【バンジョー番長への道vo.2】バンジョーの構造を学ぶ

ライター:まりお:京都field店 店長

こんにちは、京都店のマリオ店長です。

今回はバンジョー番長への道vo.2です。

今年バンジョーデビューした僕がバンジョーの構造の知識を深めるために勉強したことを書いていきます。

お店にいらしたバンジョープレイヤーさんから教えてもらった貴重な話も混ぜ合わせつつ、当店で取り扱っているGold Tone社の「4弦 クリップル・クリーク・バンジョー CC-IT」の写真をもとに解説していきます。

今回は省略して「CC-IT」と呼ぶことにします。


CC-IT

CC-ITはGold Tone社の中で最も手頃なテナーバンジョーですが、エントリーモデルの楽器でありながらしっかりとした作りで、バンジョーらしい「カーン」とした音が鳴ってくれます。

これからテナーバンジョーを始められる方にオススメしたい楽器です。

テナーとプレクトラムの違い

4弦バンジョーには「テナーバンジョー」と「プレクトラムバンジョー」というものがありますが、アイルランド伝統音楽で使われるのはテナーバンジョーの方ですので、うっかりとプレクトラムバンジョーを買い間違えないようお気を付けください。

テナーもプレクトラムも見た目はすごく似ていますが、チューニングやフレットの長さが違います。

具体的にはプレクトラムバンジョーのチューニングはCGBDやDGBDといったものです。

ギターの上4本と同じDGBE(シカゴチューニング)というものもあるようです。

一方でテナーバンジョーのチューニングはGDAEです。

このチューニングはヴァイオリンやマンドリンと同じで、ブズーキチューニング(GDAD)にも似ていますので、アイルランド音楽では汎用性が高いチューニングといえます。

チューニングがかなり違う時点でプレクトラムとテナーは別の楽器と考えたほうがよさそうです。

フレット数の違いは、プレクトラムバンジョーは22フレットに対しテナーバンジョーは19フレットがスタンダードです。(ショートスケールは17弦)

ショートスケールのテナーバンジョーと見比べるとかなり長さが違います。


▲22フレット


▲17フレット

では本題のバンジョーの構造について、CC-ITの写真で解説をしていきたいと思います!

ヘッド

トップバッターはこの部分です。

バンジョーといえば太鼓のボディに、ガチャガチャとした金属の見た目が特徴的です。

まさに太鼓と弦楽器がフュージョンしたような見た目ですが17世紀初頭はウリをくり抜いたものに3本の弦を張っただけのシンプルな構造だったようです。

産業革命によって皮を使用したものに変化し、19世紀には工業製品として作られるようになりました。

やがて大衆音楽に使われるようになり、沢山の人に演奏される楽器へと変化していきます。

近年ではほとんどがプラスチック製のヘッドで、湿度の影響を受けにくくなっております。

CC-ITはプラスチック製の11インチのヘッドが使用されています。

サイズは11インチが主流ですが、近年では12インチのものもあり、11インチに比べ低音域の共鳴するレンジが広がり、より低音が出る様です。

当店では12インチバンジョーも取り扱っております。

ナット

フィンガーボードのてっぺんにある白色の長細いものがナットです。

ほとんどのギターやブズーキ・マンドリンにも付いているこのパーツは「弦の長さ・間隔・弦高」などを決める大切な役割を担っています。

直接的に弦の振動を受けるため、開放弦の音はナットの素材によって変わります。

CC-ITは牛骨のナットが使用されています。

牛骨、象牙、樹脂、など様々な素材のナットがありますが、フィンガーボードを指で押さえたときは金属製のフレットが弦の振動を受けますので、響き方が開放弦と少し変わると言われています。(個人的にはあまり気にならないですが)

CC-ITは「Zero Glide」という0フレットの効果を得られるリプレイスメントパーツがありますので、開放弦も金属製のフレットが振動を拾います。

ナットでしっかり弦を固定してチューニングの安定感を持たせつつ、0フレットを打ち込むことで開放弦との音色に統一感を持たせる狙いがあるのでしょうか。

個人的には0フレットを打ち込んであるのはとても好印象です!

インレイ

インレイ(inlay)は、パーツではありませんが、はめ込み細工のことです。

CC-ITフィンガーボードに埋め込まれているインレイは雪片のデザインですがアイルランドの国花のクローバーにも見えませんか!?

ちなみにアイルランドでは三つ葉のほうが大切にされているそうです。

トーンリング

トーンリングはヘッドの裏側に接触している金属のリングです。

このリングがあることで金属的な「カーン」とした明るい響きが得られますので、有る無しで音色の質感が大きく変わります。

エントリーモデルのバンジョーには、最初からトーンリングが入ってないものもあります。

CC-ITにはブラス製トーンリングが入っています。

ぱっと見て分かりづらいですが、リゾネーターを外しヘッドの裏側からのぞき込むとウッドリムの内側からわずかに見えます。

金属の輪がすっぽりと入るわけなので本体がそれなりに重たくなります。

お店にいらしたバンジョープレイヤーの方は「バンジョーは重いほどいい音が出るよ」とおっしゃっていましたが、なるほど!と思いました。(でもあんまり重いと外に持っていくのがしんどそう…)

