【最新号:クラン・コラ】Issue No.342

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クラン・コラ Cran Coille:ケルト・北欧音楽の森 Issue No.3

Editor : hatao
October 2022 Issue No.342
ケルトの笛屋さん発行

記憶のなかの音楽「King of the Fairies」:松井ゆみ子

記憶のなかの音楽「King of the Fairies」:松井ゆみ子

わが音楽遍歴、または余はいかにして心配するのをやめて
アイリッシュ・ミュージックを聴くようになったか・その15:大島豊

1980年の前後は、振り返ってみるとぼくの音楽生活にとって大きな変化が起きたときでありました。当時はそういうことが起きていたとはわからなかった点で、あらためて面白く思われます。

1975年頃に出逢ったブリテン、アイルランドを中心としたヨーロッパの伝統音楽は、ちょうど当時現地で盛り上りっていたこともあり、面白いレコード、時代を画する録音が次から次へと現れ、それらを夢中になって聴いていました。1970年代いっぱい、それを追いかけ、より親しみ、断片的な情報を集めてはあーでもない、こーでもない、と妄想をたくましくすることに費されました。

奔流のようなそのレコードの流れが1980年を境に、ぱたりと止まったのです。当時はそう思えました。実際に確認してみると、ムーヴィング・ハーツのファースト・アルバムが1981年で、最後となった《Live》は1983年に出ています。1985年に《Storm》がありますが、これはパイパーのデイヴィ・スピラーンがドーナル・ラニィを説き伏せて、かつてのメンバーを糾合して作ったので、むしろワン・ショット・プロジェクトと言うべきでしょう。

その1983年には後にアルタンとなるマレード・ニ・ムィニー&フランキィ・ケネディの《Ceol Aduaidh》が出ています。

なのですが、ぼくの印象と記憶では、このムーヴィング・ハーツとマレード&フランキィの間にはある断絶があります。ムーヴィング・ハーツはプランクシティに始まったアイリッシュ・ミュージックの革新が一つの帰結を迎えた終着点であり、マレード&フランキィは、ここから新たな世代による、新しいアイリッシュ・ミュージックが始まった出発点に思えるのです。

終着点といっても、プランクシティが先導し、ボシィ・バンド、デ・ダナン、クラナドが続くことで着実な流れとなったアイリッシュ・ミュージックの現代化を担った人たちがここで消えたわけではむろんありません。かれらは各々に次の位相、ステージへと歩を進め、また新たな局面を切り開いていきます。ですが、その現代化の第一段階の到達点がムーヴィング・ハーツであった、とぼくには見えたのです。

ムーヴィング・ハーツのファーストの登場には喜びました。ギター、ブズーキ、ベースに電気が入り、ドラム・キットを備え、そしてイリン・パイプがフロントにいて、クリスティ・ムーアがシンガーという布陣は、プランクシティのエレクトリック版に見えました。ホースリップスはフェアポート・コンヴェンションのフォロワーでしたが、ムーヴィング・ハーツはフェアポートに対するアイルランドからの回答と思えました。

プランクシティ、ボシィ・バンド、デ・ダナン、クラナドのようなバンドはイングランドにはありませんでした。フェアポート・コンヴェンションやアルビオン・カントリー・バンドは現れても、アコースティックのアンサンブルでロック・バンドに匹敵する、あるいは上回るエネルギーに満ちた音楽を聴かせることができるバンドはイングランドにはありませんでした。後にはショウ・オヴ・ハンズが現れますが、かれらもまた1980年代の新しい世代です(実際はもう少し複雑です)。

スコットランドにはボーイズ・オヴ・ザ・ロックやバトルフィールド・バンドなど、優れたアコースティック・アンサンブルが現れます。

ところが、アイルランドにもスコットランドにも、伝統音楽を素材とし、これを電気楽器によるバンドとして展開して本当に成功した例はほとんどありません。ムーヴィング・ハーツは例外的存在で、そこにはドーナル・ラニィのリーダーシップが働いている、というのがぼくの見立てです。そのラニィにしても、ムーヴィング・ハーツの次の位相に電気を使って到達するには、かなりの時間がかかりました。ムーヴィング・ハーツは音楽的には当時最大限の成功である一方で、そこから先へはどこにも行けない袋小路でもありました。

