アイルランドの楽器メーカーMcNeelaが公開しているブログの中から、アイリッシュバンジョーを購入する際のポイントについて解説している記事を許可を得て翻訳しました。
原文:The Ultimate Guide to Buying an Irish Banjo
アイリッシュ・バンジョーの買い方 究極のガイド
アイルランドの弦楽器の王様、アイリッシュ・テナー・バンジョーを習うことにしたのですね(フィドル奏者には内緒で…)。素晴らしい選択です! そして今、あなたは最初のバンジョーを選ぶという困難な作業に直面していることでしょう。ご心配なく、あなたは正しい場所に来ていますよ。
新しい楽器を選ぶのは簡単なことではありません。バンジョーは多くのジャンルで人気があるので、オンラインや楽器店では豊富な種類のバンジョーが販売されています。しかし、そのすべてがアイルランド音楽を演奏するのに適しているというわけではありません。
ではどうやって、何がアイルランド音楽に最適なのかわかるのでしょうか。どのように初心者のための最高のバンジョーを選ぶのでしょう。さらに重要なのは、どうやって「あなたにとって」最高のバンジョーを選ぶのでしょう。読み続けていただければ、あなたが知る必要があるすべてがわかります。私の知識をお伝えし、バンジョーの基本をお教えしますので、情報に基づいて100%満足できるお買い物ができるでしょう。私は、お客様のすべての買い物に対して確信を持ち、お客様が正しいバンジョーを選んだのだという安心感を持って、歩んでいきたいのです。それでは始めましょう。
大事なことは
初心者向けバンジョーを手に入れるのが待ちきれない方のために、必要なものを簡単にまとめました。
アイルランド音楽を演奏するための理想的な初心者用アイリッシュバンジョーに求めることは…
- 4弦
- 17フレット
- GDAEチューニング
- リゾネーターあり(バックレス・バンジョーは音量が劣ります)
アイルランド音楽におけるバンジョーの歴史
テナー・バンジョーが最初にアイルランドの伝統音楽で人気を博したのは、1920年代です。アメリカのダンスホールからアイルランドに伝わり、主に伴奏楽器として使われていました。
当初はコードで伴奏を弾いたり、ギターと同じようにかきならしたりていましたが、アイルランドの音楽家たちはすぐに、メロディーを演奏するためにこの楽器を使うようになりました。しかし、バンジョーが今日のような人気を得るようになったのは、1960年代から1970年代にかけての伝統音楽のリヴァイバル以降です。これは、ロニー・ドリューRonnie Drew、バーニー・マッケナBarney McKenna、トミー・メイケムTommy Makemといった代表的なプレイヤーの影響によるところが大きいのです。
今日、アイルランドのテナー・バンジョーはケーリー・バンドCéilí Band(ダンスの伴奏バンド)のラインナップに欠かせない重要な存在であり、良いセッションには必ずと言っていいほど登場します。アイルランドのバンジョー演奏は、キーラン・ハンラハンKieran Hanrahan、ジェリー・オコナーGerry O’Connor、ミック・モロニーMick Moloney、エンダ・スカヒルEnda Scahillといった名手たちの手によって革命的な変化を遂げました。
アイルランドのテナー・バンジョーのチューニング
バンジョーは伝統的なアイルランド音楽では主にメロディー楽器として使用されます。そのため、アイルランドのバンジョー奏者は一般的に弦をGDAEにチューニングします。このチューニングはアイルランドのフィドルと同じで、1オクターブ低いだけです。CGDAチューニング(各弦のチューニングが4分の1高い)は、メロディーよりもコードを演奏するブルーグラス、カントリー、フォーク、ジャズバンジョー奏者の間で人気があります。このチューニングでアイルランド音楽を演奏することも可能ではありますが、初心者にはお勧めできません。
トラッドの世界ではGDAEが標準とされていますので、初心者はGDAEチューニングで始めるべきです。
