マイルドなハロウィン

ライター:ネットショップ 店長:上岡

前回の記事で、古代ケルト人が現在のハロウィンの時期に催していた、まぁまぁパンチの効いたお祭りの話を紹介しました。
ただ、古代ケルトの文化は、歴史の中ではかなり早い段階で、ローマ人たちによって表舞台から降ろされてしまいましたから、実際そういったお祭りがちょっと前まで行われていた、なんてことはないのです。

そんなわけで、ローマに征服されたり、その後バイキングがやって来たりする中で、元々あった古代からの伝統は、時には廃止され、時にはリニューアルして継続されていきました。

キリスト教も今でこそ世界人口の1/3を占めるぐらいの信者を持っていますが、昔はそうでもないですから、古代ケルト文化をキリスト教に書き換える際には、古代の文化に失礼のないよう、それなりに歩み寄っています。この「サウィン祭」も元が宗教色の強いお祭りだったので、それを柔らかいニュアンスにして、継続しても教義に反しすぎないよう、がんばって調整を重ねていきました。
最初はこのイベント自体を5月に移そうと実施したそうですが、まぁまぁな反発があったので、やっぱり元に戻したりしたそうです。(文化祭を5月にやられても、まだそんなクラスメイトとも仲良くないし、みたいなノリでしょうか)一応正式なキリスト教でのその日の名前は「すべての聖人の日」(11月1日)と、その前の日という風に決まっています。

そんな思惑もありまして、中世の頃には、特に古代の宗教的な意味合いは薄くなり、生贄みたいな物騒なやつは継承されず、「先祖の魂が帰ってくるけど、そこに混じっていたずら好きな妖精や魔女も帰ってくるから、火を焚いてお互いを守ろう」みたいなマイルドな趣旨と、暗い冬を前にパーっと火を燃やして明るくしよう!ってなポジティブな意味合いを持ったイベントに変わっていったようです。

この頃にジャック・オー・ランタンというカブをくり抜いたランタンが登場しました。(カボチャに変わったのは、アメリカ移民がハロウィンを祝い始めた頃だそう)
ちなみに、ジャックさんは口が達者なひねくれ者で、生前悪魔とちょいちょい契約しては、うまいこと騙して、自分だけ得するみたいなことを繰り返していました。ある日、悪魔を言葉巧みに追い込んで、悪魔に「ジャックは地獄に落とさない」という契約までして、その後天寿を全うするんですが、天国で「お前、いいやつじゃないから、地獄な」と言われ、地獄では「お前は地獄に落とさないって約束してるから、立ち入り禁止っす」と門前払いされ、地縛霊的な、お化け的な感じで現世界隈をさまようしかなくなったおっちゃんです。そこで、現世にいるためにちょっとでいいから火を分けてくださいと悪魔さんにお願いいして分けてもらった火種を消さないように、近くに転がっていたカブの中に入れたことで、ジャック・オー・ランタンが誕生した、と言い伝えられています。

またウェールズでは、このお祭りの中で、男たちが燃えている木材をお互いに投げ合うという、謎&リスキーなスポーツに興じていたそうです。

そしてこれと同じような時期に「Dumb Supper(物言わぬ食事)」、つまり先祖の魂を家に招いて、一緒に食卓を囲む、という伝統も生まれたようです。(本当の黙食だ!)

そうやってハロウィンの起源を見てみると、「トリック・オア・トリート(お菓子をくれなきゃいたずらするぞ)」は、どちらかというと気まぐれないたずら好きの妖精側のセリフだったみたいですね。

なんにせよこの伝統がアメリカに移住していった人たちによって再発見的にイベント化されまして、カブがないからカボチャで代用ね、みたいな経緯を経て、そういった歴史や伝統の面白そうな部分をピックアップして形成された楽しい感じのハロウィンを形作りました。さらにその文化がハリウッド映画でフィーチャーされ、アイルランドはじめ世界中に広まり、それが今では渋谷のスクランブル交差点で見られる、というわけですね。

なんというか、「思えば遠くへ来たもんだ」って感じです。

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