当時からムーヴィング・ハーツが袋小路だとわかっていたわけでは、もちろんありません。後から振り返ってみればそう見えるので、ムーヴィング・ハーツは我々リスナーにとってだけでなく、ミュージシャンたちにとっても愉しい活動でした。バンドが長く続かなかったのは、単純にこれを支えるマーケットが当時のアイルランドには無かったのが理由です。当時、アイリッシュ・ミュージックはまだまだごく一部の人々に愛好されていただけでした。チーフテンズがアメリカの市場に活路を求めたのも同じ理由です。ちなみに1980年にデビュー・アルバムを出すU2の成功も、当初からアメリカに狙いを絞ったおかげです。

こうして、プランクシティ以来の熱気にあふれ、湧きかえるようなアイリッシュ・ミュージックの展開は一段落します。

1980年は世界的に見て、ロナルド・レーガンの大統領当選とジョン・レノンの射殺に象徴されるように、1960年代から70年代に続いた流れが転換した時です。そうした動きは音楽の上にも反映し、アイルランドだけでなく、イングランドでもスコットランドでも、それまで続いてきた動きが1度止まります。フェアポート・コンヴェンションは1979年にライヴ・アルバム《Farewell, Farewell》を発表して「解散」します。このアルバムはずっと後に再開した活動が軌道にのってから、《Encore, Encore》と改題されますが、当時は本当にこれで終りと、当人たちもファンも思っていました。

ムーヴィング・ハーツで1度終ったと見えたアイリッシュ・ミュージックが、実は終ってなどおらず、新たな世代が、新たなアプローチと感性であらためて伝統音楽を自分たちの音楽として演りはじめていることをまざまざと見せてくれたのが、マレード&フランキィのアルバムでした。

が、その前に、ムーヴィング・ハーツまでの流れとマレード&フランキィからの流れの断絶を橋渡しするように現れたのが、ドロレス・ケーン&ジョン・フォークナーの《Broken Hearted I’ll Wander》でした。実を言えば、ドロレスの歌を初めて聴いたのはこのアルバムです。これを買ったのは出たのとリアルタイム、買った場所はロサンゼルスはサンセット・ストリップのタワー・レコードでした。フェアポートの《Farewell, Farewell》も同じ場所。時期もほぼ同じ。ひょっとすると、2枚同時に買ったかもしれません。初めて針を下ろしたのは、UCLAの門前町ウェストウッドにほど近いアパートの一室です。ぼくはそこに1979年10月から1980年3月までの半年間、住んでいたのでした。以下次号。(ゆ)

ガンダムに学ぶ3:field 洲崎一彦

前回は、アニメオタクの世界に学ぶことで、アイリッシュ界に、アニメオタクの世界に横たわる平和な村の景色を実現することが出来ないかという試行錯誤をしました。試行錯誤、つまり、あれこれ考えて行くと結論はここに行かざるを得ないというものが見えてきた所で筆を置いたわけです。この結論というのが、「意識を低く持つ」ということでした、初めて読んだ人は、なんじゃそれ?と思われるでしょうが、このことは、実は非常に深い問題の入り口だったと言えます。

今回は、さしずめ「実践編」になります。

例えば、前回の私の寄稿に対して、ある若者が、こう反論して来たのです。

「だからぁ、僕たちにはぁ、セッションにつれて行くような好きな女性などいないんですよぉ」と、この反論はものすごく深いものです。私は思わずうーんとうなってしまった。

表面的には、いやそんな意味のことは書いてなかっただろう。もっと文章をよく読んでください!という事なのですが、これは、読解力という問題を越えて、この若者がどんな発想に縛られているかを現しているのです。

つまり、この若者にとって彼女を作るということが「意識高く」意識されているということを現しているのです。そうです。横に座って楽器を弾きたくなる女性とは自分の好きな女性であって、それは彼女であるべきであって、しっかりと彼女を作って自分の趣味に理解を示してもらって、セッションに誘って、一緒にセッションに来てもらって、そこに加わって自分の横に座っていてもらう。と、まあ、このように意識高く彼は意識したのでしょう。(ああ、面倒くさ)

ここでもうすでに、入り口の所で、私達の新しいかけ声である「意識を低く持つ」から逸脱しているではありませんか!

