンサーティーナ演奏を上達させたいなら、練習よりももっと効果的なことがあります。それは、できるだけ多くの音楽を聴くことです。幸いなことに、インスピレーションを与えてくれる素晴らしいコンサーティーナ奏者には事欠きませんが、どこから聴き始めればよいのかわからないこともあります。そこで、私のお気に入りの音源をいくつかご紹介します。それでは、アイルランドの伝統的なミュージシャンにおすすめのコンサーティーナ・アルバム・ベスト5、参りましょう。

よりどりみどりのコンサーティーナ奏者から候補を5枚に絞るのは大変な作業でしたし、それぞれの奏者の録音から1枚だけ選ぶのはさらに大変でした。私見ですが、ここに挙げたものはアイルランドのコンサーティーナ演奏に多大な貢献をした素晴らしい演奏家たちによるもので、必ずやインスピレーションを与えてくれるでしょう。では、さっそく始めましょう。何時間でも聴ける喜びが待っています……。

Chris Droney “Down From Bell Harbour”


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クリス・ドローニーは、アイルランドがこれまでに知る限り、最も影響力のあるコンサーティーナ奏者の一人です。1957年から1966年までのほぼ10年間、彼は全アイルランド・コンサーティーナ上級チャンピオンに君臨し、その偉業は今日に至るまで他の追随を許しません。

クレア州出身の彼は、ベルハーバーで生まれ育ち、家族と音楽に捧げる長く幸せな人生を送りました。クリスは2020年に95歳で亡くなりましたが、多くの音楽の遺産を残しました。以下のリンクをクリックして、亡くなる直前に収録された伝説の本人へのインタビューで、音楽の背後にいるこの男性についてもう少し知ることを強くお勧めします。

クリス・ドローニーの人生と時代 – TG4インタビュー

クリス・ドローニーは、同世代の多くのミュージシャンとは異なり、生前に4枚のアルバムを録音していたことは、非常に幸運なことでした。Irish Dance Music (1962)、The Flowing Tide (1975)、The Fertile Rock (1995) 、Down From Bell Harbour (2005)です。

どのアルバムも珠玉の出来栄えで、どれを聴いても間違いはないでしょう。実際、私のトップ5アルバムのうち、1位から4位はクリスのアルバムだけで、簡単に占められてしまいます。個人的には、クリス・ドローニーの故郷であるクレア州の豊かな音楽的遺産を讃えた“Down From Bell Harbour”がお気に入りです。

このアルバムは80歳という高齢で録音されたにもかかわらず、クリスは全編にわたって素晴らしい演奏を披露しています。彼自身が優れたダンサーであったことは驚くに値しないでしょうが、このことが彼自身の音楽性に強く影響しています。彼の演奏は、クレア独特の軽快なリズムを刻んでいます。

このアルバムは、誰もが楽しめる内容になっています。速いテンポのダンス曲は、ワルツや心にしみる曲と並んで、ドローニーの演奏の特徴である優雅さと繊細さで演奏されています。彼の装飾音は繊細で控えめであり、常に音楽的な目的を果たすもので、決して器用さや技術力を証明するために挿入されるものではありません。

テンポの変化

私が生き生きとしたリールセットに目がないことは、常連の読者ならご存知でしょう。このアルバムにはそのような曲がたくさんあります。しかし、意外なことに、このアルバムで私が好きな曲のうち2曲は、ゆっくりとしたテンポの曲です。1曲目の“The Bell Harbour Hills”は、クリスが自分の祖父マイケル・ドローニーから習った、飢饉前の美しいワルツです。

飢饉のとき、人々は毎週のように国を離れていきました。彼らはアメリカの通夜と呼ばれる、移民する人々のためのお別れ会を開きました。そんな時代を知る祖父がいつも演奏していた2つの特別な曲、“The Bell Harbour Hills”、 “The Gleann na Mbeanna Waltz” があって、私はそれを何年も忘れていたんです。でも、ある晩、突然、そのことを思い出して、録音したんです。次は忘れないよ、と言ってね。
― クリス・ドローニー(TG4)