GDAEチューニングでは、ト長調(G)、ニ長調(D)、イ長調(A)のようなアイルランド音楽で一般的なキーは弾きやすく、関連した短調のキーも弾きやすいのです。また、CGDAよりも音域が低くなります(弦のチューニングが4分の1低くなるため)。モダン・テナー、特にアイリッシュ・テナー・バンジョーとして販売されているもののほとんどは、GDAEチューニングを使用するように特別に作られていることを知っておきましょう。しかし、ほとんどのヴィンテージのテナー・バンジョーはそうではありません。CGDA用に作られた中古のバンジョーを購入してGDAEチューニングを使用したい場合、ナットとブリッジにいくつかの変更を加える必要があります。しかし、これらの改造はすでに行われている可能性があるので、売り手に確認することが重要です。
17フレットと19フレットの違い
19フレットバンジョーは17フレットバンジョーよりも2フレット多く、それはネックと指板比較的長いことを意味します。おわかりのとおり、より多くフレットがあるということはより音域が広いことを意味します。これは曲のレパートリーや演奏方法を広げることにつながります。サイズが大きいため、19フレットバンジョーの弦は通常より高いテンションで巻かれています。このため、音色はやや明るく、音量も大きくなります。
しかし、音色のこのわずかな違いは常に明らかではありませんから、心配しないでください。よくできた良質の17フレットバンジョーにも、はっきりとした力強い音を備えています。17フレットバンジョーは一般的にコンパクトで、ネックが短いです。これは初心者の優れた入門用楽器になります。17フレットバンジョーはまた、左手にフィドルと同じ持ち方で演奏することができますので、それはフィドルから楽器を替えたいと考えている人にとっては優れた持ち替え楽器になります。
17フレットバンジョーは比較的小さく、より扱いやすいため、速い演奏ができるという奏者もいます。例えば小さな手であっても高いBまで簡単に弾くことができます。しかし、私はほとんどのプロのバンジョー奏者はたとえ演奏のスピードが少し落ちるとしても19フレットバンジョーを演奏するだろうと思います。19フレットの指板では左手をより広げなくてはなりません。また、より大きく手を動かし、手の位置も若干変える必要があります。しかし、演奏の適切な段階に達すれば、これらはすべて簡単にできるのです。どちらを選ぶかは、個人の好みによります。
4弦と5弦: どちらがベストか?
4弦と5弦バンジョーを比較するのは、ボタンアコーディオンとピアノアコーディオンを比較するようなものです。どちらも同じ楽器ですが、操作方法が若干異なり、演奏テクニックも異なります。
5弦バンジョーはブルーグラスのような北米の民俗音楽で用いられています。一般的にはコードをかき鳴らす伴奏楽器として使われますが、メロディをリードする楽器としても非常に重要です。5弦バンジョーの標準的なチューニングはGDGBDで、アイルランド音楽で使われる標準的なGDAEとは少し異なります。
ダブリナーズThe Dublinersのルーク・ケリーLuke Kellyが5弦バンジョーを弾き、代表的なバラードの伴奏に使っていたのは有名な話です。5弦は初心者のバンジョー奏者には必ずしもお勧めはしませんが、異なる演奏スタイルを探求したい場合は、投資対象としてやがて素晴らしい楽器となることでしょう。アイルランドの伝統的なジグ、リール、ホーンパイプや他の曲を演奏できるようになりたい場合は、4弦バンジョーが最適です。
出典 https://blog.mcneelamusic.com/
初心者用バンジョー 200~500ユーロ
バンジョーもヴァイオリンと同様、初心者が購入しやすい価格帯の楽器です。品質の良い初心者向けテナー・バンジョーを200ユーロ以上から購入することができるというのは嬉しいことです。手頃な価格で良質の初心者用バンジョーを探しているなら、McNeela 17フレットバンジョーをお勧めします。初心者に最適です(訳者注:ケルトの笛屋さんのBlarney Banjoのショートスケールモデルも同レベルの楽器です)。
マホガニーのネックとヘッド、ローズウッド指板、メイプルブリッジとレモのトップで、これはどんな初心者や中級プレーヤーにも合うように作られた、高品質の楽器です。奏者は17フレットバンジョーのメリットの全てを手にすることができます。ネックと指板が短いため、経験が無いまたは浅い演奏者の手でもあまり大きく手を開かずに演奏ができます。また、軽量で快適に演奏することができます。
