ライター:hatao
こんにちは! 笛狂いのhataoです。
前回に続いて今回は、スウェーデンの松の縦笛「オスピパ」のブロックを修正して音質を改良した話をします。他では読めないマニアックなお話なので、縦笛吹きのみなさんはぜひお読みください。
前回の記事はこちら
発音不良のオスピパ
昨年末、スウェーデンの笛職人グンナル・ステンマルク氏が製作している松の笛「オスピパ」のD管が2本入荷しました。お客様から注文をいただいていた品物です。
このうち1本は、高音が出にくい、音がかすれる、長時間演奏をしていると音が出にくくなる、といった問題が認められました。
輸入楽器に初期不良があった場合、解決は日本での買い物のようにはシンプルではありません。往復の国際送料を誰が負担するのか、入荷時に支払った日本国での消費税をどうするのかを話し合わなければいけないからです。日本人の感覚であれば当然メーカーが負担すべき、と思うでしょうが、それは世界共通の認識ではありませんから、職人との交渉が必要となります。どちらが負担するにしても、お互いに納得のいく結果にはなりません。そのため、なるべくは自分で問題に対処するように心がけています。
発音不良の原因は?
今回は、縦笛の発音機構であるマウスピースまわりに原因がありそうでした。そこで、正常な個体と見比べてみました。
見ての通り、正常なオスピパ(右側)は歌口のブロックが少し手前に出っぱっているのに対して、問題のある個体(左側)は引っ込んでいます。そのせいで、息がきちんと歌口のブレードに当たっていないのかもしれません。それから、ブロックの出口がかなり狭く息が楽に入っていきません。これらが雑音の原因になっているようでした。
ブロックは、調整することを前提に接着せずにただ押し込んであるだけですので、簡単に抜くことができます。ブロックを抜くには、ホームセンターで笛に合った適当な直径の丸棒を買ってきます。その先端に100均で買うことができる貼り付けるタイプの緩衝材をつけます。丸棒を、クッションのある方から笛の筒に突っ込んで、床に押し付けながら体重をかけてブロックを押し出します。実は、自分でやったのは初めてでした。
ブロックの調整
ブロックを観察してみました。吹き口から入った息は、ブロックの坂道を斜めに上がって、ブレードに向かって吹き出るようにデザインされているようです。この出口が狭いので、削らなくてはいけません。
ダイソーで売っているクラフトナイフで出口を削り、一度ブロックを笛に戻して、吹いてみました。すると、息は前より楽に抜けていくのですが、音が鳴らなくなりました。とても焦りました! よく考えてみると、出口を削ったために息の角度が十分に上がらず、ブレードに息のビームが当たっていないことが原因のようです。
そこで、前と同じ角度になるように、坂道を少しけずってやりました。そうすると、うまく発音ができるようになりました。
次に、ブロックのつっこみ具合で前後の位置を調整します。出すと出口とブレードが近づくのでピントが定まった音色になりますが、音程は下がります。抜くと息のビームは拡散して、ノイズが増えてきます。微調整を繰り返しながら、ベストな位置を探しました。
こうして、とても吹きやすくなりました。
今回、たまたまうまく行ったのですが、削りすぎてしまうと、修正が大変です。具体的にはオガクズや木工パテを使って修復し、やすりがけして戻します。
リコーダーでは、発音が悪くなった楽器は楽器店に持ち込んで修理してもらうことができますが、こういった民族笛は扱ってくれませんので、必要があればこの記事を参考に修理をしてみてください。歌口は笛の音色や音程バランスを決めるとても大事な部分ですので、DIYする人は、細心の注意を払って作業しましょう。