ついでにこの金属の棒はコーディネイターロッドという、ウッドリムにネックを固定している部品です。

CC-ITは2本のコーディネイターロッドが内蔵されています。

バンジョーによって1本だけのものもあります。

リゾネーター

リゾネーターは背後についている「おぼん」のような見た目のパーツです。

木の素材が使われることが多く、CC-ITのリゾネーターはメイプル素材でできています。

ヘッドで増幅した音を効果的に前面に出すことができます。

響鳴板とされていますが、音の跳ね返しの役割が大きいようです。

前にいる人やマイクに向かって大きな音を聞かせたいときに本領を発揮しますね。

リゾネーターがあると音色の輪郭がくっきりとする印象です。(出力される音の方向が絞られるためでしょうか)

リゾネーターを外すと裏側にも音が流れていき、広範囲に音が出るためか、輪郭がボヤけ音色が柔らかくなる印象です。

特に前方で聞いている人には、跳ね返しの音が減少される分、音量が下がって聞こえます。

あと、後ろから流れた音は奏者の衣服に多少吸収しているかもしれません。

セッションでは、あえてリゾネーターを外して、音量を控えめに演奏する方もおられるようです。

ちなみに最初からリゾネーターがついていない設計のオープンバックバンジョーというものもあります。

当店で取り扱っているものだと、「IT-250」や「IT-17」が該当します。

リゾネーターがないとスッキリとした見た目になりますね。


▲IT-250


▲IT-17

ブリッジ

ブリッジは弦を下の方で支えている、木製のパーツです。

CC-ITのブリッジはメイプルとエボニーのキャップで作られています。

弦が直接触れている焦げ茶色の部分がエボニーです。

バンジョーではこの素材ペアのブリッジが多く見られます。

ヘッドの上に置いて弦で押さえつけているだけなので、わりとすぐにズレます。

ブリッジを配置する場所は、ナットから12フレットの長さ×2倍のところです。

配置したあと、12フレットの実音と12フレットのハーモニクス(倍音)の音が合うように微調整してください。

微調整したあと、ヘッドに印をつけておくと後々楽です。

テールピース

テールピースは弦を固定するための金属製のパーツで、ブリッジのさらに下に付いています。

バンジョーでは先端が輪っかになっている「ループエンド」というタイプの弦が使用されています。

この輪っかをテールピースに一本ずつ引っかけて固定します。

「double-hump」や「clamshell」と呼ばれるタイプのテールピースはボールエンドとループエンドの両方に対応しています。

弦の話

日本ではテナーバンジョーの弦があまり流通していないため、ギター弦を代用されている方がおられます。

ギター弦は先端がボール型になっているのでループエンドに加工する必要があります。

加工に手間がかかりますが、わざわざ海外からバンジョー弦を取り寄せるよりは安くつきます。

お店にいらしたバンジョープレイヤーさんの中には、エリクサー弦(錆びにくい弦)を使用されている方もおられました。

エリクサー弦は少し高級ですが、そのぶん長く使えます。

ギター弦を代用する際に気を付けてほしい点は、弦のゲージ(太さ)です。

バンジョーに合ったゲージの弦を選ぶ必要があります。

推奨のセットアップからかけ離れたゲージの弦を張ってしまうと、すぐに弦が切れてしまったり、ナットと噛み合わずチューニングが狂いやすくなる原因になり得ます。

ショートスケールバンジョーではやや太めの弦がセッティングされていてアタック感のあるサウンドが作りやすく、スタンダードスケールバンジョーではショートスケールバンジョーよりも細い弦がセッティングされています。

細い弦はサスティーン感があり、フレージングを重視した奏法が合うそうです。

お店にこられたバンジョープレイヤーさんから聞いた話では、

  • 「弦のゲージは弾きやすさに直結するが、あまり細い弦にすると音がベンベン鳴ってしまう」
  • 「最低限の張力ではアイリッシュで好まれる硬質な音色には足りない」

との事でした。

僕も細い弦で試させてもらいましたが、確かにトリプレットが弾きやすかったです。

ピッキングの抵抗感が少なくなるからだと思いますが、弾きやすさを追求しすぎて弦を細くしていくと、音色が犠牲になってしまうので、そこは研究が必要そうですね。

CC-ITはショートスケールバンジョーですので太めの弦がセッティングされています。

具体的には

E弦が0.013
A弦が0.020
D弦が0.030
G弦が0.040

です。

Gold Toneのショートスケールテナーバンジョーのほとんどが、同じゲージの弦が使用されていました。

ちなみにケルトの笛屋さんではバンジョーの弦を現在1点のみを取り扱っておりますが、こちらはロングスケール用の弦ですので、ショートスケールバンジョーには使用しないでください。


バンジョー弦セット(ロングスケール用)

近々ショートスケール用テナーバンジョー弦を8種類ほど入荷しますので色んな弦で試したい方は是非^^

最後に

バンジョーは沢山のパーツからできており、カスタマイズも利きますので、研究のし甲斐がありそうです。

このあたりの自由度はバンジョーならではといった感じで魅力的です。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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