出典 https://blog.mcneelamusic.com/
中級バンジョー 500~1,000ユーロ
中級バンジョーの価格は様々ですが、通常500ユーロから1,000ユーロです。この価格であれば、演奏が上達するにつれて出てくる音楽的なニーズに対応したバンジョーを見つけることができます。
私たちの17フレットバンジョーのように、McNeela 19フレットバンジョー(訳者注:ケルトの笛屋さんのBlarney バンジョーのスタンダードスケールモデルも同レベルの楽器です)は非常に手頃な価格の高品質なバンジョーです。17フレットモデルと同じ品質の材料で作られていますが、より長いネックと指板を備えており、より広い音域と多くの音の数があります。19フレットバンジョーは、演奏者の音楽を発展させ、次のレベルに引き上げることを十分に可能にします。あるいは、Clareen BanjosのClarinbridgeバンジョーは、成長過程にありまだ上級者には到達していない奏者にちょうど良い中間の範囲の楽器です。バンジョーが本当に自分に向いており、演奏に長期的な投資をしたいのであれば、上級者向きの楽器についてもっと知りたいかもしれません。
出典 https://blog.mcneelamusic.com/
上級バンジョー 1,000ユーロ以上
将来を考えているすべてのバンジョー奏者は、良い品質の楽器に投資したいと思うでしょう。適切なバンジョーは演奏を次のレベルに引き上げ、音楽的成長を助けます。このレベルと価格帯では、販売されている楽器の多くがヴィンテージモデルであることに気づくでしょう。先に述べたように、使用するチューニング(アイルランド音楽ではGDAE)に適した楽器を購入することが重要です。McNeela Musicでは最高品質のヴィンテージ・テナー・バンジョーを豊富に取り揃えております。一点ものはすぐに売り切れてしまいます。もしお目当てのものがあればご連絡ください。新品の楽器に投資したい場合は、デイブ・ボイル・バンジョーDave Boyle Banjosが、伝統的なアイルランド音楽で最も偉大なバンジョー奏者によって演奏されており、非常にお勧めします。
バンジョーアクセサリー
正しいバンジョーを選んだら、バンジョーピックにも投資することを忘れないでください。
あなたが必要だと思う数よりも多めに買いましょう
― 専門家からのアドバイス
バンジョーのピックは、洗濯機から消える靴下のように、消えて無くなります。正しいピックを選択することもまた重要です。硬いピックは柔軟性がない一方で、薄すぎるピックはうるさく鳴る傾向があります。 ナイロン製ピックは耐久性があります。46mmから60mmの範囲で探しましょう。嬉しいことにバンジョーのピックは安価で、自分にあったものに出会えるまで望む限り投資ができます。それから、弦を余分に買っておきましょう。他の弦楽器と同じく、バンジョーの弦は使うと摩耗し切れます。それは避けられないので、備えておきましょう。
あなたの方法で
さあ、あなたはアイリッシュ・バンジョーの専門家になりました。弊社のバンジョー売り場を見てみませんか。
あなたの目を惹く楽器がないか、すべての楽器を見て回ってください。新しい楽器を手にすれば、もう道はそこにあります。始め方については、私の便利なブログをみてください。
バンジョーの調律と構え方についてのビギナー向けガイド(英語)
また、伝説のエンダ・スカヒル Enda Scahillのバンジョー教本Volume I と Volume IIも買うことができます。
エンダの革命的なバンジョーの演奏は、高い技術的なスキルと音楽能力はもちろん、その衝撃的な体を動かしたくなるエネルギーで知られています。彼は優れた演奏家で、また教師でもあります。彼のバンジョー教本で、すぐに演奏できるようになるでしょう。
[画像出典: johndal, Chris Fithal, Gerald Moore, Mike Kelly, CC BY 2.0, CC BY-SA 2.0]