次は、クリスの自作曲のひとつ、“Peaceful Corcomroe”。これはクレア州のバレンにある12世紀のシトー派修道院の遺跡、コーコムロー修道院からインスピレーションを受けた魅惑的なスローエアです。この甘美でありながら心に残るメロディーは、この地域の静寂と美しさを完璧に捉えています。

クリスはこの美しい旋律に合うように歌詞を書き、熟練したミュージシャンでもある娘のアンが、2020年に父親を偲んで録音をしました。アンの感動的な演奏は、以下のリンクからお聴きいただけます。

アンの詩 Peaceful Corcomroe

バレン山脈の下に古代の場所があります。昔、シトー派が来て説教をしたところです。そこは、私たちの祖先が眠る神聖な場所。平和なコーコムローの孤独な墓の中で地上での時間が終わり、すべての悩みが終わったとき、私たちが去らなければならない時が来ました。今日も主に感謝しよう。平和なコーコムローの安息の地へ最後の旅に出るために。

Noel Hill “The Irish Concertina”


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このブログのタイトルを読んだ瞬間に、読者はリストに必ず1枚はノエル・ヒルの録音が入っているはずだと思ったことでしょう。ノエル・ヒルはアングロ・コンサーティーナの真の巨匠です。アイリッシュ・コンサーティナの今日の人気は、彼の刺激的で革命的な演奏に負うところが大きいです。ノエルの影響を受ける以前は、コンサーティーナはまだダンサーのための音楽を奏でる楽器と見なされていました。ダンス曲はリズミカルでパンチの効いたスタイルで演奏され、音楽的な解釈の余地は多くありませんでした。しかし、ノエルのユニークなアプローチは、コンサーティーナを、深みのある、感情豊かな演奏ができる楽器に、私たちの目の前で変身させました。

1988年にリリースされたノエル・ヒルのデビューアルバム“The Irish Concertina”は、コンサーティーナの録音としては最も象徴的なもののひとつです。このアルバムはフォーク・アルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞し、ノエルの優れた技術とコンサーティーナの楽器としての能力を見事に表現した作品として、今日に至るまで語り継がれています。

この象徴的なアルバムは、近年、物理的にもデジタルでも入手が難しくなってきています。もし、手に入れることができたら、ぜひとも手に取ってみてください。

“The Irish Concertina”は、コンサーティーナの真の名手による傑作です。ノエル・ヒルはまさにヴィルトゥオーゾ・コンサーティナ奏者です。彼の驚異的な技術力は、アルバムを通して各トラックにはっきりと表れています。下のビデオを見ていただければ、彼のリズム感や流麗な音楽的フレージングを感じていただけると思います。

この象徴的なアルバムの中で私が一番好きな曲は、ノエルが演奏するスローエアTáimse im’ Chodladh”の心に響く演奏ですが、残念ながら皆さんにお見せすることはできません。でも、この背筋がゾクゾクするような演奏は、鳥肌が立つこと請け合いです。私は初めて聴いたときのことを今でも覚えていますが、あなたが今からそれを体験できることが羨ましいです。

ノエルは現代における最も偉大なスローエア奏者の一人です。彼の音楽的伝統との深いつながりは、実際に手に取るようにわかります。慎重に選ばれ演奏された音の一つ一つに優しさが感じられます。“”Táimse im’ Chodladh”ではありませんがが、下のビデオで別の曲、“A Stór Mo Chroíの素晴らしい演奏をご覧ください。

Mícheál Ó Raghallaigh “Inside Out”


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ミホール・オ・ライリーは、長年にわたってアイルランド音楽シーンの中心的存在である優れたコンサーティーナ奏者です。演奏家として教師として、その影響力は計り知れないものがあります。