先述の読解力的言えば、そういう意味ではなくて、セッションに来ているカワイイ女の子の横に座って楽器を弾くそれ自体が悦びではないか!その為に、次のセッションでは新しい曲を覚えていくのだ!そうやって会話のチャンスを作るのだ。あ、今日のセッションを休めば別のあの男の奴が彼女の横に座るかもしれない、いや、5分遅刻するだけでもその危険性がある。だから、少し早めにセッションに行くのだ。そうして、あわよくば、将来は彼女を彼女にすることができるかもしれない!るんるん!と妄想している時に、

そんな時に、反対側の横に座った意識高い先輩奏者から、こうやったらうまく弾けるよ、と声をかけられる。そういうシチュエーションを読み取ってほしかった。

「え?こんな不真面目な気持ちでセッションに行っていいんですか?」
「では、どんな気持ちでセッションに行くのですか?」
「やはり、アイリッシュ音楽を追究する人達が集う場所ですから、そういうアイリッシュ音楽を勉強するつもりで、自分を高めに行くべきではないでしょうか?」
「はい。確かにそうあるべきです。が、そういう気持ちだけで毎回セッションに行くモチベーションが続きますか?」
「そんなにモチベーションが弱い人は、音楽を追究する資格が無いと思います」
「すばらしい!キミは何と意識の高い人だ!」

また、別の意見もありました。

そうは言っても、セッションに毎回カワイイ女の子が来ているわけでもないじゃありませんか。

それを言っちゃあおしまい(笑)、、なんですが、

ここで、前回の、「ユニコーンガンダム」における、バナージとミネヴァ姫を思い出して欲しいのです。彼らは意識高い系の権化であるフルフロンタル大佐の完璧なる論理に立ち向かった。そこでの武器は、「愛情」と「情熱」でしたね。

今はその「愛情」の方にスポットを当てている所でしたが、次はこの「情熱」の方に注目してほしいのです。

意識が低いからと言って「情熱」が無いわけではありませんよ。俗に言うヤンキーの皆さん。悪い例えではなく話が分かりやすいのであえてヤンキーの皆さんを例に取ります。他意はありません。

ヤンキーの皆さんが持っているあの独特の行動力。考えるより先に動くというその行動力は何から来ているのか。それは「情熱」以外の何物でもないと思います。時には、その「考えない」が意図しない結末を生むこともあるでしょうが、「情熱」がある以上は決して悪い方には転ばない。

そうです。「情熱」は行動力を生むのです。

セッションにカワイイ女の子が来ない?  だったら連れて来れば良いのです。

普段はなかなかきっかけが無いような、キャンパスで見かけるカワイイ女の子が、毎日決まって通る階段の踊り場で、毎日毎日ホイッスルを吹き続けてみましょう。ちらりとでもこっちを見てくれたらしめたものです、それをきっかけにおしゃべりができます。それだけでも嬉しいじゃありませんか。そして万が一にも彼女がこの音楽に興味を示してくれたら、晴れてセッションにお誘いするのです。

そんなこと、自分ひとりがやっても、あの男の奴にかっさわれでもしたら大損じゃないですか?

喝! 何を言うとるのですか!

その男の奴も、あの男の奴も、皆が世間に対して同じ様な情熱を振りまくのですよ。

すると、セッションの場にはどれほどのパラダイスが出現するでしょう(妄想)!

そうです。ここです。

意識高く、自分ひとりが助かろうなどと思うから足がすくんでしまうのです。

アイリッシュ音楽が好きである事の前では皆が平等なのです。

そして、あの男の奴の幸福は、私の幸福にもなるのです。

意識を低く持つというのは、実際にはこういうことなのです。

これは、人生への教訓でもあります。

こんな人生の教訓を、ガンダムシリーズの物語の数々は、私達に示唆してくれているのです。

ただ、私がfieldセッションにカワイイ女の子を連れて来てほしいだけ? こら!(す)

編集後記

原稿が不足しがちな本誌に、寄稿してやっても良いぞという愛読者の方はぜひご連絡ください。

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クラン・コラ:アイルランド音楽の森(月1回刊)
発行元:ケルトの笛屋さん
Editor :hatao

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