人は何を求めてセッションに行くのか:hatao

ライター:hatao

最近、アイリッシュ・セッションに行きましたか? 私は月に1度行けるかどうかという頻度なのですが、昨夜は大阪のセッションに「万博アイルランド館」のミュージシャンが来るかもしれないと聞いて、久しぶりに参加しました。日本人ミュージシャンも合わせて15人ほどが集まり、楽しく盛り上がりました。

そこでふと考えました。アイルランド人ミュージシャンたちは、何を求めて日本のセッションに足を運ぶのでしょうか。音楽的な満足が目的なら、自分たちだけで演奏するのが一番なはずです。だって、アイルランドを代表するほどの腕前なのですから。しかし、それは彼らが万博のステージで日々行っていることです。では、日本人との出会いが目的なのでしょうか? それとも、ホテルの部屋でスマホをいじっているよりは有意義だから? 動機や理由は人それぞれでしょうし、実際のところは彼らに訊いてみないとわかりません。もしかすると、特に何かを期待しているわけではなく、単に「アイルランド人の習慣」としてセッションに行くのかもしれません。

今は、CDや楽譜などの資料も充実し、自宅で練習したり学んだりする環境が整っています。アイルランド音楽は一人でも楽しめますし、友人と家やスタジオで練習したりセッションしたりすることもできます。それでも人々がセッションに行く動機とは何でしょうか。十人いれば十通りの理由があるでしょう。たとえば、住環境の制約によって自宅で音を出せない人にとってはセッションが唯一の練習の場になりますし、仕事終わりの気晴らしに来る人もいるかもしれません。あまり曲を知らないけれど、生演奏を聴いたり音楽仲間と会うのが楽しみだという人もきっといるでしょう。

私が初心者だった頃、セッションは覚えたチューンを仲間とシェアしたり、知らないチューンを聴いたり、意見や情報を交換したりする貴重な場でした。その楽しみや目的は、今でも変わっていません。ただ、近頃は少し違った視点でセッションを見るようになりました。

最近の私にとってセッションは、音楽的な満足を得るためというよりも、人と会うことを楽しみにしている場かもしれません。もちろん、まれに運良く素晴らしくハイレベルなセッションに参加できることもあり、それは得難い体験です。ただ、オープン・セッションは予測不可能で、思い通りになるとは限りません。ですから、私はセッションに自分の理想の音楽を求めることはしません。初心者が多くてコモンチューンばかりでもそれなりに楽しめますし、音の大きなギター奏者が3人同時に演奏するような不測の事態が起きても、失望することはありません。

それよりも、そこに集まった人たちと会い、できれば全員に挨拶して、隣の人と少しでも会話ができれば、「来てよかったな」と思えるのです。

実際、アイルランドのセッションでも、輪の中心で演奏するホストや演奏に集中したい人を除けば、演奏したりしなかったり、バーでおしゃべりを楽しんだりと、皆がそれぞれ自由にその場を楽しんでいた印象があります。かつては社交が苦手で、おしゃべりよりも一曲でも多く演奏したいと必死だった私も、今では少し肩の力が抜けて、良い意味で「ゆるく」セッションを楽しめるようになった気がしています。

それぞれのセッションには、それぞれの物語があります。みなさんは、何を目的に、何を期待してセッションに行きますか?