ミホールは数多くのソロアルバムを出していますが、“Inside Out”は間違いなく私のお気に入りです。できればデータではなくCDを手に入れることを強くお勧めします。スリーブノートを見るだけでも価値がありますよ。このスリーブノートはアイルランド語と英語で書かれており、アルバムに収録されている曲やミホールが演奏する様々な楽器についての興味深い洞察を与えてくれます。

このアルバムで彼が選んだ楽器は、C/Gの38キーSuttnerとG#/D#(またはAb/Eb)の46キーJeffriesで、伝統的なアイルランド音楽でよく演奏される30ボタンのコンサーティーナとは少し違います。この音色の違いはアルバムに素晴らしい変化をもたらし、サットナーの曲は、よりメロウなジェフリーズと対照的に、より躍動感を増しています。

楽器の世界を探求しているのはミホール一人だけではありません。同じく巨匠ノエル・ヒルは、3台のウィートストーン・リノータ・コンサーティーナWheatstone Linota concertina、ラシェナルLachenal、コンサーティーナ製作者ジョン・ディッパーJohn Dipperのカウンティ・クレア・ミニチュアを持っており、C/G、A/D、Ab/Ebなど様々なキーのコンサーティーナを演奏しています。

ミホールは、自由自在に使うことができる広大な曲の倉庫から極めて良い選曲をしており、最近の曲、比較的知られていない曲やいにしえの曲に、これまでとは異なるエネルギーや、新たな生命が音楽の主流に注がれている様子を聴くことは喜びである
― ジャーナル・オブ・ミュージック

このアルバムで私が好きな曲のひとつは、人気のあるリール曲“Colonel Fraser’s”を生き生きと演奏したものです。リズムの達人である彼がパーカッシブにボタンを打つ演奏は、彼のドライブ感のある高度なリズムによく合っています。どの曲もテンポが良く、決して急がず、生命力に満ち溢れています。

Cormac Begley “Cormac Begley”


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コーマック・ベグリーは西ケリー出身のコンサーティーナ奏者です。この地域の象徴的な音楽一家に生まれた彼は真のコンサーティーナ愛好家として有名で、バスからピッコロ音域まで13本のコンサーティーナ(はい、正確に読んでください)を演奏しています。

2017年にリリースされたコーマックのセルフ・タイトルのソロ・デビュー・アルバムは広く批評家の称賛を受け、軒並み5つ星の評価を獲得しました。このアルバムは伴奏者もゲスト・ミュージシャンもいない、真のソロ作品です。全てはコンサーティーナのためにあります。

バス、バリトン、高音、ピッコロまで、コンサーティーナの全音域を使い、7オクターブに及ぶ楽器の可能性を強調したソロ・コンサーティーナ・アルバムを制作したいと思いました。各トラックは1テイクで、1トラック1台のコンサーティーナをフィーチャーしており、スタジオでの加工は一切していません。これまで録音されていない曲、新しい曲、そして私の人生の伴侶であり、内なるサウンドトラックであった伝統的な曲などを集めました。
― コーマック・ベグリー

オープニングの“The Yellow Tinker”はバス・コンサーティーナで演奏され、その予想外のざらついた音色は一聴してやや耳障りですが、この後の展開にリスナーの期待を持たせることに成功しています。コンサーティーナという楽器を深く掘り下げることで、この楽器はかつてないほど主役になることに成功しました。

各トラックごとに新しい楽器が登場し、高い音域では異なる音色を聴くことができます。アルバムが進むにつれてピッチは上がり続け、ピッコロ・コンサーティーナで演奏されたリール(ジョン・ドワイヤーJohn DwyerやマクゲトリックMcGettrickのもの)の生き生きとした選曲で最高潮に達します。その音色は鳥のように明るく、聴いているだけで自分自身が高みに上っていくような感覚になります。この音源はコンサーティーナやアイルランド音楽に軽く興味がある人向けではなく、コンサーティーナを心から愛する人であれば誰でも楽しめる、特別な1枚です。

私のお気に入りは、バリトン・コンサーティーナで演奏されたトラック4“An Cat is a Máthair”です。コーマックがドローンを奏でると、この楽器はブウブウと音を立て、リードの質のせいか、ハーモニカやディジュリドゥに近い音色を奏でます。今まで聴いたことのないコンサーティーナです。

Jack Talty “In Flow”


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Jack Taltyはクレア州のLissycasey出身のコンサーティーナの名手です。10歳の時に叔父のノエル・ヒルからコンサーティーナを習い始めました。幼い頃から伝統的なアイルランド音楽に親しみ、活気ある伝統音楽のコミュニティに囲まれながら、音楽的に成長し続けました。

現在、彼はアイルランド伝統音楽界を代表するコンサーティーナ奏者であり、教師でもあります。(常連の読者はもちろん、ジャックは私たち独自のコンサーティーナ・マスタークラス・シリーズの講師であることをご存知でしょう!)

2016年、ジャックはソロコンサーティナのデビューアルバム“In Flow”をリリースし、絶賛を浴びました。

コンサーティーナのルネッサンスは衰えることなく続いており、アンサンブル・エリウEnsemble Ériuのジャック・タルティによるこの思慮深いコレクションのリリースによって、その勢いは加速しています。自称『時間のスナップショット』である“In Flow”は、コンサーティーナが繁栄するめったに照らされない場所を探し続けてきた音楽家による、分かりやすいポストカードです。
― アイリッシュ・タイムズ紙

このアルバムで私が気に入っている点のひとつは、ユニークな曲の選択です。ジャックは人気の曲のあまり知られていないバージョンを探し出し、彼自身の価値ある作品と一緒に心地よく並べています。”The Trip to Giron”aと“The Night of The Feast”という2つのリールを聴いてみてください。これらの曲は、巧みな技巧を駆使して演奏されているだけでなく、新しく作曲された多くの曲とは異なり、あたかも伝統に属しているかのように聞こえます。

ジャックはレコーディングの間、リノータLinota、ラシェナルLachenal,、サットナーSuttner、キャロルCarrollなど、数多くのコンサーティーナを演奏しています。

ジャックの技術力(独特の左手伴奏を含む)は、曲が過度に忙しくなったり、派手になったりすることなく、すべての曲で光り輝きます。彼の叔父のノエル・ヒルのように、ジャックの演奏は思慮深く、熟考され、決して急かされることはありません。“In Flow”というタイトルにふさわしく、最初から最後まで難なく進み、リスナーを実に心地よい旅に連れて行ってくれます。

特に印象的なのはスローエアーの“Bóthar Chluain Meala”で、ジャックのリラックスした音楽性が発揮されています。彼は年齢以上に重厚な演奏をする奏者であり、それは彼の物悲しくも深く感動的な空気の演奏に反映されています。

おすすめのベストアルバム

私が選んだベストアルバムに同意されるかもしれませんし、同意されないかもしれません。もしかしたら、あなたのお気に入りが、以下の私の超おすすめリストに入ったかもしれませんね? そうでなければ、コメント欄で教えてください。

  • Kitty Hayes: A Touch of Clare
  • Tim Collins: Dancing On Silver
  • Niall Vallely: Beyond Worlds
  • Pádraig Rynne: Bye a While/Notify
  • Mary MacNamara: Traditional Music from East Clare
  • Caitlín Nic Gabhann: Caitlín
  • Niamh Ní Charra: Ón Dá Thaobh/From Both Sides
  • Jack Talty & Cormac Begley: Na Fir Bolg
  • Edel Fox: Chords & Beryls
  • Sarah Flynn & Doireann Glackin: The Housekeepers
  • Brenda Castles: Indeedin You Needn’t Bother